【指導参考事項】
根室・釧路地方における草サイレ−ジおよび乾草の品質と飼料成分に関する調査成績
北海道立根釧農業試験場・北海道根室支庁・北海道釧路支庁
(昭和44年度)

・ 目 的
 根室・釧路地方における草サイレ−ジおよび乾草の品質較差が著しいので、調製条件の差異が品質と飼料価値におよぼす影響の実態を明らかにするとともに、地域に適した飼料成分表を作成する。

・ 試験方法
 昭和43年度は根室地方、昭和44年度は釧路地方について実施した。
 調査計画
  1. 草サイレ−ジの分類項目および調査計画点数:ハ−ベスタ−方式と無切断方式12に別し、さらに高水分・予乾・細切・無切断・刈取時期など12細分し、根室および釧路管内の4普及所から2点ずつ、それぞれ192点であったが、項目に該当するサンプルが得られなかったので根室管内は2点、釧路管内は3点のサンプルを収集した。なお、根室地方の場合は昭和40年度から42年度までの農家生産および試験場生産サイレ−ジの調査結果を加えて、飼料成分表を作成した。
  2. 乾草の分類項目および調査計画点数:1番草と2番草に大別し、さらに12刈取時期別に12細分して、根室および釧路支庁管内4普及所から2点ずつ、それぞれ48点であったが、根室管内は当初の調査どおり48点、釧路管内は94点のサンプルを収集した。

・ 試験成果の概要
 1. サイレ−ジのハ−ベスタ−方式では、早川高水分サイレ−ジの品質が一般に低下していた。
 2. 無切断方式に調製されたサイレ−ジの品質が不良であった。
 3. 予乾の効果が認められるが、無切断の場合は過度に予乾されて2次醗酵している場合が多かった。
 4. 釧路管内の調査結果では、添加剤使用の効果が認められている。
 5. 乾草の1番草では、刈取時期別の飼料価値の較差が著しかった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 根室地方産草サイレ−ジ飼料成分表
飼料名 乾物率 PH IFUに要する量 IFU中のDTP TDN
草種 範囲 平均 範囲 平均 範囲 平均 範囲 平均 範囲 平均


















1 15.2〜25.2 20.1 4.1〜5.0 4.5 5.9〜10.1 7.8 41〜77 54 9.3〜15.8 12.3
1 18.8〜26.5 22.4 3.8〜4.4 4.1 6.4〜8.5 7.4 47〜84 64 11.8〜15.7 13.7
1 19.0〜25.5 22.3 3.7〜5.4 4.4 6.3〜9.8 8.2 48〜83 66 11.0〜15.3 13.2
1 25.1〜34.3 29.3 4.2〜5.3 4.6 4.5〜6.3 5.5 50〜70 64 14.4〜20.8 17.4
1 40.0〜48.8 43.4 3.9〜4.6 4.3 3.3〜4.0 3.6 63〜68 66 25.0〜30.2 28.0
2   16.3〜24.3 19.3 4.0〜5.2 4.7 7.6〜11.4 10.2 61〜91 78 8.8〜13.1 10.1




1 18.4〜22.0 20.3 4.2〜4.9 4.7 7.3〜8.4 7.8 42〜49 45 11.1〜12.9 12.0
1 17.1〜22.8 20.5 4.1〜5.1 4.7 7.4〜11.4 8.7 54〜75 67 8.8〜13.6 11.8
1 16.4〜23.4 19.9 4.9〜5.0 5.0 8.5〜11.5 10.0 58〜68 63 9.3〜12.6 11.0
1 26.7〜47.6 36.5 4.5〜5.1 4.9 3.3〜5.6 4.4 46〜59 53 16.8〜28.4 22.3
1 26.1〜59.8 40.9 4.1〜4.9 4.5 2.7〜6.1 4.4 59〜73 64 16.3〜37.4 25.1
1 25.4〜31.3 28.1 4.2〜5.0 4.6 5.8〜7.0 6.6 61〜84 71 15.2〜18.4 16.3
2   25.4〜26.0 25.5 5.0〜5.0 5.0 7.3〜7.4 7.4 66〜74 70 13.6〜13.7 13.7
2   28.6〜50.5 33.9 4.6〜6.1 5.1 5.4〜6.8 6.3 76〜104 89 14.7〜18.4 16.0
  早刈:6月中刈取  中間刈:7月1日〜15日刈  遅刈:7月16日以後刈

 根釧地方産乾草の飼料成分
飼料名 乾物率 IFU量 DTP TDN DCP
範囲 平均 範囲 平均 範囲 平均 範囲 平均 範囲 平均
1

混播イネ科主体 77.3〜84.5 81.4 1.9〜2.4 2.2 64〜128 103 49.5〜57.3 52.1 4.5〜8.4 6.3
 〃 〃 中間刈−1 70.9〜85.7 81.7 2.1〜3.0 2.3 45〜113 77 43.0〜53.8 48.7 2.7〜7.0 4.6
 〃 〃 中間刈−2 76.2〜86.6 80.6 2.1〜3.1 2.5 30〜108 68 41.5〜52.0 46.3 1.6〜6.4 3.7
 〃 〃 遅刈 71.0〜86.1 78.3 2.7〜3.4 2.9 30〜102 63 36.3〜44.6 40.1 1.3〜5.1 2.9
2

 〃 イネ科主体 74.5〜88.1 83.4 2.0〜2.5 2.3 54〜171 114 42.7〜50.9 47.8 3.5〜10.4 7.0
 〃 〃 遅刈  70.6〜87.5 81.1 2.2〜2.9 2.5 41〜175 106 37.6〜46.8 43.4 1.9〜10.3 5.3
 〃 マメ科3〜5割 66.4〜85.6 80.5 2.0〜2.4 2.3 84〜149 118 38.7〜51.3 47.0 4.9〜8.8 7.0
 〃 マメ科主体 73.8〜85.0 78.9 2.4〜2.5 2.4 90〜107 100 44.3〜46.0 45.3 5.0〜5.8 5.5

・ 普及指導上の注意事項
 1. 無切断サイレ−ジおよびハ−ベスタ−方式の早刈サイレ−ジの品質を改善する必要性が認められた。
 2. 2番草サイレ−ジおよび乾草の品質と飼料価値について更に補足調査する必要がある。
 3. 添加剤使用、および予乾方式については、試験研究および指導普及の態度を明確にする必要がある。
 4. 本飼料成分表を使用する際は、平均値だけでなく範囲を活用しなければならない。なお、乾物率の変動が著しいので、乾物率によって比例計算をする必要がある。