【指導参考事項】
草サイレ−ジ調製における乳酸菌剤の特性と使用法
北農試 家畜第4研究室・家畜導入研究室・根釧農試 酪農科
(昭和42〜44年)

・ 目 的
 多頭飼育に伴う草サイレ−ジ調製量の増大は予乾工程の省略による、高水分原料による場合が多くなってきている。良質サイレ−ジの調製には速やかに乳酸菌の活動を促し、酪酸菌の発育を抑制することが重要である。
 この目的のため各種乳酸菌の添加が試しみられ、一部市販されるに至っている。近時Lactobacillus plantarumの添加が効果があったといわれているので、その効果と使用法について検討した。

・ 試験方法
 小型試験によって乳酸菌添加水準と糖添加との関係を基礎的に検討し、ついで各場所において同一方法で乳酸菌培養添加を試しみ、サイレ−ジの品質・乳牛に対する嗜好性、乾物摂取などについて調査研究を行った。
 更に同一方法で農家の現地調製を行い、それらの結果について検討した。

・ 試験成果の概要
 1. 市販の乳酸菌製剤の中には乳酸菌添加の効果のないものがあることが知られた。
 2. L.plantarnmを牧草1g当り105以上で明らかな効果が認められた。その特微はサイレ−ジ初期のpHの急速な低下と、3ヶ月以上貯蔵後における酪酸の発生を抑制することが認められた。
 3. L.plantarnm添加サイレ−ジの乾物回収率は無添加に比較して高かった。また数ヶ月貯蔵のものではかなり明瞭にpH醗酵成分の改善が認められた。
 4. L.plantarnm添加サイレ−ジの選択嗜好性は良好な方に属し、また採食量もかなり高く、十分粗飼料として必要な栄養摂取を計ることができるものと考察された。
 5. 現地調製例から実際農家で実施する場合、添加方法の合理的な改善を図ることが必要であるが、現在まで得られた調製サイレ−ジは、細長の長いものでもかなり良質なサイレ−ジが生産された。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 (1)L.pl添加水準と醗酵成分との関係(赤クロ−バ100日目)
区 分 対照区 104 105 106
PH 4.40 4.26 4.17 4.08
VFA/総酸 32.0 25.4 22.8 20.1
VBN/TN 11.9 12.1 10.2 6.2
VFA中醗酵含量 24 13 1 1

 (2)L.pl添加とPHの経日変化(赤クロ−バ)
区分/
対照区 106
乳酸菌
糖蜜 市販菌例
5日 4.81 4.31 4.66 4.88
30日 4.11 4.02 3.94 4.15

 (3)オ−チャ−ド高水分牧草に対する乳酸菌添加効果(6ヶ月貯蔵)
  水分 無水物中 % 醗酵成分
粗蛋白 粗脂肪 粗繊維 N-FE 粗灰分 PH VFA/総酸 VBN/TN
対照区 82.5 13.6 5.9 29.2 41.0 10.3 5.00 35.1 9.4
乳酸菌添加区 79.7 15.2 6.4 25.7 44.9 7.8 4.04 20.8 3.8

 (4)サイレ−ジの採食量
  1日当採食量 (kg) 1日当乾物量 (kg) 体重×100g当乾物量 (kg)
対照区 71.1±9.7 13.5±1.8 2.14
L.pl106 81.8±4.7 18.0±1.0 2.85

・ 指導上の注意事項
 市販の乳酸菌製剤の使用に当たってはしかるべき保証のあるものを選ぶことが必要である。
 乳酸菌中でもL.plantarnmのみの添加では1g当105以上で添加効果が認められる。現在までの成績では高水分若刈り、またはマメ科率の高い原料草、更に長期貯蔵給与の場合に顕著な効果がみられる。その添加の特徴はPHの急速な低下、長期貯蔵後の酪酸の発生阻止、乾物回収率の向上がみられる。
 乳牛に於ける嗜好性乾物摂取量ともにかなり良好である。
 なお、指導に当たっては乳酸菌利用の特徴からみて、密封条件は原則的に必須なものであり、また予乾操作のできる調製条件の場合は乳酸菌添加の特徴は減湿し、低水分サイレ−ジにおいては更に本菌添加の効果は低下するものと考えられるので、指導上留意を要する点であった。