【指導参考事項】
無支柱トマトの栽培安定化に関する試験 (昭和42〜45年) 北農試 第2部 園2研究室 (小餅 昭二) 中央農試 園芸部 花そ菜科 (山谷 吉蔵・土肥 絋) |
・ 試験目的
トマトは、最も集約的な栽培を行っているそ菜の一つであるが、慣行の有支柱栽培では省力化することは極めて難しい。露地トマト栽培の大巾な省力化をはかるために、加工用省力栽培に取り入れられている無支柱栽培方式をとることが考えられる。しかし、現段階では、この栽培技術は不安定なものであるので、一応の経済点として、10a当収量を不良年で5トン、優良年で8トンとし、この目標に向かう育苗・栽培・品種にわたる試験検討を行い、無支柱栽培の安定化をはかり、露地トマト栽培の大巾な省力化に資する。
・ 試験成果の概要
本試験の目標とした不良年5トン、優良年8トン以上の収量を確保することは技術的に可能であり、本道において無支柱栽培方式によりトマト栽培の大巾な省力化が実証できる見通しが得られた。
栽植密度: 草勢中位の「交1」を基準とすると、これまで標準とされた10a当1.800、本(120×45cm)を2700本(120×30cm)とすることにより増収が可能
施肥:品種のもつ繁茂性により異なるが、ある程度の地力ある畑ではN5〜10、P2O515〜20、K2O10〜15kg/10a程度を標準とする。また、マルチの効果は大きく、早熟で草の弱い品種では茎葉の衰弱を防ぎ、中晩生種では熟期を前進させていずれも増収した。
育苗:45〜30日の短期育苗の小苗を定植しても十分の収量が確保できた。このことは、機械化栽培における機械定植を容易にするという点で重要な意味がある。床土については、ピ−トモスや籾殻燻炭などの適当な栽培地材を利用した簡易床土によって、従来の園芸土にまさる菌の質および生育が得られた。
品種:心止り性を持ち、草勢が適当で、生食しても果実形質のすぐれた品種の育成が必要であるが、本道のように栽培期間の短い条件下ではヘテロシス利用により、早熟性と多収性が結びつくことが認められ「ウルバ−ナ」「ファイヤボ−ル」の間のF1、(交1)が早熟、多収で数年間にわたり安定した収量を示した。また、長野県で育成されたF1(桔交416)も同様な結果を示し、ともに生食、加工兼用種として優れている。
・ 主要成果の具体的デ−タ−
10a収量と1株収量の株数に対する関係(北農試)
育苗日数・床土・鉢の種類を異にした時の収量比較(中央農試)
主要品種の特性
品種名 | 熟期 | 心止 り性 |
リ−フ カバ− |
収量 | 果の 大きさ |
果 色 | 密植 適応性 |
|
未熟果 | 熟果 | |||||||
ウルバ−ナ | 中 | 中 | 多 | 中 | 中 | GS | 赤 | 無 |
ファイヤボ−ル | 極早 | 強 | 少 | 少 | 中 | UG | 赤 | 有 |
交 1 | 極早 | 中 | 中 | 多 | 中 | GS | 赤 | 有 |
盛岡 7号 | 晩 | 弱 | 過多 | 中 | 中 | UG | 赤 | 無 |
HI 370 | 晩 | 弱 | 過多 | 中 | 中 | UG | 赤 | 無 |
桔交+16 | 早 | 中 | 多 | 多 | 大 | UG | 赤 | 有 |
ハイピンク | 中 | 中 | 多 | 少 | 大 | GS | 桃 | 有 |
・ 指導参考上の注意事項
1. 育苗は、無移植〜1回移植とし、老化苗にしない。(鉢利用短期育苗)
2. 草勢中位の品種で120×30cm程度の栽植密度を標準とする。
3. 施肥に注意する。(特に草が繁りすぎないように)、窒素5〜10、燐酸15〜20、カリ10〜15kg/10aを一応の基準とする。
4. 湿害を生じ易い畑では高畦あるいはマルチを行うなどして、病害および果実の腐敗を多発することをさける。