【指導参考事項】
場所・科名  道立十勝農試 農業機械科
課題名  馬鈴薯播種機性能試験
試験年次  昭和46年

・ 目 的
 馬鈴薯の播種作業でとり残されている課題は種子の予借、いも切りの省力化である。いも切りについては、いも切り機が開発され、一部に利用されるようになってきたがさらに省力化するためには、いも切り装置付き播種機が考えられる。国産の播種機について試験し、特性を明らかにし、導入利用上の参考に供する。

・ 試験方法
 1. 期日  昭和46年10月
 2. 場所  河西郡芽室町 道立十勝農試 実験圃場
 3. 供試機  十勝農機式 PK2馬鈴薯切断播種機
 4. 調査方法
  (1) 播種精度
   a.播種間隔、 b.切断比、 c.播種位置、 d.作業速度 0.5、1.0、2.0m/sec
  (2) 作業能率
  (3) 室内試験
   a.播種間隔、 b.切断比  


・ 試験結果
 1. いも切り装置はシ−ドプレ−ト下に取付けられており、回転ホ−クで落下いもを固定切断刃に押しだし、中央で切断する方式である。播種間隔は左右長さの異なる側圧板で調整する。
 2. 作業速度0.46m/sec〜1.79m/sec間の播種精度(間隔)はあまり差異がなかった。平均播種間隔は37.8〜40.5cm、その標準偏差は5.22〜8.92cm、変異係数は13.4〜23.4%である。この成績はいも切り前処理の同型播種機に比較し損色あるものではない。
 3. 播種間隔の分布をみると、1.0m/sec〜1.78m/sec間が安定している。1.2〜1.4m/secが適正作業速度と考えられる。
 4. いもの切断はほとんどが厚さ切りでる。作業速度が2m/sec台になると横切り率が増加し、厚さ切りでも斜め切りが多い。
 5. いもの左右切断は斜め切りになってもあまり差異がない。平均の切断比は40.47:59.53、47.38:52.67と比較的高い切断精度である。
 6. 播種作業能率はいも切り作業が済略されるとして、従来のものに比較すると、45.92hr/haに対して22.07hr/ha、約1/2となる。補助作業者は2名に対して1名とした。これは全粒扱いであること。傾斜板の回転速度が1/2であることなどからバケットのすくい取り精度が高まり、手直しが容易になったためである。
 7. 得失
  (1) いも切りの作業労力を消略できる。
  (2) 全粒扱いで取扱いが容易、補助作業者を1名少なくできる。
  (3) 種子選別を機械化することにより、さらに播種性能を高めることができる。
  (4) 種子消毒(切断)を自動化できる可能性がある。
  (5) 種子予措が不充分であると腐敗いもの切断一欠株のおそれがある。
  (6) すべて1/2切断であり、大塊茎を使用すると種子量が多くなる。
     (注:種子選別時に小塊茎は加工用、大塊茎は食用にするなどの措置があれば、この問題は解消され、さらに播種作業性能の向上、生育の均一化などに発展する。)

 供試機仕様諸元
型  式 PK2 バケットの大きさ 60×62×30mm
全  長 1.700mm バケットの数 26
全  高 1.400mm オ−プナの形状 200×125×125
全  巾 1.850mm 培 の形状 デスク270mm∮
重  量 316kg 鎮圧輪の形状 300mm∮ 中330mm
牽引方式 3点リンク直装 駆動輪サイズ 400-16
播種方式 シ−ドプレ−ト型(傾斜) 駆動取出し 右車輪
播種畦数 2 肥料送出し装置 低板回転式
補助作業員 1 播種間隔調節 22〜45cm
種子ホッパ容積 0.75m3×2 畦間調節 66〜75cm間自由
肥料ホッパ 0.85m3 いも切り装置 回転ア−ム式
シ−ドプレ−ト経 600mm∮ 落下一調整 側圧板
傾斜度 20°〜60°    

・ 今後の課題
 1. 種子消毒(切断)法 (消毒装置試験中)
 2. 種子予措の省力化
 3. 種子いもの貯蔵法(施設の大型化、集団利用)
 4. 種子いもの運搬法


                         図1 PK2馬鈴薯切断播種機




                            図2 いも切り装置

 表1 播種精度
テスト
NO
エンジン
rpm
変速位置 作業速度
(m/sec)
滑り率
(%)
播種間隔
(cm)
標準偏差
(cm)
変異係数
(%)
1 1.500 H-2 0.46 3.7 37.8 6.94 18.3
2 1.500 H-2 0.46 4.5 3.89 8.86 22.7
3 2.000 H-2 0.64 4.8 38.0 8.45 22.2
4 2.000 H-2 0.65 3.2 39.2 8.16 20.8
5 1.200 H-3 0.80 5.5 38.0 7.10 18.7
6 1.200 H-3 0.80 3.9 38.7 5.22 13.4
7 1.500 H-3 1.00 3.5 37.8 8.77 23.2
8 1.500 H-3 1.00 4.1 38.8 7.43 19.1
9 2.000 H-3 1.33 6.0 38.1 8.92 23.4
10 2.000 H-3 1.39 4.2 40.5 8.50 20.9
11 1.000 H-4 1.78 4.2 38.1 7.22 18.9
12 1.000 H-4 1.79 3.8 38.1 7.15 18.7
13 1.200 H-4 2.08 5.1 38.0 12.80 33.6
14 1.200 H-4 2.02 5.2 38.8 15.10 38.9
  供試トラクタ シバウラS30

 普通型の播種精度例 (S43)
項目/
機種
作業速度
(m/sec)
滑り率
(%)
播種間隔
(cm)
標準偏差
(cm)
偏異係数
(%)
A 0.58 31.2 32.7 7.79 23.8
B 0.86 22.6 31.1 8.70 28.0
C 1.13 5.9 32.3 16.10 49.9


             速度と播種間隔変異



                  速度と播種間隔差


 作業能率比較 hr/ha
項 目/
機 種
選種 いも切り 播 種
普通型プランタ 12.97 19.30 4.55
9.10(補助)
45.92 100
切断装置付プランタ 12.97 0 4.55
4.55
22.07 48

播種間隔



播種間隔分布



 切断内容
作業速度
(m/sec)
切断種別 (%) 厚さ切り中の
斜め切り割合
(%)
切断重量比(小)
(%)

たて切り

横切り

厚さ切り
0.46 30 0 70 0 44.45
0.46 30 0 70 57.0 43.55
0.46 0 0 100 30.0 44.73
0.64 30 0 70 14.3 47.38
0.65 20 0 80 37.5 43.18
0.80 10 0 90 22.2 44.01
0.80 30 10 60 67.0 46.55
1.00 20 0 80 37.5 41.93
1.00 10 10 80 62.5 44.70
1.33 0 0 100 30.0 43.49
1.39 20 0 80 87.5 41.57
1.78 10 0 90 78.0 44.19
1.79 40 20 40 75.0 45.08
2.02 10 30 60 83.5 40.47
2.08 20 30 50 100.0 43.09