【指導参考事項】
土壌凍結地帯の牧草に対する早春施肥法に関する試験
(昭和43〜44年)
根釧農試土壌肥料科

・ 目 的
 牧草の早期利用を目的に、春先の生育を促す施肥法について検討する。

・ 試験方法
 試験−1 早春低温時における牧草の養分吸収に関する調査。
        チモシ−、アカクロ−バ造成2年目単播草地を供試。
        N15 硫安(7.1atom%) 2g/300cm2施用
 ・ 4月2日 施肥、4月13日試料採取(試験期間中、地下5cmの平均地温1〜4℃)
 ・ 4月18日施肥、4月27日  〃   (  〃        〃     〃  3〜7℃)

 試験−2 施肥時期と施用窒素の行動調査。
       尿素を点状に施肥、約20日後に施肥点より0〜5、5〜10、10〜20、20〜30cmと放射状に地下10cmまで
       の土壌を採取し、分析し供した。

 試験−3 早春施肥時期の効果判定実証試験。
       オ−チャ−ドグラス、チモシ−、メドウフェスク、アカクロ−バ、ラジノクロ−バ混播2〜3年目草地施肥量
       および時期
年度 施肥量 追肥時期 調査月日



(cm)




(cm)
雪上追肥 融雪直後追肥 標準追肥
1968 草地化成2号
60kg/10a
3月21日
積雪
15-20cm
4月 1日
地表10cm以下
凍結層
4月19日 5/5 5/15 5/25 6/4 43 58
1969 N:P2O5:K2O
=3.5.8kg/10a
尿素・硫安・過リン酸
石灰・硫酸カリ
3月25日
積雪
20−30cm
4月15日
地表6〜9cm
凍結層
5月 1日 5/1 5/10 5/20 5/27 18 66
       1968:1区 12m2 2反復       1969:1区 8m2 3反復


・ 試験成果の概要
 1. 重窒素を用いた調査の結果、春先地温3〜4℃以下の時期(土壌凍結期間)においても牧草の養分吸収は行われていることが確認された。
 2. 融雪直後、凍結土壌上に施用された窒素はほとんど横、雪上追肥の場合は融雪水と共に流去し、施肥位置およびその周辺での
残留は認められなかった。
 3. 圃場における実証試験の結果、融雪直後追肥は2カ年ともその効果が認められ、特に生育初期におけるイネ科に対する効果が顕著であった。なおこの場合施用窒素にはアンモニア態を用いるよりも尿素態を用いる方が持続性の点で勝った。

・ 試験成果の具体的デ−タ
 試験−1


 試験−2


 試験−3
 時期別牧草乾物収量            (1968)
月日 乾物重g/m2 乾物重
指数
イネ科 マメ科
5.5 雪上追肥 16.1 16.7 32.8 111
融雪直後追肥 30.6 19.5 50.1 170
標準追肥 6.7 22.8 29.5 100
無追肥 8.9 12.8 21.7 74
5.15 雪上追肥 33.4 20.6 54.0 60
融雪直後追肥 80.1 21.7 101.8 12
標準追肥 60.6 30.0 90.6 100
無追肥 40.6 19.5 60.1 66
5.25 雪上追肥 45.0 22.8 67.8 57
融雪直後追肥 82.8 37.3 120.1 101
標準追肥 72.3 46.1 118.4 100
無追肥 42.2 18.3 60.5 51
6.4 雪上追肥 48.4 29.5 77.9 49
融雪直後追肥 101.7 95.6 197.3 125
標準追肥 83.4 74.5 157.9 100
無追肥 50.0 23.9 73.9 47
 標準追肥を100とした

                                 (1969)
月日 乾物重g/m2 乾物重
指数1
乾物重
指数2
イネ科 マメ科
5.10 雪上追肥 U 13.2 9.2 22.4 67 100
S 8.0 13.2 21.2 63 95
融雪直後追肥 U 28.8 12.4 41.2 123 100
S 24.8 17.2 42.0 125 102
標準追肥 U 21.2 12.4 33.6 100 100
S 23.2 12.8 36.0 107 107
無追肥 12.8 14.0 26.8 80  
5.20 雪上追肥 U 28.0 11.6 39.6 74 100
S 23.8 17.2 41.0 77 104
融雪直後追肥 U 53.6 29.6 83.2 156 100
S 43.4 26.8 70.2 132 84
標準追肥 U 33.0 20.2 53.2 100 100
S 51.4 24.4 75.8 143 143
無追肥 19.6 10.8 30.4 57  
5.27 雪上追肥 U 52.0 23.0 75.0 75 100
S 34.0 25.0 59.0 59 79
融雪直後追肥 U 81.0 50.0 131.0 131 100
S 68.0 37.0 105.0 105 80
標準追肥 U 65.0 35.0 100.0 100 100
S 85.0 40.0 125.0 125 125
無追肥 39.0 21.0 60.0 60  
 1. 標準追肥、尿素区を100とした
 2. 各区の尿素区に対する硫安区の指数
   U:尿素区  S:硫安

・ 普及指導上の注意事項
 1. 融雪直後追肥は団地ごとの空中散布が望ましい。
 2. トラクタ−による施肥にあたっては、融雪直後の朝夕草地表層部が凍結状態の時間帯に行い、日中表層の融解時あるいは凍結層がごく薄くなった時期では草地に損傷を与えるおそれがあるのでさけるべきである。