【指導参考事項】
めん羊を用いた蹄耕法による草地造成試験
滝川畜産試験場 めん羊科・草地飼料・作物科
(昭和41年〜43年)

・ 目 的
 草地の簡易造成法の一つである蹄耕法については先に指導奨励事項となったところであるが、その後において総合助成による課題として新得農試、天北農試および滝川農試において実用化試験を行った。当場においてはとくにめん羊を用いての蹄耕法による草地造成について検討し、先に奨励事項となった成績の補完とするものである。

・ 試験方法
 試験地  ササ−ワラビ型野草地
  1. 実用化試験(昭和41年〜43年度)昭和41年6月造成
    刈払い、火入れ、めん羊によるストッキング(10・20・30頭/10a)
    刈払い、火入れ、デスキング(2・4回)ロ−ラ−鎮圧
    耕馬による重放牧(10頭/10a)、めん羊によるストッキング(30頭/10a)の6処理。昭和41年3回、同42年6回。放牧利用
  2. ストッキング量と牧草の発芽(昭和42年度)昭和42年6月ストッキング
    換算ストッキング量10・20・30・40(頭/10a)および無処理の5処理。パス内に設定した定点コドラ−トにおける発芽生育数の調査。
  3. ワラビの抑制(昭和42年〜43年度)昭和42年6月ストッキング
    初回放牧後ののみ刈取り。毎回放牧後刈取り。無処理の3処理。
    ワラビ生草量の推移の調査

・ 試験成果の概要
 1. 蹄耕法区(ストッキング区)は簡易区(デスキング区)に比べて造成初年目では牧草の発芽が悪く牧草率は低かったがその後2・3年目には牧草率が高まり、草地化することが認められた。
 2. めん羊の野草に対するし好性は高かったが、ワラビは大部分不食である草地造成の阻害要因となった。
 3. ワラビの抑圧にためには刈取りの効果が高いことが認められた。
 4. 造成初年目のストッキング区におけるめん羊の行動は、簡易区に劣らず活発であった。
 5. めん羊によるストッキング量は10ア−ル当り30頭が適当であると考えられた。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 1. 造成効果(対デスク4回区割合 %) (実用化試験)
処理区分/
調査項目
10頭区 20頭区 30頭区 重放牧区 デスク2回区 デスク4回区
発芽生育数 15 16 30 36 58 100(1301本/m2)
牧草率(42.5) 15 59 86 64 82 100(89%)
     (43.5) 49 53 77 17 87 100(77%)
利用草量(41〜43年) 45 45 66 52 87 100(10.4t/10a)

 2. 播種粒数に対する発芽生育数の割合(%) (ストッキング量と牧草の発芽)
ストッキング量(頭/10a)
/  草      種
0 10 20 30 40
オ−チャ−ドグラス 10 18 18 26 27
シロクロ−バ 11 16 20 22 28

 3. ワラビの生草量 (対無処理区割合%) (ワラビの抑圧)
処理区分
/時  期
初回刈取 毎回刈取 無処理
昭和43年8月(造成2年目) 25 32 100(48kg/10a)

・ 奨励又は指導参考事項上の注意
 (1) ササ、ワラビなどの抑圧には大家畜を用いるが、刈取りをするのが望ましい。
 (2) 長期間の放牧、とくに昼夜放牧を行う場合、めん羊の行動が一部に片寄る傾向があるから、1処理区のストッキングはできるだけ短期間に行うようにする。
 (3) めん羊のストッキング時には野犬の害などに充分注意する必要がある。