【指導参考事項】
高水分穀実サイレ−ジの調製法と飼養効果に関する試験成績 (昭和43年〜45年) 北海道農業試験場 畜産部、草地開発第1部、農業物理部 草地開発第2部、畑作部 北海道立滝川畜産試験場 |
・ 試験目的
わが国の食糧構造の変化はでん粉食糧の減少とともに、畜産物の需要が増大してきている。この変化にともないその生産資材として飼料用穀実の輸入が急激に増大し、昭和44年には1.200万トン3.000億円にのぼり、これらの全栄養量は国内生産の粗飼料、濃厚飼料の全DCPを昭和39年に超え、TDNは昭和44には越えたものと推定されに至った。
一方国内生産の飼料用穀実の生産は減少の一途をたどり、他方では国内産米の余剰対策として40万haに及ぶ休耕、転作の問題がある。
以下のような現状から国内における濃厚飼料の自給度を高める技術的な方途として、牧穫直後水分30〜50%の穀実を直接濃厚飼料として利用するための技術を検討した。
・ 試験方法
(1) 穀実サイレ−ジとして検討した穀類はとうもろこし、えん麦、小麦、大麦などでミニサイロを用いて収穫期とサイレ−ジの品質、収量との関係を試験した。
(2) サイロとしては材質の異なる各種ミニサイロ、スチ−ルサイロ、FRPサイロ、コンテナサイロ、フレキンブルサイロなどについてその適性を検討した。
(3) これら穀実サイレ−ジの飼料価値を査定するとともに、乳牛、養豚飼料として泌乳、肥育効果を検討した。
(4) 穀実サイレ−ジの収穫、調製用機械の作業体系について検討した。
(5) 想定される穀実サイレ−ジ調製利用の新技術の経済性について若干の考案を試みた。
・ 試験成果の概要
(1) 穀実サイレ−ジ用穀類の収穫時期はサイレ−ジの品質、乾物回収率の上からとうもろこしは黄熟期以降、えん麦、小麦は糊熟期以降が適期と考察された。
(2) 穀実サイレ−ジは有機酸が少なく、そのサイロは気密性の保持が大切で、気密性が保持できれば、各種ミニサイロと、木枠ビニ−ルサイロ、スチ−ルサイロなど利用可能であった。しかしとうもろこし穀穂サイレージは水分50%で凍結が起こり取り出しが困難となるので、大型サイロの場合は穀実(子実)サイレ−ジの方が望ましい。
(3) とうもろこし穀穂サイレ−ジ処理は小規模では〔手もぎ〕→〔スレッシャ又はカッタ〕やや規模が大きくなると〔コ−ンピッカ〕→〔ハンマミル、スレッシャ又はコ−ンシェラ〕、更に大規模では〔コ−ンバイン〕又は〔ピッカシェラ〕がよいと考察された。
(4) とうもろこし穀穂サイレ−ジは搾乳牛の濃厚飼料40〜50%代替しても泌乳量に差がないがやや増加した。小麦穀実サイレ−ジを30%代替しても泌乳量に明らかな差はなかった。
(5) とうもろこし穀穂サイレ−ジを肉豚飼料として20〜40%代替しても飼料効率に差がなかった。小麦穀実サイレ−ジの30%代替では良好で、燕麦は劣っていた。
・ 具体的な成果
表−1 穀実サイレ−ジの乾物回収率(平均)
とうもろこし 黄熟期以降 |
蒸麦 糊熟期以降 |
小麦 糊熟期以降 |
96.1% | 96.0% | 97.0% |
サイレ−ジ | DM | DCP | TDN |
とうもろこし穀穂 | 50 | 3.4 | 42.5 |
とうもろこし穀実 | 75 | 6.5 | 64.1 |
蒸麦穀実 | 65 | 7.6 | 49.4 |
小麦穀実 | 70 | 7.3 | 60.6 |
機械名 | 所要動力 | 能率 |
コ−ンバイン | 50 PS〜 | 0.26 ha/時 |
コ−ンピッカ | 40 〃 | 0.14 〃 |
スレッシャ | 7 〃 | (投)3t/時 |
ハンマミル | 10 〃 | 〃 300〜500kg/時 |
コ−ンシェラ シリンダタイプ |
15〜20 〃 |
〃 1.200kg/時 |
サイレ−ジ | 泌乳牛(乳量) | 肉豚(飼料効率) | ||
対照 | 試験 | 対照 | 試験 | |
とうもろこし穀穂 | NS+0.5kg/day | 3.7 | 3.6 | |
小麦穀実 | NS-0.6kg/day | 3.5 | 3.4 |
・ 指導上の注意事項
(1) とうもろこし穀穂サイレ−ジは小規模の場合、穀実(子実)サイレ−ジは大規模利用とする。
(2) とうもろこし穀穂サイレ−ジは16〜18m㎡以下に細砕する方が貯蔵性、飼養効率から望ましい。麦類についても圧偏程度の機械処理を行った方がよい。
(3) 穀実サイレ−ジは①収穫期間が長いこと②従って機械の操業度が高まる、③乾燥経費が不要④乾物回収率が高いなどが特徴である。
また労働生産性の上からは麦類、土地生産性の上からはとうもろこしの方が有利であるので、指導にあたってはこれらの特徴を立地条件の上に生かすよう考慮する必要がある。