【指導参考事項】
水稲紙筒苗ばらまき移植にに関する試験
2. ばらまき移植における植付姿勢の影響
(昭和46〜47年)      中央農試稲作部

・ 目 的
 ばらまき栽培にいける転倒苗や傾斜苗の割合と生育上の影響を検討して改善手段の一端を得ようとした。

・ 試験方法
 1. 植付姿勢調査  移植時の苗草丈11.0cm、葉数3.4葉の標準的な苗である。
 2. 転倒苗の起き上り調査  紙筒苗を地表面に横にした苗の起き上り角度を調査した。
 3. 植付姿勢と生育  昭46年度5月24日移植
               標準植  紙筒上縁が地表面と水平まで挿す。
               傾斜地  紙筒を45°以上傾斜1/2程度土に挿す。
               直立植  紙筒を1/2土中に挿す。
               水平植  紙筒を地表面に横に置く
                昭和47年度 直立+1.0は稈基部を地表より71.0cm深く植える。−1.0は1.0cm深く

・ 試験結果
 1. 水田土壌の硬さは下げ掘り深さが深いほど正常姿勢を示すものが多く、転倒苗は少なかった。
 2. 落下高度が高いけど正常姿勢を示すものの割合が多くなる結果を得た。
 3. 傾倒および転倒した苗の起き上る状態は先端から変曲状に起き上るのでなく、根もとを基点に茎が直線的に起き上り植付後7日目から70%以上が直立状態になる結果を得た。
 4. 植付姿勢の発根への影響と異なる水温下で検討した結果、水温がやや高い区では水平値(転倒苗)がやや劣った。
 5. 植付姿勢と本田生育は昭和47年においては水平値は初期から中期にかけての分けつ量がやや劣ったが、中期以降は差がなく、昭和46年では初期中期分けつおよび出穂時期・収量ともに差がなかった。

・ 試験成果の具体的デ−タ
 第1表 垂直落下の場合の落下高と植付姿勢(昭46)
区 別 植付姿勢
下げ振り
(cm)
落下高
(cm)
直立〜45°以内
(%)
傾斜45°以上
(%)
転倒苗(90%)
(%)
10 50 4 40 56
100 24 44 32
200 36 44 20
12 50 40 40 44
100 56 56 12
200 40 40 12

 第2表 転倒苗の起き上り調査
年次 植付後
日数
(日)
起き上り角度
0 45°以下 45°以上 直立90°
昭46 3 35.6 27.4 26.8 10.2
5 19.9 38.8 18.6 22.7
7 5.6 21.6 24.6 48.2
昭47 3 22.8
5 57.8
7 0 87.6

 第3表 植付姿勢と生育収量                   (昭46)
項目/
区別
茎数調査 出穂期
(月日)
穂数
(本)
玄米収量
(kg)
収量比
7月6日
(本)
7月26日
(本)
慣行苗標準植 8.5 16.8 8 .9 21.2 518 100.3


標準植 12.4 20.7    .7 22.5 516 100.
直立植 11.7 21.8    .7 23.4 515 99.8
傾斜植 13.5 23.1    .8 25.7 530 102.7
水平植 12.1 21.6    .8 25.4 529 102.4

                         (昭47)
項目/
区別
茎数調査 穂数
(本)
出穂期
(月日)
7月5日
(本)
7月15日
(本)
直立+1.0cm 16.7 25.5 22.1 8 .6
 〃 ±0 17.1 25.1 21.9    .5
 〃 −1.0 17.0 24.8 22.6    .5
水平植 15.8 25.5 22.4    .5

・ 普及上の注意
 横転苗ならびに極減植苗は風波による苗の移動があるので、なるべく正常姿勢であることが望ましい。