【普及奨励事項】
水稲「北育51号」に関する試験成績
(昭和39年〜昭和47年)
道立北見農業試験場  普作科 稲作係
・ 育種目標
 早熟・耐冷性・良質品種の育成

・ 来 歴
 本系統は上川農試において、昭和36年に「北海182号」(ユ−カラ)を母とし「上育230号」(糯)を父として人工交配を行い、昭和37年冬期温室でF2養成。昭和38年冷水掛流し田で集団養成を行った雑種集団の一部を昭和39年F4で北見農試が譲うけ個体選抜を行い、以降選抜固定をはかり、昭和41年に「北系4127」(粳)の系統番号を附し生産力検定予備試験に供試すると同時に以来特性検定試験に編入昭和42年生産力検定本試験を経て、昭和43年「北育51号」の系統番号を附し奨決予備調査に供試すると同時に道内試験機関において適応性を検定、昭和44年〜47年には、奨励品種決定基本調査及び現地調査により地方適否を確かめたもので、昭和47年でF12である。

・ 特性概要
系統名又は
品種名
熟期
ふ先色
出穂 成熟 長さ 強弱 長さ 粒着 多少 長短
北育51号 中晩 中中 偏数 ヤ短 ヤ強 黄白
はやゆき 中早 中早 中間 黄白
農林20号 中中 中中 中間 ヤ強 ヤ密 赤褐
なるかぜ 中晩 中晩 穂数 ヤ短 ヤ強 ヤ短 黄白
かちほなみ 晩早 中晩 偏数 ヤ短 ヤ疎 黄白
しおかり 晩中 中晩 偏数 ヤ長 黄白
安斉25号 中中 中晩 偏数 ヤ弱 ヤ長 ヤ密 赤褐

系統名又は
品種名
玄   米 障害抵抗性


いもち 障害型
耐冷性
耐倒状性
形状 大小 色沢 光沢 腹白 縦溝 品質
北育51号 ヤ大 ヤ良 ヤ浅 上下下 ヤ強 ヤ強 90.14
はやゆき ヤ多 87.89
農林20号 濃飴 中上 ヤ弱 90.21
なるかぜ 中上下 ヤ強 ヤ強 89.12
かちほなみ ヤ円 ヤ少 ヤ弱 89.70
しおかり 淡飴 ヤ少 上下 ヤ強 ヤ強 中〜ヤ強 90.18
安斉25号 ヤ多 中下 ヤ弱 ヤ弱 87.58

・ 主要な具体的デ−タ
 北見農試成績

系統名又は
品種名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
成熟期における 玄米重(kg/a) 玄米
千粒重
(g)
(%) 耐状の多少 いもち
稈長
(cm)
穂長
(cm)
穂数
(本)
中肥 多肥

44

45

47

平均
北育51号 7 .30 9 .10 57.0 16.7 22.7 52.0 55.4 22.2 20.3 20.3   
はやゆき   .31   .9 77.6 16.4 19.1 52.9 55.7 21.2 22.6 22.6
農林20号   .30   .10 75.0 16.7 19.4 50.4 51.2 20.6 28.4 28.4
なるかぜ 8 .1   .14 57.1 15.2 29.2 50.8 50.7 21.6 21.5 21.5  
かちほなみ    .2   .14 66.0 14.6 26.8 54.5 56.8 19.8 24.7 24.7  
しおかり    .4   .18 70.6 15.7 21.4 56.5 59.0 20.1 33.2 33.2 〃 

47
北育51号 7 .28 9 .13 56.4 16.7 24.0 59.3 63.6 23.1    
安斉25号   .26   .20 62.3 16.7 23.1 59.3 60.3 22.5    

・ 現地試験における成績
  北見農試担当分
項目 年次 系統名又は
品種名
北見 女満別 佐呂間 遠軽 留辺蘂 端野 美幌 滝上



(月日)

44

45

47

平均
北育51号 8 .3 8 .2 8 .1 8 .4 8 .1 7 .30 8 .4 (8 .2)
はやゆき   .2   .1 7 .30   .4   .1 .28   .4 (7.29)
農林20号   .2   .1 8 .2   .3 7 .30 .29   .4 ( .28)
なるかぜ   .5   .3   .3   .5 8 .3 .31   .4 (8 .2)
しおかり   .8   .7   .8   .9   .9 8 .3   .9 ( .10)

47
北育51号 8 .1 7 .31 7 .31 8 .1 7 .29 7 .28 8 .4
安斉系   .1 .28 8 .1 .2 .25 .27   .2



(kg/a)

44

45

47

平均
北育51号 52.7 45.1 44.9 45.1 45.3 46.1 48.8 (30.2)
はやゆき 42.5 38.4 45.2 43.1 42.1 43.7 49.7 (32.1)
農林20号 41.3 37.3 43.0 42.7 42.2 43.6 43.3 (30.7)
なるかぜ 53.1 37.8 45.7 45.1 42.6 49.0 53.6 (30.9)
しおかり 51.6 41.5 46.1 44.5 42.3 47.3 46.2 (27.3)

47
北育51号 62.6 46.4 52.9 50.4 50.4 57.1 53.2
安斉系 61.1 43.8 52.9 48.8 50.9 54.3 47.3

  十勝農試担当分
年次 系統名又は
品種名
出穂期 (月日) 玄米重 (kg/a)
十勝農試 音更 池田 十勝農試 音更 池田
中肥 多肥 中肥 多肥 中肥 多肥 中肥 多肥 中肥 多肥 中肥 多肥

44

45

47

平均
北育51号 8 .2 8 .3 8 .1 (8 .2) 8 .5 (8 .5) 48.7 48.6 46.3 46.3 51.0 (54.0)
はやゆき   .1   .2 7 .29 (7 .31) 7 .31 (.3) 45.7 49.8 41.6 41.6 45.8 (53.2)
農林20号 7 .31   .2 45.8 48.0
なるかぜ 8 .4   .4 8 .3 (8 .5) 8 .7 (8 .8) 46.8 49.8 42.8 42.8 52.1 (53.2)
しおかり   .3   .3   .1 (.2)   .7 (.8) 46.4 45.3 48.7 (48.7) 53.4 (55.1)
かちほなみ   .6   .8   .8 (.9)   .9 (.10) 45.1 46.1 45.4 (42.9) 50.9 (53.3)

47
北育51号 8 .2 8 .4 7 .31 8 .2 56.1 59.3 45.8 55.3
安斉系   .2   .2   .31 8 .5 50.8 49.7 54.7 49.4
  注) ( )内は、44年・45年 2ヶ年平均

・ 適応地帯並びに栽培上の注意
栽培適応地帯
 網走管内、十勝管内に於いては、耐冷性と共に書記生育や登熟性の良さが要求されるが、「北育51号」は、これら両地帯に於ける中生良質品種として「はやゆき」「なるかぜ」「安斉系統」「かちほなみ」「農林20号」及びその他の雑多な品種におきかえて栽培することができる。上川北部については、今回の成績からは検討できないので、適応地帯から除く。
栽培上の注意
 (1) いもち病抵抗性が「弱」であるので、いもち病常発地帯では充分注意し各地帯の防除基準にのっとり、完全防除が必要
 (2) 耐倒状性は「しおかり」よりも強いが、多肥栽培にすると、おくれ穂が多発し登熟不良をまねきやすく品質が悪くなるので、多肥栽培はさけること。
 (3) 登熟が早く整一であるが、刈りおくれることによってサビ米(茶米)を発生し、品質低下まねきやすいので、適期刈りを励行すること。
 (4) 障害型耐冷性は、「なるかぜ」並かやや強いが「はやゆき」より弱く充分ではないので深水灌漑による幼穂の保護を励行すること。
 (5) 感温性はこの程度の熟期のものとしては中位であるが、分けつが旺盛で高位節からも分けつしやすいので、育苗及び本田管理には充分注意する必要がある。
 (6) 良質米の生産と、安定した収量を得るために裁植本数はやや多目にすることが望ましい。