【指導参考事項】
北見内陸地域における酪農畑作複合経営の経営分析
−農場基盤整備モデル地区(訓子府)の成績より−
道立北見農試普作科経営係

・ 研究目的
 畑作と酪農の内部循環を構造的に把握しつついかなる作目を、どの程度選択した方が有利か、さらに乳牛が選択される場合、いかなる飼料をどの程度給与していく、飼料構造が有利かについて検討する。

・ 方 法
 分析にあたっては、現在農家でとり入れている状態、小麦・小豆・菜豆・馬鈴薯・てん菜(直播)・てん菜(移植)・乳牛の7作目について検討した。耕地規模と稼働力規模については、8.0ha-2.0人、および10.0ha-2.0人、17.0ha-2.5人の3通りについて検討した。なお、成牛については生体重600kg、年間泌乳量4.800kgの能力をもつ乳牛を想定し、維持飼料するために必要な年間FuDTP量を算出し、必要量を満足させる飼料を経営的視点から選択した。選択可能な飼料としては、自給飼料、圃場副産物、購入飼料とし計11種類を取り上げた。分析にあたっては、理想分析の一つである線型分析法を用いた。

・ 研究成果の概要
 ① 耕地面積規模8.0haの家族労働力2.0人においては、年間280時間の雇用労働を入れ、てん菜33a、小豆68a、成牛換算頭数23.3を採用し、2033千円の利益総額をあげ、10.0haの2.0人においては、年間415時間の雇用労働力の導入を認め、秋小麦73a、てん菜50a、小豆90a、成牛換算頭数19.6を採用し、2280千円の利益総額、さらに17.0haの2.5人においては、年間616時間の雇用を入れ、秋小麦83a、てん菜53a、小豆10.0a、成牛換算頭数27.3頭を入れることにより3714千円の利益総額をあげることが理論としられた。
 ② 販売作物は、8.0haから10.0haの秋小麦を除くと、各類型とも、大きな変動がなく作付され、乳牛との間には、各作物ともほぼ補合的な関係が結合していることがわかった。
 ③ てん菜の直播と移植との関係については、家族労働力1人当り耕地面積が4.0ha、5.0ha、6.8haと順次拡大するにつれ、わずかながら直播ビ−トの占める割合が高くなる傾向がみられた。
 しかし、この背景には、とくに畜力による畦立、施肥と人力による移植方法からくるものであり、能率の高い移植機が開発されてきていることから移植機の利用についても今後の課題として取組みたい。
 ④ 飼料構成割合を耕地面積および労働力規模別にFu量についてみると、経営にあった飼料給与構造は、耕地面積労働力によって明らかに変化することがわかった。すなわち家族労働力1人当り耕地負担面積が増大するにしたがって、自給飼料に対する依存度が高くなり、中でも牧草に対する依存度は著しく高くなる傾向がみられる。また、乾牧草は卜す尾およびデントコ−ンサイレ−ジに比して著しく伸び、17haにおいてはサイレ−ジに近い量を占めるに至っている。放牧草は、各類別とも25%を占め、その有利性を明らかにみることが出来た。
 ⑤ 成牛換算1頭当り飼料畑所要面積は8.0haの2.0人の場合労働力1人当り耕地負担面積が増大するにしたがって大となる傾向がみられた。

・ 指導参考上の注意
 経営研究成果の多くは、経営規模(土地労働資本)および労働水準、自然環境により同一地区においても適合しない場合が多く、ここでは北見内陸地域で、且つ条件に適合する農家の参考とするとともに畑作と酪農の内部循環を構造的に把握して総合的に組織の選択を行う一つの方法を事例分析を過し、紹介したい。