【普及奨励事項】
イチゴ導入品種「Gorelle(ホレラ)」に関する試験成績
(昭和43〜45年)  北農試作物第2部園芸作物第2研究室  担当者 花岡 保

・ 目 的
 内外より導入のイチゴの品種系統につき、その特性、収量などを比較的選抜するとともに、育種素材としての利用の資料を得る。

・ 試験方法
施行年 苗年令 供試
品種数
反復 株数 栽植
密度
10a当施肥量(kg) 定植期
N P2O5 K2O
A試験 43、44年 1・2年株 22 1 20 100×30cm 17 16 14 42.9.6.
B試験 44、45年 1・2年株 9 3 36 (44年8.5;5:7) 43.9.5.
     供試品種
1.東北8号*
2.東北9号
3.東北10号
4.東北12号*
5.東北13号*
 6.東北14号
 7.東北15号*
 8.盛岡16号**
 9.盛岡17号**
 10.フロンテナク 
 11.ポカホンタス
 12.シュアクロップ
 13.ホレラ*
 14.ジャスパ*
 15.幸玉*
 16.カバリヤ
 17.紅姫
 18.ケンブリッチビゴア
 19.阿賀
 20.レジナ
 21.マ−トンプリンセス
 22.千代田 
  
  
   (註) *:A.B試験、**:B試験のみ、他はA試験のみ供用


・ 試験成績の概要
 1. 生育調査では「ホレラ」「ジャスパ」などは最長葉長、葉数などでは「幸玉」「盛岡17号」、「盛岡16号」などとともに優れていた。また、ランナ−数では「幸玉」が勝り、「盛岡16・17号」などがこれにつぎ「ホレラ」、「ジャスパ」は中位であった。
 2. 収量調査では「ジャスパ」は最高で「ホレラ」がこれにつぎ、この2品種は卓越していたが、「盛岡17号」「盛岡16号」がこれに続いて多かった。成熟期は「ホレラ」は「ジャスパ」よりやや早く、「幸玉」などに比し、上記の品種はいずれも大粒であった。
 3. 果実特性は「ホレラ」「ジャスパ」は多収、大果で、頂果に鶏冠状果はみられず、王冠状を呈し、2番果以下は美しいだ円形で「ホレラ」は果面の美しさ、果肉色、堅さ、食味が優れ、品持ち、輸送性、加工性も優れていた。
 4. 試験施行中にウイルス病の担当者から「ジャスパ」がある種のウイルス病に汚染されている可能性があると指摘されたので、より食味よく、堅い「ホレラ」のみを、とりあえず今後、イチゴ品種の有望なものとして選抜した。
 5. 「Gorella(ホレラ)」は「Juspa(ジャスパ)(Juaurda×Sparkle)を母とし、「Md.Us.3763」を父として、オランダ、ワゲニンゲン園芸試験場で育成された品種である。
 6. その葉面は大きく、葉柄はやや短く、草状はコンパクトタイプに属し、花房の長さは中位で、大果で多収、果形、果色、肉質が堅くて優れ、美味で甘酸適和し、収穫後期に大果をつけ、日持ち、輸送性、加工性も高い。
 7. 病害虫にとくに弱かった点は認められなかったが、ランナ−の出が中位なので、採苗圃の母本の養成や育苗には施肥摘花、仮植床、灌水、病害虫の防除など管理によく注意を要する。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 ⅰ 収穫調査
品   種 A 試験(1反復)* B 試験(3反復)
43年*
(1年株)
44年*
(2年株)
収穫 44年*
(1年株)
45年*
(2年株)
収穫
重量
(g)
果重
(g)
重量
(g)
果重
(g)
重量
(g)
盛期
(月日)
重量
(g)
果重
(g)
重量
(g)
果重
(g)
重量
(g)
盛期
(月日)
1. 東北8号 727 9.1 377 5.2 1.104 7.14 928 6.2 998 8.4 1.926 7. 5〜7.11
2. 東北12号 2.071 9.7 2.940 4.7 5.011 7.7 1.057 5.1 1.885 5.4 2.442 6.23〜7. 6
3. 東北13号 1.621 9.7 2.706 5.7 4.327 7.4 1.583 4.8 1.778 6.0 3.361 6.25〜7. 6
4. 東北15号 1.685 12.0 1.044 5.2 2.729 7.14 1.483 5.1 782 6.2 2.215 7. 6〜7.13
5. 盛岡16号 1.243 6.7 2.500 7.3 3.748 7. 9〜7.14
6. 盛岡17号 2.810 7.2 1.780 6.6 4.540 7.10〜7.14
7. ホレラ 2.885 14.0 4.467 8.0 7.352 7.14 4.340 8.4 9.818 6.9 8.158 7. 8〜7.13
8. ジャスパ 5.194 16.4 5.350 8.9 10.544 7.16 4.228 8.5 6.030 7.6 10.258 7. 4〜7.14
9. 幸 玉 1.687 7.7 1.521 4.9 3.208 7.14 1.118 4.7 857 4.6 1.975 7. 6〜7.14
10. カバリヤ 1.278 6.5 259 3.9 1.537 7.14    
11. 紅 姫 673 6.1 259 5.1 932 7.11
12. ポカホンタス 1.525 5.5 409 3.1 1.934 7.14
13. ケングリッヂビギア 1.860 8.3 1.292 4.1 3.152 7.14
14. 阿 賀 669 7.8 587 4.4 1.256 7.14
15. レヂナ 1.279 5.9 1.052 3.6 2.331 7.14
16. フロンテナク 1.948 8.9 2.901 5.9 4.842 7.18
17. マ−トプリンセス 1.438 13.7 2.672 7.0 4.110 7.16
18. シュアクロップ 822 8.8 113 5.9 985 7.14
19. 千代田 2.056 8.5 1.850 5.7 3.906 7.11
20. 東北9号 2.297 10.4 2.140 5.3 4.437 7.11
21. 東北10号 2.008 8.6 2.353 6.9 4.361 7.14
22. 東北14号 1.370 11.9 1.915 6.3 3.285 7.17


 ⅱ * 20株当重量(上物収量)

・ 普及指導上の注意事項
 1. ウイルス病、せん虫などに汚染されていない原種を求め、セン虫のいない圃場(例えばセン虫殺虫用土壌くん蒸剤を30cm毎に1孔3cc以上、深さ10cmに注入。少なくも3〜4週間のくん蒸処理後、耕耘してよぅガス抜きする)に2mm目以内のカンレンシャなどで被覆したハウス内で増殖した苗を使用する。
 2. ハウスない栽培ではアブラムシ類の防除にとくに注意深く行う。
 3. 有機質肥料の使用と仮植床による育苗は効果的なので行いたい。
 4. 育苗には施肥、摘花、鹹水、病害虫の防除などによく注意を要する。