【指導参考事項】
蹄耕法による草地の造成と利用に関する実用化試験成績
(蹄耕法による急傾斜地の草地造成方式の確立)
北海道立新得畜産試験場
(昭和41〜43年)

・ 目 的
 急傾斜地における蹄耕法の適応性を実用的な規模で検討し、地形に起因する造成・利用上の問題点を明らかにしようとする。

・ 試験方法
処  理 A牧区(41年秋季造成) S牧区842年春季造成)
面 積 (ha) 2.98 2.38
立木処理 41年7月〜8月 41年7月〜8月
火入れ 41年8月28日〜30日 42年5月10日
施肥播種 時  期 41年9月8日 42年6月20日
施肥量(ha) 高度化成(12-26-10-5)500kg 高度化成(12-26-10-5)500kg
播種量(kg/ha) オ−チャ−ドグラス:20、
メド−フェスク:10、
ラジノクロ−バ:10
オ−チャ−ドグラス:21、
ペレニアライグラス:11、
ラジノクロ−バ:11
ストッキング 期 間 41年9月8〜10日 42年6月22日〜24日
延頭数(頭/ha) 76.6 21.8
放牧利用 42年 6月1日〜10月2日、5回 7月20日〜9月19日、3回
43年 5月24日〜9月17日、4回 5月18日〜10月2日、3回


・ 試験成果の概要
 1. 急傾斜地の立木処理、特に搬出作業の安全を期する場合、前処理が必要である。
 2. 秋季造成ではササの茎部が残る程度の火入れで翌春以降の牧草の生育に影響はなく、播種が9月上旬でも翌春以降の牧草率が高かった。
 3. 再生野草がなく補助飼料を給与する場合には飼料を分散し家畜の移動を多くする必要がある。
 4. ストッキング時に家畜に事故はなく、30度近い急傾斜地でも家畜に負担がかからなかった。
 5. 春季造成の場合は野草の再生が旺盛であるから適正に管理放牧する必要がある。
 6. 地形に起因する家畜の採食行動から、地形に応じた牧区の在り方を考慮すべきである。
 7. 土壌侵蝕は認められなかった。
 8. 最大傾斜度が30度程度の急傾斜地でも既往の造成工程基準で良好な草地にできることを明らかにした。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 1. A牧区における植生遷移及び放牧利用
放牧利用/
区   分
1年目 2年目 2ヶ年
合計
1 2 3 4 5 合計 1 2 3 4 合計
生草重 (t/ha) 7.7 8.1 11.3 10.2 10.8 48.1 9.5 16.3 10.7 8.2 44.7 92.7
牧草率  (%) 87.9 90.8 94.0 97.0 90.0 93.6 96.6 96.7 94.2
放牧期間(日) 6 5 10 7 9 37 7 12 8 7 34 71
延放牧頭数(頭/ha) 55.8 42.4 69.3 57.7 76.8 302.0 58.2 125.6 64.0 59.4 307.2 609.2
利用率  (%) 57.6 52.3 58.1 60.2 80.5

 2. S牧区における植生遷移及び放牧利用
放牧利用/
区   分
1年目 2年目 2ヶ年
合計
1 2 3 合計 1 2 3 4 5 合計
生草重 (t/ha) 4.2 5.5 9.1 18.8 8.4 17.3 11.5 16.3 11.2 64.7 83.5
牧草率  (%) 0 34.9 57.4 91.0 88.7 90.8 77.8 94.7
放牧期間(日) 4 6 6 16 6 7 9 8 6 36 52
延放牧頭数(頭/ha) 33.5 46.8 69.5 151.8 62.5 85.3 93.5 115.4 63.7 420.4 572.2
利用率  (%) 51.3 67.3

 3. 食草パタ−ンの地区分布
区 分 (傾斜度) 面積 延分布頭数 地区別
分布比
(%)
地区別
分布頭数
(頭/10a)
a 1日目 4日目 7日目 10日目 合計
上 位 (20〜26) 95 0 399 493 86 978 27.4 10.3
中 位 (15〜20) 103 4 448 307 247 1.006 28.2 9.8
下 位 (10〜15) 53 250 88 99 333 770 21.6 14.5
低 位 (5〜10) 48 260 39 145 181 625 17.5 13.0
平 地 (0〜5) 0 0 13 0 13 0.4
その他 180 0 0 0 180 5.0
合 計 299 694 974 1.057 847 3.572 100.0

・ 普及指導上の注意事項
 1. 昭和39年度の普及奨励事項「蹄耕法による草地造成に関する試験成績」の補完資料。