【指導参考事項】
てん菜の糖分向上に関する試験
−てん菜の栽植本数と施肥条件が根中糖分・非糖分におよぼす影響−
(昭和44〜46年度)  道立十勝農試 てん菜科

・ 目 的
 近年、てん菜は多収性品種の普及と栽培技術(病害虫の防除・移植栽培・施肥量の増加)の進歩により増収しつつあるが、その反面、糖分含量は低下の傾向にある。てん菜は最終的には砂糖の生産を目的としており、このような糖分の低下は問題があり、これからは収量(根重)のにではなく、糖分を考慮した最も多くの砂糖生産のできる栽培技術を確立する必要がある。
 本試験では栽培条件として栽植本数と施肥料(特に窒素肥料とカリ肥料)ならびにN形態(硝酸窒素割合と肥料種類
を選び、これらに対する糖分含量ならびに生育、収量におよぼす影響を検討し、また製糖上、問題となる非糖分成分である有害性N、灰分(K2O、Na2O)について分析を行い、今後の栽培技術の資料としたい。

・ 試験方法
栽培条件
年 度
試験名
栽植本数(本/10a) 窒素施用量(kg/10a) カリ施用量(kg/10a) 備 考









44 ①3700  ②5550
③7400
①12
①10  ②20
③30
供試品種 T1007
肥料はS260に単肥配合
45 ①5000  ②7500
③10000
①12
②18
①10
②25
供試品種 KWS-E
肥料はS260に単肥配合
46 ①5000  ②7000 ①8   ②12
③16  ④20
①10
②20
供試品種 Kaweerta
肥料は単肥配合









44 ①12  ②18
③24
①0  ②10
③20  ④30 
供試品種 KWS-E
肥料は単肥配合
栽培条件/
年   度
カリ施用量(kg/10a) N形態
(NH4-N:NO3-N)(kg/10a)
肥料名
(NO3-N)
45 ①14
②28
①12:0  ②8:4
③4:8   ④0:12
①硝酸カリ
②チリ硝石
供試品種 KWS-e
       (kaweerta)
NO3-Nは硝酸カリとチリ硝石を使用。
46


・ 試験成果の概要
 ① 窒素施用量の増加と栽植本数の減少は糖分低下の原因となる。
 ② カリ施用量の増加は必ず糖分を高めるとは言い難いが根重の増加、さらに可製糖分を増加させることから特に増収を目的として窒素施用量を増やした場合の根中糖分の低下による可製糖量の減少を少なくするためにはカリ施用量を増やすことが必要である。
 ③ N形態の違いでは NO3-Nとして使用した肥料の種類(硝酸カリとチリ硝石)によって影響が異なるために NO3-Nの割合による収量・糖分に対する傾向は明らかではないが NO3-Nをある程度多くし、チリ硝石を用いることにより可製糖分が多く得られた。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
項目/
要因/
年度/
試験名
10a当りkg 根中
糖分
(%)
非糖分成分(mgv/o)
根重 可製
糖分
有害性N K2O Na2O









44 栽植
本数
3700 4370 661 16.82 15.1 204.0 13.7
5550 4130 634 17.12 12.3 192.6 11.5
7400 4300 663 17.19 11.4 188.0 10.3
45 5000 4460 597 17.30 37.3 187.2 19.6
7500 4570 716 17.40 28.9 175.0 13.9
100000 4350 684 17.49 22.4 169.3 12.9
カリ
施用量
10 4360 687 17.46 27.6 167.8 15.7
25 4560 711 17.36 31.5 186.6 15.2
窒素
施用量
12 4520 723 17.22 18.7 180.4 11.6
18 4390 675 17.08 40.4 174.0 19.3
46 カリ
施用量
10 4268 658 17.29 54.8 186.8 14.9
20 4313 672 17.43 55.1 196.8 13.0
窒素
施用量
8 4119 651 17.60 19.4 181.8 10.2
12 4402 689 17.53 32.4 201.4 12.4
16 4405 682 17.33 58.2 192.6 15.2
20 4236 639 17.01 109.8 191.4 18.1









44 窒素
施用量
12 4108 636 17.18 19.6 164.0 11.6
18 4325 655 16.84 25.7 165.1 18.3
24 4332 631 16.51 32.9 165.4 24.0
カリ
施用量
0 4019 604 16.79 27.0 144.4 23.1
10 4247 632 16.74 24.5 158.5 19.1
20 4358 660 16.93 27.3 169.2 15.2
30 4400 668 16.91 25.6 187.0 14.4
45 肥料名 硝酸カリ
チリ硝石
4086 663 17.97 19.1 184.1 6.2
4413 719 18.09 22.3 190.1 15.3
46 NH4-N:
NO3-N
(肥料名)
12:0(-) 4497 706 17.47 37.6 197.1 7.3
8:4(硝石) 4614 722 17.33 37.0 188.9 7.9
 〃(チリ硝石) 4597 722 17.43 36.7 193.4 12.2
4:8(硝加・チリ硝石)
(硝    加)
4619 714 17.29 36.3 190.1 10.0
 〃(チリ硝石) 4737 745 17.36 32.7 192.2 17.5
0:12(硝加・チリ硝石) 4586 718 17.33 34.1 188.9 17.4
カリ
施用量
14 4562 714 17.35 35.1 185.4 13.4
28 4654 728 17.39 36.4 198.1 10.7
0 4412 687 17.27 39.7 157.2 19.4

・ 今後の問題点
 ① 土壌の違いと栽培条件との関係
 ② 高糖性あるいは多収性品種に対する栽培条件の影響
 ③ 糖分の低い栽培地帯の土壌条件と栽培条件の検討