【指導参考事項】
ながいも種芋の切片増殖に関する試験成績
農業改良科  中央農試

・ 目 的
 近年府県より全形の種芋の移入により道内産地のウイルス汚染がすすんでいるので対策樹立のため、切片利用による全形種芋生産の栽培体系確立に必要な資料をえようとするものである。

・ 試験方法
 試験場所  夕張市滝の上 永沼氏ほ場
 供試材料  改良長芋夕張1号
 試験項目  切片調整時期  秋切り(44年12月5日)  春切り(45年4月28日)
 切片の大いさ  10gおよび20g
 栽植密度     10a当り2万、1.5万、1万株(54×9・12・18cm)
 支柱の効果   無支柱、10a当り1000本、2000本
 切片の調整  種芋輪切り後適宜縦割りして所定の大いさとし、切面にチウラム剤2%混用消石灰塗付、 ハウスで
 Curing(秋切り3日、春切り9日)、その後催芽処理(秋切り34日、春切り26日)
 耕種概要  播種 6月2日、収穫 11月13〜14日、施肥・防除その他管理は永沼氏の慣行による。 


・ 試験成果の概要
 1. 切片の調整歩留りは10g切片より20gが秋切りより春切りが高かった。調整数に対する収穫率は20g切片は秋春切りとも約92%であるが、10g切片は秋切り44%、春切り75%でかなり低かった。増殖能率は10g切片春が最も高かった
 2. 調整時期といてはCuring技術との関連で更に検討を要する
 3. 切片の大いさと芋の肥大については平均芋重・収量75g以上の歩留りなど10gより20g切片がまさるが、全形種芋として使用できる75〜350gの歩留りは秋切り10gは56%で低いが、その他は74〜77%で大差がない。20g切片は他の栽培条件如何によっては過大になやすい。
 4. 栽植密度は粗値になるほど肥大がよくなり大芋歩号は高くなるが100収量は逆に低くなる。75〜350gの歩留りは10g切片で密植ほど小芋の比率が高まるため粗値ほど、20g切片の場合は粗値ほど過大芋の比率が高まるため密植ほど高まっている。
 5. 支柱の効果はきわめて著しく、この作型でも支柱は必要である。
 6. 以上の結果より切片増殖では切片調整は春切りとし、大いさは20g前後(15〜25g)を標準とするがCuring技術の高い場合10〜15gにする。10a2万〜1.5万株植とし支柱は1000本以上とする。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 表1. 調整切片と歩留り
調整時期 切片の大いさ(g) 供用種芋(g) 調整切片数 平均切片重(g) 植込前(6月1日)
歩留り
収穫率
対値込数(%) 対調整数(%)
秋切り 10 12036 1195 10.1 53.3 83.2 44.3
20 21665 1066 20.3 92.5 100.0 92.5
春切り 10 10060 872 11.5 77.1 97.9 75.5
20 22890 1089 21.0 91.2 100.0 91.2

 表2. 切片の大いさ栽植密度と芋の肥大・収量・大いさ別歩留り
切片 植巾
(cm)
平均いも重 いも収量(10a) 75g以上
のもの
(%)
75〜350g
のもの
(%)
(g) (%) (kg) (%)
秋切り 10g 54×9 95.1 100 1495 100 52.2 51.8
   12 103.4 109 1354 91 60.4 59.9
   18 101.9 107 839 56 57.1 56.3
平均 100.1 (61) 1229 (54) 56.6 56.0
20g 54×9 127.1 100 2517 100 72.2 70.2
   12 164.3 129 2366 94 85.3 81.4
   18 199.7 157 1948 77 91.8 79.6
平均 163.7 (100) 2277 (100) 83.1 77.1
春切り 10g 54×9 116.0 100 2210 100 69.0 68.3
   12 139.6 120 2011 91 79.5 72.9
   18 186.8 161 1762 80 88.1 80.0
平均 147.5 (71) 1944 (69) 78.9 73.8
20g 54×9 172.3 100 3285 100 91.5 84.6
   12 204.7 119 2895 88 93.5 78.7
   18 246.9 143 2521 77 91.3 60.0
平均 208.0 (100) 2900 (100) 92.1 74.4

 表3. 支柱と芋の肥大・収量
支柱(10a) 平均いも重 いも収量(10a) 75g以上
のもの
(%)
100g以上
のもの
(%)
無支柱 131.4(g) 100 1836(kg) 100 69.9 57.0
1000本 161.1 123 2104 115 78.1 66.9
2000 172.1 130 2361 129 85.1 73.5

・ 指導上の注意事項
 1. 切片の大いさは対象農民のCuring技術を考慮してきめるようにする。
 2. 栽植密度は使用する切片の大きさや目標とする種芋の大きさなどを考慮してきめるようにする。
 3. 増殖に使う種芋はウイルスに罹ってない、良質なものを選ぶ。
 4. 増殖圃場は一般長芋畑よりなるべく隔離し、ムカゴや堀り残り芋からの野良生えが発生しないkとが必要である。新たに土つくりをするときは耕土の深さは60cmを基準にする。