【指導参考事項】
単胚種子利用によるてん菜紙筒移植栽培の無間引・苗無選別にかんする試験成績 (昭和46〜47年) てん菜研究所 栽培第一研究室 |
・ 目 的
てん菜の栽培において比較的多くの労力を要することは現今重大な問題となっている。このため単胚種子を利用した無間引移植栽培の実用の可能性を検討し省力技術の確立をはかる。
・ 試験方法
1. 基礎調査
紙筒育苗における単胚種子の発芽特性の調査および発芽に関する理論化
2. 無間引移植栽培に関する試験
2本立株の影響に関する基礎調査 2本立株0、10、20、30、40%
無間引移植栽培試験 間引区 無間引区
3. 苗無選別移植栽培に関する基礎調査 欠株0、10、20、30、40%
苗無選別移植栽培試験 間引・選別区、間引・無選別区、無間引・無選別区
・ 試験成績の概要
1. 無間引および苗無選別栽培における問題点は2本立苗と空筒の発生であるが、これを推定するための理論式を考案し播種量決定の方法を得た。
2. 2本立株は40%まで収量・糖分にほとんど影響しない。2本立株が多くなれば細少な無効根が多くなる傾向はあるがその発生程度は予想される程多くはなく重量的に見れば極めて少ない。
3. 紙筒当り約1粒の播種で無間引移植栽培を行った場合、2本立株は10%以下であり収量・糖分に全く影響を見なかった。
4. 欠株はその割合が多ければ収量・糖分を減少する傾向があるが、20%以内では有意な低下が見られなかった。ただしこの場合栽植株数は10a当り約7.000本であり欠株により減少しても約6.000本が保たれる範囲内であった。
5. 実際に苗無選別移植栽培を行い欠株は最高10数%であったが収量・糖分に有意な低下は見られなかった。
6. 以上のことから発芽率、単芽率の高い単胚種子を用い適正な播種量により2本立苗および空筒苗をある限度内にとどめるこきは無選別移植栽培は可能である。
・ 主要成果の具体的デ−タ−
2本立の影響に関する基礎調査(47年)
処 理 | 収穫本数 本/10a |
根 重 | 根中糖分 | 糖 量 | |||
t/10a | 指数 | % | 指数 | kg/10a | 指数 | ||
2本立 0% | 7.321 | 5.22 | 100 | 15.41 | 100 | 804 | 100 |
10% | 7.697 | 5.29 | 101 | 15.46 | 101 | 819 | 102 |
20% | 8.823 | 5.26 | 101 | 15.36 | 100 | 808 | 100 |
30% | 9.349 | 5.30 | 102 | 15.30 | 99 | 811 | 101 |
40% | 10.007 | 5.21 | 100 | 15.42 | 100 | 803 | 100 |
L S D | NS | NS | NS |
品 種 | 処 理 | 収穫本数 本/10a |
根 重 | 根中糖分 | 糖 量 | |||
t/10a | 指数 | % | 指数 | kg/10a | 指数 | |||
Solorave | 間引・選別 | 9.706 | 3.39 | 100 | 16.17 | 100 | 877 | 100 |
間引無選別 | 6.345 | 5.29 | 98 | 16.30 | 101 | 863 | 98 | |
無間引・無選別 | 6.608 | 5.14 | 95 | 16.26 | 101 | 835 | 95 | |
T 1007 | 間引・選別 | 6.472 | 5.28 | 100 | 16.44 | 100 | 868 | 100 |
間引・無選別 | 6.374 | 5.18 | 98 | 16.39 | 100 | 852 | 98 | |
無間引・無選別 | 6.160 | 5.12 | 97 | 16.51 | 100 | 846 | 98 | |
L D S | NS | NS | NS |
・ 普及指導上の注意事項
1. 無間引移植栽培を安全に行うには2本立株が約20%以内になるようにし、また苗無選別移植栽培は無間引と組み合わせて行い欠株は10%以内にとどめること。
2. このような2本立と欠株の範囲をまもるため適正な播種量を用いるよう特に注意が必要である。
3. いずれの場合も苗床の状況を確認した上でこの省力栽培によるかどうかを決定するような配慮が望ましい。
4. 苗無選別栽培の場合は特に栽植株数が少ない状態で行うことは危険であり、少なくとも10a当り7.000本あるいは更に多い栽植がなされなければならない。