【指導参考事項】
プラスチック・バク・サイロによるサイレ−ジの調製利用に関する試験成績 北海道農業試験場 草地開発部 草地第2研究室 (高野 信雄・山下良弘) (昭和41〜43年) |
・ 目 的
酪農経営も大規模化が要請され、良質サイレ−ジを大量に省力調製することが必要とされる。しかし、一方では、緊急な場合に対応したり、青刈労力を省くような、小回りのさく小型なサイロなどの新しい技術の創出も必要とされる。慣用サイロの欠点を補足し、筒便小型なプラスチック・バク・サイロ(以下PBSと略称)の開発を試しみた。
・ 試験方法
1) 基礎試験・調製給与試験・実用試験を行ったが、サイロ規模5〜500kgのもの575基を用い、原料草・水分・切断・添加物・フィルムの厚さ・密封法など約50処理について試験を行った。
2) サイレ−ジはpH・有機酸組成・一般成分・NH3-Nなどの化学分析を実施した。
3) 試験の目的に応じ、乾物回収率、採食嗜好性を実施した。
4) 原料草を本サイロによるサイレ−ジの消化率を求めた。
・ 試験成果の概要
1) 良質原料を切断し、5〜500kgPBSに埋蔵し、密封することにより、良質サイレ−ジが安全に作られた。
2) 高水分原料であれば、屋外に放置しても60日以内の利用であれば酪酸含量の少ない良質サイレ−ジが作られた。大型サイロでは排汁する。
3) PBSとしては0.075mmの厚さでも1回の使用は可能であるが、0.1mmでは2〜3回の使用が可能である。経済的にも十分実用性が認められた。
4) 良質原料であれば、特別添加物の使用は必要としない。原料として牧草、コ−ン、ビ−トトップなどの使用も可能である。
5) PBSサイレ−ジは原料草の乾物消化率68.4%に対し、64.8%と高く保持された。
6) PBSサイレ−ジの乾物回収率は60日以内の貯蔵であれば85〜90%と高く保持された。
・ 主要成果の具体的デ−タ−
表1. 貯蔵日数とサイレ−ジ品質
区分 | pH | 乳酸 (%) |
揮発酸① (%) |
酪酸② (%) |
NH3-N (%) |
10日 | 3.98 | 17.00 | 1.54 (8) |
0 | 5.87 |
30日 | 4.01 | 13.36 | 1.77 (12) |
3 | 6.21 |
90日 | 4.10 | 9.07 | 4.69 (34) |
15 | 8.91 |
157日 | 4.18 | 7.93 | 9.37 (54) |
10 | − |
日 数 | 体重250kg当り 採食量 (kg) |
原 料 | 34.5 |
10日目 | 35.7 |
30日目 | 34.8 |
90日目 | 32.3 |
区 分 | 粗蛋白質 | 粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | DDM | TDN |
原料草 | 73.4 | 56.7 | 69.5 | 72.2 | 68.4 | 72.0(100) |
PBSサイレ−ジ | 70.4 | 81.2 | 58.9 | 69.4 | 64.8 | 69.3(96) |
・ 奨励または指導参考事項の注意事項
1) サイロの場所−調製・給与に便利な場所で、整地をし、昆虫の食害を防ぐため殺虫剤を散布する。サイロは必要量に応じ大きさと基数を決める。厚さは0.1mm程度が好ましい。
2) サイレ−ジ原料−牧草では肥培管理のよいものを使用し、1番草では出穂始から開花前に収穫する。刈り遅れの原料は使用しない。コ−ンでは乳熟期〜黄熟黄のものを使用する。ビ−トトップは新鮮で土砂混入の少ない良質のものを使用する。
3) サイレ−ジ調製−原料は必ず切断する。これは品質向上と埋蔵量の増加および取出し給与の上から必要である。大型サイロでは詰込み5日目前後に追詰が可能である。
4) 密封−乾草のヒモやビニ−ルのヒモで二重に結ぶ。
5) 管理−サイロ周囲に棚を作る。穴があればテ−プで補修する。
6) 給与−詰込み翌日からでも給与が可能である。大型サイロで給与が2日以上にわたる時には、その都度ヒモで密封し変質を防ぐ。
本サイロは慣用サイロの補足用として活用される。即席・緊急・筒便・小型・移動性などの特性も経営の情況に応じて使用されよう。