【指導参考事項】
傾斜地における大型作業機の適応化試験
(作業機の下方移動防止試験)
(昭和44年〜46年)
中央農試 農業機械部

・ 目 的
 トラクタ−作業機の下方移動特性を究明してその防止法を見い出すとともに、装置の改良開発を試しみて、下方移動防止の効果について確認し、傾斜地機械化の参考に供する。

・ 提出理由
 今後、土地利用の拡大に伴う傾斜地の機械化は作業方法と同時に下方移動防止装置の開発は必須である。本成績は比較的取り入れ易い防止装置についてその効果を分析したもので下方移動防止の指針として資料の検討を計る。

・ 試験方法
 1. 試験装置:6分力試験枠による下方移動力の測定、レ−ル敷設
 2. 下方移動防止装置:ホイ−ルスパイク(長さ0〜100mm、巾90mm)、保持輪ロ−リングコルタ(460∮mm)
 3. 供試機:モデル作業機、カルチベ−タ(5畦)、プランタ(4畦)、トラクタ45PS
 4. 土壌条件:砂壌土、水分(Wb)24〜26%、30〜40%(現地)、剪断試験C=0.1〜0.2kg/cm2、∮=25〜40°
          硬面10cm深で4kg/cm2、軟面10cm深で1.8kg/cm2
 5. 傾斜度:20°


・ 試験成果の概要
 1. トラクタホイ−ルスパイクは、硬盤に達してない場合には、剪断抵抗の少ない既耕地(砂質土壌)では、下方移動防止の効果は認められない。
 2. 作業機にロ−リングコルタを装着した場合、硬軟いずれの斜面でも効果があり、下方移動力減少は50〜100kgで、硬面でより効果ができやすい。
 3. 作業機の保持輪の効果は極めて著しく、軟面で後輪は200kg、硬面で250kgの移動力の減少が認められた。他方前輪は50〜100kgの増加となるが、操向角を山方向へむけることにより消去できる。
 4. 作業機(保持論を有したもの)を山側へ平行に移動させた場合には、防止効果は認め難い。保持輪を作業機に平行にして移動させた場合には、偏角を助長する方向に作用する。
 5. 偏角をつけることによって、後輪の下方移動力は硬軟共に著しく減少はするが、前輪に及ぼす影響は少ない。特に軟面では前輪による上方への操向能力は少なく、走行性の困難さが示された。

・ 主要成果の具体的デ−タ
             圃場傾斜度20°

            図1 スパイク効果



        図2 コルタによる下方移動防止効果



         図3 保持輪角による防止効果


             山移動距離
        図4 ロ−リング山移動効果



                         図5 トラクタ姿勢と下方移動力

・ 普及指導上の注意事項