【指導参考事項】
青刈とうもろこしサオレ−ジの品質改善と飼料価値査定に関する試験成績
(昭和43〜45年)
新得畜試 草地飼料作物科

・ 目 的
 コ−ンサイレ−ジの品質を向上させるための改善策と、1代雑種を用いたコ−ンサイレ−ジの飼料価値を検討する。

・ 試験方法
 1. 十勝地方のコ−ンサイレ−ジの品質について(43〜45年)
   当場で調査分析した結果と、十勝飼料品質改善共励会での審査成績から十勝地方のコ−ンサイレ−ジ
の品質の実態を調査した。
 2. 踏圧添加剤がコ−ンサイレ−ジの品質に及ぼす影響について(43年)
   乳酸菌およびプロピオン酸ソ−ダの添加効果と踏圧の有無による品質の差を複交8号を供試して1t容量の小型サイロでサイレ−ジを調整し、化学分析とめん羊による消化試験から検討した。
 3. 1代雑種コ−ンサイレ−ジの飼料価値についてサイレ−ジを調整し、飼料価値を検討した。
 4. コ−ンサイレ−ジの簡易な飼料価値推定法について(45年)

・ 試験成果の概要
 1. 十勝地方で生産されたコ−ンサイレ−ジの化学的品質はすぐれていたが、評点基準による合計点数は60〜65点の範囲に入るものが大部分であった。特に、水分・穀穂の混入程度および穀実の成熟程度での得点が低かった。
 2. 小型サイロによる調整試験から確実な推察はできないが、無添加でもすぐれた化学的品質のコ−ンサイレ−ジが調整可能であった。無踏圧区でわずかにTDN含量が減少したが有意な差はなかった。
 3. 早生品種(複交4号および交4号)を用いたサイレ−ジは70.89点、乾物中TDN含量が67.8、72.6%、DEが3.15・3.33Kcal/gDMで各組成の消化率も高く、摂取量も多く、窒素出納もすぐれていた。中晩生、晩生品種の交8号およびジャイアンツでも乳熟期以降はTDN含量が65%以上を示した。
 4. 雌穂を有しない茎葉部分サイレ−ジよの比較で、雌穂の混入程度とその熟度によってサイレ−ジの飼料価値が決まることが判明した。この結果から簡易な飼料価値推定の算出式を設けた。
       TDN=無水茎葉重×0.582+無水雌穂重×0.850
       DCP=   〃   ×0.047+   〃   ×0.068
       F U=   〃   ×0.657+   〃   ×0.950
 5. 以上のことから、適確な栽培法に従い、収穫時の原料の雌穂率が高く、糊熟期以降に登熟が進む品種を用いることにより、飼料価値の高い、高品質なコ−ンサイレ−ジの調整可能なことを明らかにした。

・ 主要成果の具体的デ−タ
 収穫時の調査結果とコ−ンサイレ−ジの組成、消化率および飼料価値
年次 (年) 43 44 45
品  種 複交8号 複交4号 交8号 ジャイアンツ 交4号 交8号 ジャイアンツ

生草(t/10a) 3.30 4.19 6.21 6.85 4.24 6.41 6.69
乾物( 〃 ) 0.71 0.79 1.21 1.17 1.20 1.48 1.33
熟  期 糊熟 乳熟 乳熟 乳熟 黄熟 糊熟 乳熟


(%)
乾  物 19.8 18.8 18.9 18.2 23.4 (15.4) 21.4 (17.0) 17.9 (15.5)
粗蛋白質 9.3 7.5 7.6 7.8 9.7 (9.0) 8.6 (7.6) 9.1 (8.9)
粗脂肪 2.9 2.7 2.7 2.5 4.1 (2.5) 3.3 (2.2) 2.6 (2.5)
NFE 56.2 59.2 56.2 53.3 61.3 (50.1) 59.9 (50.8) 54.4 (49.1)
粗繊維 25.0 24.8 25.9 29.5 19.1 (29.8) 22.5 (31.8) 28.3 (32.3)



(%)
乾  分 68 69 65 65 71 (58) 71 (59) 66 (61)
粗蛋白質 59 52 56 58 61 (58) 59 (52) 51 (56)
粗脂肪 80 73 72 68 79 (67) 77 (64) 69 (70)
NFE 73 75 72 69 77 (59) 77 (63) 71 (63)
粗繊維 68 69 63 67 63 (59) 68 (62) 70 (62)
エネルギ− 69 70 67 67 72 (60) 72 (62) 68 (63)



DCP(%) 5.5 4.0 4.3 4.5 5.9 (5.2) 5.0 (4.0) 4.6 (5.0)
TDN(%) 69.0 69.8 65.9 65.1 72.6 (56.2) 72.1 (58.6) 66.8 (59.9)
DE(Kcal) 3.15 3.15 3.14 3.12 3.33 (2.73) 3.44 (2.92) 3.29 (2.91)
100g中FU 15.2 14.6 14.3 13.2 18.8 (9.8) 17.2 (11.2) 13.4 (10.4)
1FUに要するkg 6.6 6.8 7.0 7.6 5.3 (10.2) 5.8 (8.9) 7.5 (9.6)
  注) 1. 組成の乾物以外の成分およびDCP、TDN含量は乾物中%
     2. 45年の( )内は各品種の茎葉部分サイレ−ジの値を示す。

・ 普及指導上の注意事項
 1. 早生品種から、高品質な飼料価値の高いコ−ンサイレ−ジが調整可能であるが、晩生の品種と比較して、単位面積当たりの栄養収量は少ない傾向がある。
 2. 昭和34年度の指導参考事項「玉蜀黍一代雑種の飼料価値について」の成績中、青茎葉のFUを算出するために使用した当価率が47%と低いため、粗繊維含量による係数を用いて算出し、次のように改めた。
   FU(子実成熟の場合)  =無水茎葉重×0.648+無水子実重×1.229+無水穂芯重×0.330
    〃(子実未成熟の場合)=   〃   ×0.648+   〃   ×1.186+   〃   ×0.330
   DTP(子実成熟の場合) =   〃   ×15.16+   〃   ×69.99
    〃(子実未成熟の場合)=   〃   ×15.16+   〃   ×71.37