【指導参考事項】
移動式大型ハウスに関する試験成績
昭和46年  北農試作物第2部園芸作物第2研究室
            担当者 小餅 昭二・田中 征勝

・ 目 的
 これまで府県で建設されている大型ハウス固定式であるが、ハウスの固定化に伴う土壌障害を回避するために、必要に応じて場所を移せる移動式大型ハウスを試作し、その移動性を検討する。

・ 試験方法
 1) 試作ハウス概要 
   耐雪性の特殊亜鉛メッキ鋼を骨材とし、ビニ−ルどめにはビニ−ルチャックを用いた。ハウスは間口8.6m、長
   さ48mで1スパン3m間隔とし、2スパンを1ブロックとして切り離し、または増加結合できる単位とした。
 2) ハウスの移動試験
   ハウスを12m単位の4ブロックに分離、人力およびトラクタ−により既存ハウスの横50m離れた場所への移動を
   テストした。


・ 試験成績の概要
 1) ハウス建棟の所要時間は227時間で、そのうち組立てに112時間、フィルム張りに67時間を要した。
 2) 人力のみによる運搬、またはトラクタ−3台による移動が移動方法として適当と認められた。
 3) 人力移動とトラクタ−移動の所要時間は、それぞれ79時、103時間であった。
 4) 作業人員が多すぎたため、作業上無駄が多く、適正な人員配置とテコ、滑車の利用により、所要労力は3〜5割程度、減少できると推測された。
 5) 試作ハウスは屋根上20cmの積雪に十分耐えられることと実証した。したがって降雪量の多い時のみ加温により越冬、固定ハウスとしても使用できる。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 試作ハウス設計概要
面 積 412.8m2(124坪) ビニ−ル止め ビニ−ルチャック
桁 行 48.0m 被覆材 ビニ−ルフィルム0.1m/m
間 口 8.6m 出入口 W=2.0m  H=1.8m
軒 高 2.0m 基 礎 コンクリ−ト地抗(部分的使用)
勾 配 4/10
主骨材 計量型鋼・耐蝕性ペンタイト処理 換気扇 300m3/m 2基

 試作ハウス移動所要労力
作業名 トラクタ−使用 人力
作業人員 延時間 作業人員 延時間
ハウス分離 5 1 5 1
補強枠組 12 44
移  動 9 11 18 36
枠組外し運搬 12 5
基礎固定 12 12 12 12
ハウス結合 12 30 12 30
  103   79

・ 普及指導上の注意事項
 1) 大型ハウスの導入に当たっては、ハウス用地、気象条件を考慮してハウス移動性、強度、間口の選択を行う。
 2) 冬季休栽時でもハウス屋根からの落雪を助けるために常時加温の必要はなく、降雪量の多いときのみ加温し、燃料費の節減をはかる。
 3) ハウス周辺の積雪の圧力により倒壊の危険性があるので、除雪を行う。