【指導参考事項】
道立中央農試稲作部 育種科
・ 課題名  ヒドロキシイソキサゾ−ル粉剤土壌混和による稲苗向上と苗立枯病防止

1. 試験方法
 1) 試験場所: 岩見沢市上幌向町
 2) 耕種概要: イ) 品種名:ゆうなみ
ロ) 播種期:4月21日
ハ) 移植期:5月22日
ニ) 苗代様式:ビニ−ルハウス
ホ) 育苗様式および播種量:箱育苗(マット苗)300cc/箱当り
ヘ) 施肥量および施肥時期
     苗代:元肥NPK各1g/箱、追肥NP1g/箱2回
     本田:元肥N6.6kg、p、7.92kg、K6.6kg、Mg1.76kg/10a当り
ト) 育苗土壌のPH:5.6
チ) 生育の一般的経過、生育期間中の気象条件
   本年の農期間中の天候は5月中旬および6月中旬にやや低温日照又は、7月下旬および8月   下旬にやや低温であったが、日照は多いなど1時期に不順も見られたが全般的には高温多照の天候で経過した。以上のことから水稲の生育も良好で出穂も平年より5日前後早かった、しかし9月中旬の台風20号通過後は曇天多雨となり登熟日数はやや長かった。
 3) 処理区と処理法
試験区
番  号
供試土壌 薬剤名 使用量 (a/箱) 処理方法 備考
1 無殺苗土壌 ヒドロキシイソキサゾ−ル液 0.16 播種覆土後散布 苗代1処理
   3箱
本田
  発根性
  1区2.5株
  3区制
生育収量
  1区20m2
  2区制
2 0.32
3 0.48
4 ヒドロキシイソキサゾ−ル粉 0.16 播種前土壌混和
5 0.32
6 0.48
7 無処理  
8 殺苗土壌 ヒドロキシイソキサゾ−ル液 0.32 播種覆土後散布 苗代1処理
   1箱
本田
   発根性のみ
9 〃 粉 0.32 播種前土壌混和
10 無処理  
 2. 試験結果
  1)移植時の苗質
試験区
番  号
出芽期 出芽
良否
移植時 苗立枯病
発生程度
(%)
草丈
(cm)
葉数
(葉)
乾物量
(g)
1 4月25日 やや良 9.3 2.3 1.80 0
2 9.0 2.3 1.80 0
3 9.0 2.2 1.95 0
4 10.5 2.1 1.75 0
5 8.9 2.3 1.89 0
6 10.7 2.1 1.78 0
7 8.8 2.6 1.58 80
8 8.9 2.2 1.72 0
9 9.5 2.2 1.50 0
10 9.9 2.1 1.50 5
  2) 移植時の発作調査(冷水かけ流し)
試験区
番  号
移植5日後 移植10日後
根長 根数 指数 比率 根長 根数 指数 冷比率 根重 冷比率 茎葉重 全比率
1 1.97 3.90 2.68 293 5.10 5.33 27.2 153 2.50 143 2.27 98
2 2.20 3.90 8.58 327 6.00 6.50 39.0 219 2.45 136 2.60 112
3 1.87 3.87 7.24 276 4.97 6.40 31.8 179 2.47 137 2.35 102
4 1.37 3.50 5.30 202 4.20 6.23 26.2 147 1.91 106 2.35 102
5 2.20 4.33 9.53 364 4.83 5.93 28.6 161 2.29 127 2.40 103
6 1.77 4.13 7.31 279 4.53 5.73 26.0 146 2.38 132 2.29 99
7 1.40 1.87 2.62 100 4.27 4.17 17.8 100 1.80 100 2.31 100
8 2.20 4.13 9.09 347 5.33 6.47 34.5 194 2.42 134 2.31 100
9 1.83 3.20 5.86 224 4.53 5.33 24.1 136 2.31 128 2.20 95
10 1.63 3.87 6.31 241 4.13 5.13 21.2 119 1.80 100 2.15 93
 3) 本田における主育収量
試験区
番  号
出穂期
(月日)
穂揃良否 生育調査 収穫物調査
7月17日 成熟期 総重 精籾
重量
玄米
重量
玄米重 玄米
1000粒重
草丈 茎数 稈長 穂長 穂数
1 8.7 ヤヤ良 52.5 732 59.2 14.0 642 112.8 63.4 53.8 99 23.0
2 53.5 703 56.6 15.0 599 108.8 63.6 53.7 99 23.2
3 53.2 686 58.3 14.6 616 111.5 64.9 54.7 101 23.2
4 54.3 754 60.7 14.2 619 115.3 66.8 56.6 104 23.3
5 52.5 763 60.6 14.4 638 117.2 67.2 56.9 105 23.1
6 53.4 793 57.1 14.1 644 112.8 65.9 55.8 103 23.2
7 8.10 47.8 627 58.9 15.1 607 116.6 64.5 54.4 100 22.6
 3. 考察および問題点
 1) 出芽はビニ−ルハウス内でポリフィルムの2重被覆で行ったが、当時の天候も良かったため出芽は良好であり、処理による差は認められなかった。しかし1.5葉期頃より7区の無処理で苗立枯病が見受けられ、その被害程度は次第に大きくなり、移植時では全体の80%に達した。しかし10区の殺菌土壌の無処理では一部分に僅か苗立枯病が認められたが、処理区については液剤・粉剤とも苗立枯病は認められなかった。移植時の生育調査でも薬剤処理の間には大差は認められないが、7区の無処理区は生存株で調査したため苗立枯病の発生により薄播状況に類似したため葉数が多かった。
 2) 冷水かけ流しによる発根調査では7区の無処理に比べ薬剤処理かいずれも勝り、処理効果が認められたが、薬剤別では薬量間の差は認められない。なお、移植10日後処理では殺苗土壌の無処理も薬剤処理より劣った。
 3) 本田への移植は田植機(イヒキ)で行ったが、無処理区は苗立枯病の発生のため停止させ、カッテングしてから生存株を取り出して本植したが、初期の活着およびその後の生育は劣り、出穂期も遅れたが、本年の好天候により成熟期は穂数なども処理区と大差はなく収量に於いても差はなかった。しかし玄米は青米混入割合も多く1000粒重は劣った液剤と粉剤間および薬量間については判然とした差は認められなかった。