【指導参考事項】
乳用子牛の早期集団放牧育成法に関する試験 北海道立根釧農業試験場 (昭和42〜44年) |
・ 目 的
乳用子牛の育成専門事業は重要な使命をもつが技術的に未解決の問題が多い。子牛の早令放牧を中心に集団管理技術の体系化をはかる指針を得る。
・ 試験方法
乳用子牛を早期離乳し、60日令前後から放牧する下記の試験を行なった。
A 哺乳期
1. 代用乳の給与量の差が発育におよぼす影響
2. 定量哺乳36日令離乳と標準50日令離乳法の比較
3. 哺乳期における単飼と群飼の比較
B 放牧期
1. 集約放牧地の牧養力と日増体量
2. 放牧開始月令の違いがその後の発育におよぼす影響
3. 早期放牧子牛の発育および健康状態におよぼす植生率の影響
4. 早期放牧子牛に対する濃厚飼料の給与時期
C 冬期舎飼期
1. 冬期舎飼期における単飼と群飼の比較
D 下痢防止
1.「いわゆる?下痢」の防除に関する試験
・ 試験成果の概要
A 哺乳期
1. 代用乳の給与量が少ない群(26.6㎏給与)の方が多い群(34.1㎏給与)よりも、放牧期間中の発育は良好であった。
2. 市販代用乳を日量500g給与し、人工乳を自由摂取させて36日令で離乳する定量哺乳法は、標準哺乳50日令離乳法と大差ない発育をさせることができる。
3. 単飼、群飼両群とも日増体量の平均値は689gであったが、その変動係数は単飼群8.1%、群飼群18.6%で群飼群の方が個体間の変動が大きかった。
B 放牧期
1.冬期舎飼期における乾草給与群およびサイレ−ジ給与群の発育の差は放牧期に縮小された。また、良好放牧地の場合は0.823(晩秋)〜1.214(春〜夏)の日増体量を期待することができる。
2. 放牧開始日令を生後31、62、90日令とした場合、18ヵ月令における体重体高の発育値はほぼ目標に達し、2ヵ月令からの放牧群が1ヵ月令放牧群よりもわずかにすぐれた。
3. 60日令から昼夜輪換放牧し、115日令から濃厚飼料を給与せずに植生比率(イネ科、マメ科)の違う草地へ放牧した結果、マメ科優勢草地放牧群の方が良好な発育を示した。
4. 生後60日令から放牧し、その後204日令までに濃厚飼料を150給与する場合、給与時期を変えても大差ない増体を示した。
C 冬期舎飼期
1. 冬期舎飼期の発育におよぼす単飼および群飼の比較をした結果平均値は両群間の差は認められなかったが群飼群の方が個体間の変動が大きかった。
D 下痢防止
1. 下痢発生期間において、下痢子牛の増体量は正常子牛に比較して5%であった。「イネ科牧草放牧群」は「マメ科牧草放牧群」より血液水分が少なく、糞中水分が多かった。また、単飼および群飼ならびに代用乳の給与レベルの異なる群などで、ある群に限って下痢発症が多いということはなかった。なお市販止痢剤の効果はおおむね良好であった。
・ 主要成果の具体的デ−タ
A−1 体重変化
代用乳 給与群/ 飼養区分/ 生後日数 |
哺乳期 | 放牧期 | 舎飼期 | 放牧時期 | |||||
15 | 55 | 62 | 180 | 190 | 368 | 400 | 543 | ||
26.6kg給与 | 50.2kg | 77.8 | 84.3 | 188.3 | 179.1 | 328.5 | 332.1 | 484.5 | |
34.1kg給与 | 51.0 | 81.2 | 85.2 | 183.0 | 144.7 | 326.0 | 330.3 | 452.3 |
群 別/ 飼養区分/ 生後日数 |
哺乳期 | 放牧期 | 舎飼期 | 放牧時期 | ||||
12 | 54 | 61 | 180 | 194 | 376 | 386 | 540 | |
定量哺乳 | 44.9 | 75.8 | 81.1 | 165.6 | 161.2 | 286.2 | 275.9 | 428.8 |
標準哺乳 | 44.6 | 73.9 | 78.2 | 158.1 | 161.5 | 281.1 | 273.7 | 440.0 |
群別 | 回数 | 体重 (kg) | 日増体重 | |||
試験開始 | 試験終了 | g | 標準偏差 g | 変異係数 % | ||
単飼群 | 8 | 49.0 | 80.7 | 689 | 55.6 | 8.1 |
群飼群 | 8 | 50.3 | 82.0 | 689 | 128.2 | 18.6 |
放牧開始月令/ 飼養区分/ 生後日数 |
哺乳期/放牧期/舎飼期/放牧期 | ||||
9日令 | 4週令 | 26週令 | 55週令 | 18ヵ月 | |
1ヵ月令放牧開始群 | 45.0 | 51.9 | 165.1 | 257.9 | 429.7 |
2ヵ月令放牧開始群 | 46.4 | 51.7 | 170.6 | 268.4 | 448.7 |
3ヵ月令放牧開始群 | 45.9 | 50.0 | 156.4 | 259.7 | 443.5 |
区分/群別 | 放牧地の状態 | 60日令の体重 (kg) |
日増体重 | ||||
イネ科草丈 (cm) |
マメ科率 (%) |
粗蛋白質 (%) |
粗繊維 (%) |
60〜140日令 (g) |
60〜180日令 (g) |
||
マメ科草地群 | 41.2 | 50 | 25.4 | 19.4 | 82.7 | 611 | 623 |
イネ科草地群 | 46.5 | 13.1 | 22.3 | 23.4 | 82.7 | 624 | 527 |
日令 | 10 | 20 | 31 | 41 | 50 | 61 | 日令 | 82 | 91 | 122 | 154 | 181 |
単飼群 | 81.5 | 81.8 | 83.3 | 84.2 | 84.0 | 83.6 | マメ科群 | 83.6 | 83.4 | 84.1 | 83.4 | 83.1 |
群飼群 | 83.5 | 85.1 | 85.5 | 84.8 | 84.2 | 83.7 | イネ科群 | 83.0 | 82.9 | 82.9 | 83.8 | 83.1 |
日令 | 8 | 15 | 42 | 49 | 56 | 日令 | 64 | 80 | 89 | 98 | 116 | 124 | 157 |
単飼 | 72.1 | 82.7 | 79.2 | 77.7 | 82.5 | マメ科群 | 81.5 | 81.0 | 86.9 | 84.1 | 85.7 | 90.0 | 85.4 |
群飼 | 72.6 | 82.4 | 82.0 | 81.2 | 81.2 | イネ科群 | 82.4 | 83.3 | 84.6 | 86.2 | 90.8 | 91.7 | 91.8 |