【指導参考事項】
りんごわい性台の耐凍雪性に関する試験(総合助成)
(昭和44年〜47年)
道立中央農試 園芸部
道立道南農試

・ 目 的
 りんごわい性台の実用化に際し、北海道において特に問題となる、その耐凍雪性を明らかにする。

・ 試験方法
 (1)各台木の時期別耐凍性に関する試験
 M系6種、MM系6種、その他7種計19種の台木を用い、時期別耐凍性の検定を行なった。
 (2)台木の耐凍性に及ぼす土壌水分の影響に関する試験
  りんご台木MM106を供試し、土壌水分の高低およびその時期別処理が耐凍性に及ぼす影響をみた。
 (3)各台木の耐雪性に関する試験
 わい性台およびマルバカイトウ、ミツバカイトウに接いだスターキングデリシャスを供試し、樹体生育、枝の発生状態、枝の物理的性質および雪害の実態を調査した。
 (4)耐凍性台木との組合わせに関する試験
  1)下の台としてミツバカイドウ、マルバカイドウを用い、中間台としてM7、M9、アントノフカを接いだ。
  2)下の台としてロブスタ5を用い、中間台としてM8、M9を接木し、更に穂品種旭を接木した。

・ 試験成果の概要
 (1)各台木の時期別耐凍性に関する試験
 台木の種類、系統により時期別耐凍性は異なるが、特徴的なものをあげると、全期間を通じてアントノフカ、ロブスタ5、ハイバーナルは耐凍性がとくに高いことが認められた。M26は初冬の耐凍性が低かった。他の台については、時期により若干の差異はあるが、現在一般に使用されているミツバカイドウ、マルバカイドウと同程度であった。
 (2)台木の耐凍制に及ぼす土壌水分の影響に関する試験
 全期間同一処理では、土壌水分が高い程樹体生育は旺盛で、耐凍性の低いことが明らかであった。
 時期別処理の影響をみた結果、処理により樹体育成は異なり、全期低水分区が最も耐凍性高く、全期高水分区が最も低く、前期低水分後期高水分区も劣った。前期高水分後期低水分区は結果にふれがあり、明確な判断は下せなかった。
 (3)各台木の耐雪性に関する試験
 耐雪性には、枝の発出角度、発出する枝の太さおよび発生部の高さ、分枝の量により影響をうける。MM109、ミツバカイドウ使用樹は角度が狭く、分岐点の弱い枝の発生率が高かった。M9は角度の広い枝の発生率が高いが、主枝の発出部位が低いため若干の雪害をうけた。
 (4)耐凍性台木の組合せに関する試験
 ミツバカイドウ、マルバカイドウに、M7、M9、アントノフカを中間台として接木した場合高接障害を起こした。
 ロブスタ5を下の台とし、M8、M9を中間台とし、その上に旭を接木した結果高接障害はみられず、樹体もわい化する傾向を示した。

・ 試験成果の具体的データ
 第1表 凍結処理によって被害を受けた温度
処理時期/
処理年/
台木
11月中旬 11月下旬 12月上旬 12月下旬 3月上旬
44〜46 44〜46 44〜46 45・46 46・47
M     7 −15 −10〜−20 −15〜−23 −20* −15〜−20
9 −10〜−15 −15〜−20 −20〜−23 −20〜−25
12 −10〜−15 −15〜−20 −20〜−23* −20〜−25 -20
16 −15 −15〜−20 −20〜−23 −20〜−25 −15〜−20*
25 −10〜−15 −15〜−20 −20〜−23 -20 -20
26 −5〜−10 −10〜−15 −20〜−23 −20〜−25 -20
MM   102 −10〜−15 −10〜−20 -20 -20 -20
104 −15〜−20 −15〜−20 −15〜−23 -25 -20
106 −10〜−15 −15〜−20 −15〜−20 -20 −15〜−20
109 −10〜−15 -15 −20〜−23 -25 -20
111 −10〜−15 -15 -20 −20〜−25 −15〜−20*
115 −15 −15〜−20 −20〜−23 −20* −15〜−20*
A2 −15〜−20 −15〜−20 −20〜−23 -25 -20
C.C −10〜−15 −15〜−20 −20〜−23 -25 −20*
Ant −15〜−20 −20 -23 −25* −20〜
Rob.5 −15〜−20 −15〜−20* −23* -25 −15〜−20*
Hib −15 −15〜−20* −20〜−23 -25 −20〜
ミツバ −10〜−20 −15〜−20* −20〜−23 −20〜−25
マルバ −15〜−20 −15〜−20 −15〜−23 -25 -20
  注)*印はその温度で被害を受けなかったことを示す。

 第2表 台木別主幹から発生する枝の分岐角度 (昭和45年間 中央農試)
台木名 調査樹数 一樹当枝数 平均分岐角度 分岐角度分布
40°以下 45〜55° 60°以上
無剪定樹 M  9 3 23.3本 56.2° 5.1本(21%) 6.0本(26%) 12.3本(53%)
M  7 3 21.3 52.1 6.3(30) 4.0(19) 11.0(52)
M  16 3 34 52.3 5.0(27) 4.3(35) 2.7(37)
MM109 2 23.5 48.1 9.0(38) 7.0(30) 7.5(32)
MM111 2 27.5 51.9 8.5(40) 7.0(25) 12.0(44)
ミツバカイドウ 2 20 47.2 7.5(38) 7.5(38) 5.0(25)
剪定樹 M  16 1 13 58.8 0(0) 4.0(31) 9.0(69)
MM109 11.5 54.8 2.5 2.5(22) 4.0(35) 5.0(43)
MM111 2 17 58.1 1.0(6) 6.5(38) 9.5(56)
ミツバカイドウ 2 10.5 50.2 2.0(19) 6.5(62) 2.0(19)
  (注)穂品種はスターキング、樹令7年無剪定樹は昭和42年まで剪定、それ以後無剪定

 第3表 雪害実態調査 M9台スタ−キングの主枝について調査(中央農試 昭和46年)
枝数 枝高 分岐角度 枝直径 枝長 枝幅
被害枝 9 41.6cm 68.9° 3.8cm 199cm 152cm
健全枝 47 58.2 65.9 3.3 184 110
              枝高:主枝発生部の地上からの高さ
              枝長:主枝の先端までの長さ
              枝幅:主枝の最大幅

・ 普及指導上の注意事項
 (1) 凍害の常発地帯においては、耐凍性の特に低いM26台の利用は避けるべきであろう。
 (2) わい性台使用樹においては、1樹当りの主枝数を多くし、主枝上の分枝数を少なくして雪圧の軽減をはかる。