【指導参考事項】
酪農生産技術の経済性に関する試験
−草地酪農経営の経営成果に関する要因の解析−
昭和43〜46年
北海道立根釧農業試験場

・ 目 的
 地域酪農は冬期間が長いため、期間中の飼料構成、内容が経営成果におよぼす影響が大きい。近年多頭化が急激に進んでいるが、粗飼料の生産方式は多岐にわっっているので、粗飼料の生産調整貯蔵および給与技術と牛乳生産との乾れを明らかにし、経営改善の資料を得ようとする。

・ 調査方法
 根室管内酪農を対象とし、調査農家28戸の実態にもとづいて粗飼料の生産方式、飼料構造と牛乳生産の関係について検討した。

・ 調査成果の概要
 1. 営農の実態把握
 実態調査において問題の所在を明らかにするため、とくに粗飼料の生産調整貯蔵方式、牛乳の飼養状況、飼料生産量の実態を把握した。
 2. 現状分析
 実態調査にもとづいて、牛乳生産が季節偏倚となっている原因として牛乳の分娩時期のかたよりがあげられる。分娩時期かたよりがおきる原因としては冬季の飼養管理方法に問題があり、そのため、晩秋以降の分娩牛の分娩間隔は平均月数より延期される割合が高い。このような冬季舎飼期間に牛乳生産が正常に行われているかどうか問題である。理論乳量曲線と実乳量曲線を比較してみた結果、理論乳量曲線に対し実乳量は夏季放牧期は高く、冬季舎飼期は低く推移していることが知れ、乳量が低下する時期として10月から11月に当たり、この時期が晩秋放牧から舎飼移行期に相当している。この移行期から舎飼い期間中の飼養管理がよくない原因として牧草調整期間の延長による品質の低下、乳牛1頭当たり粗飼料の量の不足、飼料給与量の過大評価があげられ、機械化体系なども関係している。
 3. 農業所得を高める手段として乳牛多頭化の方向にあるが、その他に、農業所得率、乳牛1頭当たり乳代が関係し、とくに農業所得率を高めることが改善の効果が高いことが明らかとなった。農業所得率を向上するには乳飼比の改善、そのためには粗飼料の量と質が十分でなければならず、現状分析において問題となった事が農業所得に影響していることが明らかとなった。

・ 主要成果の具体的デ−タ
 分娩月と14ヶ月以上の分娩間隔の出現割合
分娩月 分娩頭数 14月以上の頭数 割合
10 11 8 72.8
11 22 15 68.3
12 20 7 35.0
1 19 8 42.1
2 31 17 54.1
3 39 11 28.2
4 53 19 35.9
5 38 7 18.4
6 26 1 3.8
7 24 4 16.7
8 9 2 22.2
9 14 4 28.6


 理論乳量曲線と実乳量曲線の比較  実線=理論乳量曲線


農業所得の多重回帰式
Y=5.629X1+34.3486X2+28.5521X3−1422.62
  (1.1991)  (2.1680)   (5.0758)   
R2=0.95244 R=0.9750 自由度=22 標準誤差=119.32
 但し Y=農業所得1000円        偏決定偏数
    X1=乳牛1頭当り乳代1000円    r2=Y1-23=0.66557
    X2=農業所得率       %     r2=Y2-13=0.90107
    X3=乳牛頭数       頭     r2=Y3-12=0.52914


・ 普及指導上の注意事項