【普及奨励事項】
牛の消化管内線虫類の寄生防除に関する試験成績 (昭和41〜45年) 新得畜試 衛生科・乳牛科 滝川畜試 衛生科 |
・ 目 的
本道の牧野における放牧多発疾病のうち、放牧牛の消化管内線虫類の実態を明らかにするとともに、その被害を把握して、防除法の参考資料とする。
・ 試験方法
調査1. 牧野における牛の消化管内線虫類の実態 (昭和43〜44年)
〃 2. 牛における主な消化管内線虫類の年間消長 (昭和41〜42年)
試験1. 放牧育成牛に対する線虫類の影響 (昭和42年)
〃 2. 早期放牧牛に対する線虫の影響と管理による防除法 (昭和44〜45年)
〃 3. 放牧育成牛におけるタイレリア病と線虫の混合感染 (昭和42年)
〃 4.5.線虫に対する各種駆虫薬の効果 (昭和42・44年)
・ 試験成果の概要
1. 道内牧野12ヵ所の初放牧牛延1.285頭の調査より、寄生率は44%平均排卵数122epqの低寄生で直接的な被害は認められなかったが、平均排卵数は放牧最盛期213epqと多く、2.000epqをこえる高度寄生牛が5%も認められ注意を要する。
2. 検出された虫類はク−ペリア・オンコフォ−ラ・オスタ−グ胃虫、および牛稔転胃虫が大勢を占め、年間の消長はル−ズバ−ン飼養牛は7月と11月にピ−クをもつ2峰性を示したが、カ−フペン飼養牛は12月をピ−クとする1峰性で両群とも冬期まで感染子虫の排出を認めた。
3. 線虫類の直接的被害としては、7月以降最低平均排卵数1.300epqの自然感染牛群は1日平均増体量0.08kgの損失を受け、子牛の発育停滞の1因と考えられた。
4. 早期放牧牛に対し濃厚飼料0.8〜1.2kg(1日1頭当り)給与した区は、0.4kgを給与した区にくらべ線虫の排卵数が少ないことを認めた。
5. 現在市販の各種駆虫薬はいづれも高い駆虫率(75.6〜100.0%)を示したが、野外では再感染を防ぐことが線虫防除の要点の一つであると考えられる。
・ 主要成果の具体的デ−タ
図−1. 飼養形態別子牛の感染子虫の推移
表−1. 試験1〜3の増体量および排卵数
1日平均増体量土変動係数 | 7月以降の平均排卵数の範囲 | |||
駆虫群 | 自然感染群 | 駆虫群 | 自然感染群 | |
試験1 | 0.69kg/日±51% | 0.47 ±48% | 13epq | 154epq |
試験2(1969) | 0.60* ±15 | 0.51 ±24 | 2.100〜2.400* | 2.800〜3.400 |
試験2(1970) | 0.64* ±14 | 0.57 ±19 | 2.800〜3.450* | 1.350〜5.250 |
試験3 | 0.61 ±8 | 0.59 ±13 | 20〜110* | 280〜480 |
1969年 | 1970年 | ||
処理 | 増体 | 処理 | 増体 |
0.4kg | 0.48kg/日 | 敷料 | 0.67kg/日 |
0.8 | 0.56 | 土間 | 0.55 |
1.2 | 0.63 | 無処理 | 0.61 |
区間差 | 0.08 |
・ 普及指導上の注意事項
若干放牧牛が多くかつ消化管内線虫類に汚染されている牧野での防除対策。
(1) 牛の牛栄養保持につとめること。
(2) 線虫排卵数の急増期になる7月下旬に糞便検査により1.000epq以上の排卵牛が多いときは若干牛全頭に対し駆虫を実施し、駆虫群清浄牧区に転牧することが望ましいが、不可能な場合は8月下旬にさらに駆虫することが望ましい。
(3) 退牧時に栄養、発育不良牛については再度糞便検査を実施して1.000epq以上のものについて駆虫をして舎飼いに移行するよう指導する。