【普及奨励事項】
とうもろこし「道交16号」に関する試験成績
(昭和45〜47年) (北海道立十勝農業試験場)

・ 育種目標  早熟・多収・耐倒状性品種の育成

・ 来歴
 昭和44年、十勝農試において(N19×CM7)を母本とし、(W41A×W79A)を父本とした複交配によるプリント種×デント種の一代雑種。
 昭和45年以降生産力検定試験供試
 昭和46年以降試験機関および混地試験供試
 昭和46年以降すす紋病特性検定試験供試
 (自殖系統の束丁)N19:道内在束種「坂下」より育成されたプリント種。
 OM7:マニトバ農試より昭和39年導入。
 W41AとW79A:ウィスコンシン入学より昭和39年導入。
 (組合せ):(N19×CM7) (W41A×W79A)


・ 特性
 1. 形態的特性
 初期成育は交4号よりやや劣る。分けつの発生は少なく、また成熟期まで残るものは少ない。
稈は交4号よりも短稈、着穂高はやや高く、稈径はやや細い。全葉数は約14枚で、交4号より1枚内外少ない。
子実は黄色で、フリントがかったデント種、穂型は交4号に類似している。
 2. 生態的特性
 熟期は交4号より約3日早く、子実収量は交4号並である。耐倒状性は交4号より極く強く機械収穫に好適である。適応地帯では病害の発生は少ないが、すす紋病に対しては交4号よりもやや劣る。
 3. 採種栽培
 構成系統の開花期がほぼ一致しており、また単交配間の交配であるため採種栽培は安定している。採種に当っては、♀畦:♂畦の比を4:1にできるので、採種量が多い。

・ 主要成果の具体的データ
 1. 十勝農試における試験成績(昭45〜47年、3ヶ年平均)
品種名 区別 抽糸期
(月日)
稈長
(cm)
着穂高
(cm)
稈径
(cm)
倒状
(%)
10a当収量(kg)
生総重 子実重
(%)
TDN 千粒重
道交16号 1 8.4 193 96 1.76 3 2562 485.3 99 537.9 299g
2 .3 206 75 1.8 8 3159 535.4 103 302
交4号 1 .6 209 65 1.96 35 3526 491.3 100 603.8 293
2 .6 221 71 2.02 47 4024 517.9 100 295
  註:区別1は十勝農試場内における3ヶ年平均。
        2は昭47年水田転換畑における成績を含んだ平均値

 2. 各農試いおける成績(昭46〜47年平均、kg/10a)
品種名 北農試 北見農試 上川農試 中央農原種農
子実重 比(%) 倒状(%) 子実重 倒状(%) 子実重 比(%) 倒状 子実重 比(%) 倒状(%)
道交16号 681 102 4 493 125   642 111 0 664 102 3
交4号 671 100 31 396 100    579 100 0 653 100 31

3 現地試験成績(kg/10a)
  鹿追町 音更町 更別町 足寄町 浦幌町 端野町 美幌町
道交16号子実重 530.5 600.5 620.4 551.9 671.6 753.2 978
全上交4号比 108% 113 115 104 122 106 118
  端野町、美幌町は昭和47年のみ、他は昭和46、47の2ヶ年平均

・ 適用地帯・栽培上の注意
 十勝および網走地方、上川北部における子実用品種「交4号」におきかえて栽培する。なお、同地帯の山麗沿海地帯の早生サイレージ用としても利用できる。
 普及見込面積:約2,000ha
 短稈早熟で耐倒状性が強いので多肥密植栽培を行う。早生サイレージ用とする場合は特に密植が望しく、6,000本内外とする。