【普及奨励事項】
繁殖豚の群飼養管理と無看護分娩に関する試験成績
(昭和42〜46年)
滝川畜産試験場 飼養科

・ 目 的
 北海道の気候、土地条件に立脚した繁殖豚の多頭飼養管理技術を確立するため、雌豚を妊娠期と授乳期に分けて管理することを
基本とし、省力的な群飼養法と寒地における無看護分娩法について検討した。

・ 試験方法
 1. 妊娠豚の群放飼に適する諸施設の試作、その利用性および放飼場の広さを検討した。
 2. 妊娠豚の夏季放飼、冬季舎飼管理と年間舎飼法を16頭のランドレ−ス種雌豚を用い、4産目までの繁殖性を比較検討した。
 3. 分娩柵利用により、無看護分娩を行った場合の母子豚の動態、哺育成績、低温下における子豚体温の推移および保温方法を検討した。

・ 試験成果の概要
 1. 妊娠豚の群飼養施設としては、飼料給与の均一性を図るための給餌柵が必要である。
 2. 群放飼場の広さは、気候や土壌性状に影響されるが、500〜1.000m2(4頭を1群として)が一応の目安となる。
 3. 育成期、妊娠期に群放飼を行い、冬季には舎内飼養した場合は、年間舎内飼養したものに比較して、子豚の哺育率が高まり発育も良好で、肢蹄や背腰の弱さを是正する効果がある。
 4. 温暖な季節の分娩は、子豚の習性から分娩柵を利用することにより、まったく母豚にまかせても良好な哺育成績が得られる。
 5. 低温時に断熱材と赤外線電球を用いて分娩柵の周囲だけを保温する方法を検討した結果、舎内温度が5℃以上では実用性があると考えられる。
 6. 低温時の無看護分娩では、新生子豚の体温が著しく下降するので、豚舎内温度の注意が必要であり、一応の安全な目安としては15℃以上と考える。
 7. 放飼型態は、糞尿の搬出作業がなく、分娩柵利用による無看護分娩では、子豚の取り上げや哺乳介助などの作業が省略されることによりきわめて省力化される。

・ 主要成果の具体的デ−タ
 哺育成績
  分  娩
総頭数
生産
頭数
哺育開
始頭数
哺育率(%) 離乳
頭数
3週令 5週令
試験区 10.5 9.7 9.1 93.5 93.1 8.4
対照区 10.1 9.6 8.9 82.1 81.2 7.6

 種雌豚産子検定による繁殖性の評価
区分   2 3 4産次 全体


合格腹数 4 4 4 3 15
検定腹数 7 7 6 5 25
合格率 57.1 57.1 66.7 60.0 60.0


合格腹数 0 5 4 3 12
検定腹数 7 7 7 6 27
合格率 0 71.4 57.1 50.0 44.4

 無看護分娩における哺育成績
区分 母  豚 分娩
月日
死産
濁汰
哺育成績(頭数・体重) 育成率(%)
名号 品種 産次 哺乳開始(kg) 3週令(kg) 5週令(kg)


M1 L 1 7.16 ミイラ 91.6 76.6 79.3 77.8
M2 L 1 7.12   81.5 85.5 87.2 100
M3 L 1 7.13 死産 1
里子+1
91.4 94.2 96.0 100
M4 LH 1 7.14 里子−1 60.9 64.0 66.4 100


S1 L 7 8.19   111.4 115.4 118.2 100
S2 L 3 9. 1 3 121.4 124.9 127.2 100
S3 L 7 8.19 1 91.6 96.0 98.6 100
S4 YL 5 8.21   121.4 126.0 128.4 100

 低温環境(3〜6℃)における新生子豚の体温推移(℃)
区  分 個体数 分娩時 30分後 1時間後 3時間後 10時間後
自然放置区 5 38.5 33.8 34.3 36.2 37.3
保温介助区 5 39.0 37.3 37.7 38.1 38.1

・ 指導参考上の注意事項
 1. 妊娠期と授乳期を分けて管理する方式の導入は、規模、労働力、現有蓋舎施設などの関連を含めた経済的な検討が必要である。
 2. 群の構成は、できるだけ分娩予定の近いものを組合せ、品種や産歴をそろえることが望ましい。
 3. 放飼豚は定期的な駆虫と日本脳炎ワクチンの接種が必須条件である。
 4. 簡易豚舎は、妊娠期に限って利用するものであり、分娩、子豚豚舎としては適当ではない。
 5. 冬季の無看護分娩の実施は、舎内温度が決定的な影響を与えることから、保温方法についての対策が必要である。