【指導参考事項】

米質向上のための栽培環境改善試験 作季の移動と米質向上に関する試験　　−生育粗の改善と米質に関する試験− (昭和45〜47年)　　道立道南農試　作物科

・　目　的
　生育初期と後期の気象がやや不良な地帯の米質の向上をはかり、初期生育の安定化と登熟性の向上をはかる。

・　試験方法
　昭和45年
　　実施場所　瀬棚郡今金町　神丘　　泥炭土

施肥条件	栽植密度	苗素質	品　種	備　考
標　　　肥	20 28	普通苗 熟　 苗	ほうりゅう なるかぜ (普通苗のみ)	耕深12cmN-0.65、P2O5-0.85、K2O-0.7kg/a
深耕多肥				〃　18
追　　　肥				標肥＋幼形期後7日　N-0.2kg/a

　昭和46年、47年
　　実施場所　瀬棚郡今金町　入束　　泥炭土
　　品　　　種　ほうりゅう(熟苗)・ゆうなみ(普通苗)

区　分	N　計	基　肥	追肥			備　考
			26日前	19日前	12日前
標準肥	0.65	0.65				耕深12cmP2O5-0.85、K2O-0.7共通 　〃 18　珪カル15kg/a　　 各区 　〃 〃　ようりん0.5　　　＞栽植密度 　〃 〃　FTE　　 0.4　　　　 30cm×12cm 　　　　　　　　　　　　　　　　 28株/m2
分割施肥	0.95	0.65	0.1	0.1	0.1
追肥(19日前)	0.95	0.65		0.3
〃 (12　〃 )	0.95	0.65			0.3
多　肥	0.95	0.65

・　試験成果の概要
　(1)　生育期節は、熟苗密植で促進し多肥深耕で遅延した。しかし熟苗の遅れは少なかった。
　(2)　穂数は、密植・熟苗・深耕多肥〜追肥で500本/m²程度確保できた。
　(3)　総粒数は、不良年(昭46)3.0万粒、平年並の年(昭45)3.0〜3.5万粒、良好年(昭47)3.5〜4.0万粒を確保。3.5万粒以上確保には密植・熟苗の他に追肥19日前処理が効果が高かった。
　(4)　登熟歩合は、基肥多肥は低下が大きく、追肥による低下は45〜46年でみられたが、昭47年は分割施肥が高く、次いで追肥12〜19日前で向上(80%以上)。また密植により向上、熟苗により低下程度が少ないことを認めた。
　(5)　収量は、47年は熟苗・密植・追肥19日前(66.0kg/a…ほうりゅう)、普通苗密植追肥19日前(68.6kg/a…ゆうなみ)と高収、3等米を生産。45年は熟苗・密植が勝り、55kg/a以上の成果。46年は深耕多肥で50kg/a生産。
　(6)　粒重は、46〜47年追肥12〜19日前で増加するが青米歩合が高い。

・　試験成果の具体的デ−タ

年次	試験区別				m2当 総粒数 (千粒)	登熟 歩合 (%)	玄米重 (kg/a)	玄米 等級
昭 45	ほ う り ゅ う	標 肥	20	普	26.7	75.0	45.8	3　上
				熟	26.7	74.7	48.2	4　上
			28	普	29.1	74.3	53.4	3　下
				熟	29.4	75.2	57.1	4　上
		多 肥 深 耕	20	普	30.9	62.5	50.5	4　上
				熟	34.3	61.5	56.9	3　上
			28	普	33.3	64.4	50.9	4　上
				熟	36.0	67.6	55.6	4　上
		追 肥	20	普	28.0	61.9	43.9	3　下
				熟	32.8	68.6	51.8	4　上
			28	普	33.1	69.0	50.8	4　上
				熟	39.1	74.2	57.9	4　中
	ゆ う な み	標 肥	20	普	25.3	77.4	46.0	4　上
			28	〃	28.4	77.7	54.9	3　下
		多 肥 深 耕	20	〃	26.7	74.1	49.8	4　下
			28	〃	33.1	74.5	53.4	4　中
		追 肥	20	〃	32.3	77.4	43.6	4　上
			28	〃	39.7	76.8	50.8	4　中
昭 46	ほ う り ゅ う (普)	標　　肥			28.3	77.7	43.6	4　上
		深耕分割			26.9	74.0	39.2	4　上
		〃　追-19			32.6	72.9	43.6	4　上
		〃　追-12			27.5	73.4	43.8	4　中
		〃　多肥			33.3	74.8	46.9	4　下
	ゆ う な み (熟)	標　　肥			27.9	81.3	49.9	4　中
		深耕分割			30.2	75.6	48.1	4　中
		〃　追-19			30.2	66.5	49.0	4　中
		〃　追-12			27.2	71.5	47.3	4　中
		〃　多肥			34.3	70.9	50.8	5　上
昭 47	ほ う り ゅ う (普)	標　　肥			40.1	77.5	56.5	3中上
		深耕分割			33.9	82.5	59.5	3　上
		〃　追-19			42.3	75.7	65.7	3　下
		〃　追-12			34.9	80.6	63.0	3　下
		〃　多肥			35.7	79.5	55.3	3中下
	ゆ う な み (熟)	標　　肥			31.6	80.2	66.1	3　下
		深耕分割			37.2	83.3	67.2	3　下
		〃　追-19			33.6	82.7	68.6	3　下
		〃　追-12			39.5	81.0	65.9	3　下
		〃　多肥			31.6	78.9	58.5	3　下

・　普及指導上の注意
　1)　苗素質の拡大による熟苗育苗法を基本的に考慮すること。
　2)　品種は、良質・強稈・登熟性のよい品種を選定すること。
　3)　土壌の化学性より、土改材多投を考慮すること。