【普及奨励事項】
えん麦「北海7号」に関する試験
(昭和36年〜47年)
北農試 草地開発第2部  上川農試、十勝農試、北見農試、中央農試、中央農試原々種農場

・ 育種目標
 耐倒状性・良質多収品種の育成

・ 来 歴
交配年次  :昭和36年
交配場所  :北海道農業試験場
交配組合せ:(S.84×Milford)×前進
育種方法  :系統育種法
育成経過  :昭和41年、43年 生産力予備検定試験
         昭和44年以降  生産力検定試験、耐冠状銹病検定試験(本系281号)
         昭和45年以降  奨決基本調査、栽培条件適応性、耐倒状性検定試験(北海7号)
         昭和45年     奨決現地調査
         昭和46年     飼料価値の調査
世   代  :昭和47年      F11     

・ 特 性
 (1) 一般性状: 「前進」に比べて、稈長は同等、穂長は3cm短い。主稈小穂数はやや少ないが、穂数が多く、多けつ性である。穂型は散穂で粒着はやや密である。
 (2) 成熟期  : 出穂期、成熟期ともに「前進」に比べて2日早い中正種で「オホ−ツク」に比べると8日早い早生である。
 (3) 子  実 : 「前進」に比べて、千粒重はやや下回るが、L重は重く、ふ率は7%低く良質である。ふ色は淡黄白色で無芒である。
 (4) 収  量 : 育成地の結果によると、「前進」に比べて、子実重は12%、「オホ−ツク」に比べると16%多収である。異なった栽培条件(多肥、少肥、遅まき、多条まき)でも、「前進」に比べいづれも多収を示し、とくに少肥条件の適応性がまさる。
 (5) 耐倒条性: 「オホ−ツク」に比べるとやや劣るが「前進」より明らかにまさっている。
 (6) 耐病性  : 冠状銹病に対する羅病性は「前進」なみで、とくに強くない。
 (7) 品  質 : 粒大は「前進」に比べやや下回るが、ふ率が低く良質である。

・ 主要な具体的デ−タ−
 1. 育成地における成績
  生産力検定調査(昭和44〜47年 4ヶ年平均)
   ⅰ) 生育調査
系統名または
    品種名
出穂期
(月日)
成熟期
(月日)
稈長
(cm)
穂長
(cm)
m2当穂数 倒状
北海7号 7.9 8.12 117 24 272
前進 7.11 8.14 117 27 224
オホ−ツク 7.17 8.20 120 27 223

 ⅱ) 収量調査
系統名または
    品種名
a当(kg) 対前進比
(%)
L重
(g)
千粒重
(g)
ふ率
(%)
品質
稿稈重 子実重
北海7号 49.5 44.5 112 468 36.0 27.0 上下
前進 44.9 39.7 100 427 37.9 34.0 中下
オホ−ツク 50.6 38.3 96 469 39.9 28.9 上下

 (2) 栽培条件に対する適応性(昭和45〜47 3ヶ年平均)
系統名または
    品種名
多 肥 少 肥 遅まき 多条
子実収量 対前進比(%) 子実収量 対前進比(%) 子実収量 対前進比(%) 子実収量 対前進比(%)
北海7号 40.3 110 40.5 117 31.1 109 44.9 109
前進 36.7 100 34.6 100 28.5 100 41.2 100
オホ−ツク 35.3 96 35.9 104 27.4 96 37.3 91
  注)子実収量はa当りkg

 2. 各農試における成績(昭和45〜47年 3ヶ年平均)
系統名または
    品種名
上川農試 十勝農試 北見農試 中央農試土 原々種農試
成熟期
(月日)
子実
収量
対前進比
(%)
成熟期
(月日)
子実
収量
対前進比
(%)
成熟期
(月日)
子実
収量
対前進比
(%)
成熟期
(月日)
子実
収量
対前進比
(%)
成熟期
(月日)
子実
収量
対前進比
(%)
北海7号 8.7 39.2 100 8.8 28.8 107 8.17 35.3 121 8.15 34.1 111 8.10 37.6 115
前進 8.8 39.1 100 8.9 26.9 100 8.18 29.6 100 8.16 30.7 100 8.12 32.6 100
オホ−ツク 8.10 38.6 99 8.14 29.1 108 8.23 36.6 126 8.21 33.8 108 8.15 37.1 114
  注) 子実収量はa当りkg

・ 適応地帯の栽培上の注意
 1. 適応地帯:全道一円
 2. 耐倒状性は「前進」を上回るが、倒状防止のため、施肥量の増加は避けた方がよい。
   冠状銹病に強くないので、銹病の多発地帯では避けた方がよい。