【指導参考事項】
てん菜異常生育叢根病に対する育苗条件に関する試験成績
(昭和45〜46年)                  道立 北見農試
                             (日本 甜菜KK)

・ 目 的
 本症状の発病は直播ほ場よりも移植ほ場で多く、育苗における環境条件が発病に関与しているものと考えられ、その発病条件を究明して対策技術に資する。

・ 試験方法
 1. 育苗条件に関する試験
   供試土壌:  津別町発病土壌・播種月日:昭和46年4月21日
           温度別…………高温区(温室25℃±5℃)、低温区(10℃±10℃)
   処理区別:<土壌水分別……少湿区(最大容水量の20〜60%)適湿区(40〜60%)
                      過湿区(60〜80%)
            土壌PH別………PH3.8〜7.2、CaCo3、Sで矯正 
 2. 網走管内における発病実態調査
    調査月日:9月〜10月、調査項目:発病程度、耕種概要、土壌PHなど


・ 試験成果の概要
 昭和45・46の2ヶ年に渡る試験の結果。次のことが明らかとなり、その対策が必要である。
 1. 網走管内26市町村における発生分布は、昭和45年度は13市町村、昭和46年度は10市町村に認められた。さらにPolymyxa菌の寄生は昭和46年度は17市町村で確認された。
 2. 土壌PHとPolymyxa菌の寄生および発病とは密接で、PHの高いほど寄生および発病は増大する。
 3. 土壌温度および土壌水分とPolymyxa菌の寄生および発病とは密接で、温度ならびに水分の高いほど寄生および発病は増大する。
 4. 以上の結果から次の対策が必要である。
  1) 土壌PHは6.0以上としないこと。
  2) 温度は20℃以上にしない。
  3) 灌水は出来る限り抑制する。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 育苗条件とてん菜異常生育の発病および収量 (北見農試)
育病条件 移植時 P菌寄生率
(5/Ⅵ)
病株率 根重
(14/Ⅹ)
(ton)
根中糖分
(%)
茎葉重
(g/20本)
根重
(g/20本)
地上部
(8/Ⅸ)
(%)
根部
(14/Ⅹ)

高温 PH 6.5 適温 66.0 14.0 100 100 100 1.1 14.8
低温   〃   〃 10.6 1.5 100 26 32 2.4 16.0


少湿   〃  低温 9.5 2.9 40 26 13 2.9 16.0
適湿   〃   〃 8.8 1.3 90 26 24 2.9 15.9
過湿   〃   〃 6.8 2.1 100 75 56 2.2 15.3
PH PH 3.8 低温 ・ 適湿 5.8 1.6 0 0 0 2.7 15.5
   4.2   〃   〃 8.8 1.6 0 0 0 2.9 16.0
   6.3   〃   〃 11.6 1.5 60 23 22 3.5 15.2
   6.8   〃   〃 11.0 1.6 100 65 55 2.1 14.8
   7.0   〃   〃 12.2 4.3 100 80 80 1.6 15.0
  注) P菌:Polymyxa菌                            (1区30株 2反復平均)


 網走管内における土壌PH別と発病およびPolymyxa菌の検出
                           (北見農試 46年)
項 目 異常生育発病ほ場数 Polymyxa菌の検出ほ場数
育苗土PH/
ほ場土PH
4.7〜
6.0
6.1〜
6.5
6.6〜
7.5
7.6〜
8.4
4.7〜
6.0
6.1〜
6.5
6.6〜
7.5
7.6〜
8.4
4.6〜6.0 0/8*
(0)**
1/5
(50)
3/10
(30)
7/10
(70)
2/8*
(25)**
1/5
(20)
3/10
(30)
3/10
(30)
6.1〜6.5 0/2
(0)
1/2
(50)
1/2
(50)
1/4
(25)
2/2
(100)
2/2
(100)
2/2
(100)
2/4
(50)
6.6〜7.5 3/3
(100)
0/1
(0)
2/5
(40)
1/3
(33)
3/3
(100)
1/1
(100)
5/5
(100)
3/3
(100)
7.6〜7.7 1/1
(100)
0/0
(−)
1/2
(50)
0/0
(−)
1/1
(100)
0/0
(−)
2/2
(100)
0/0
(−)
  注) *  発病ほ場数またはP菌検出ほ場数/調査ほ場数を示す。
     ** 発病ほ場率またはP菌検出ほ場率。

・ 普及指導上の注意事項
 なし