【普及奨励事項】
イチゴ「盛岡16号」に関する試験
(昭和44〜47年)
北海道農試作物第2部園芸作物第2研究室
道立中央農試園芸部花きそ菜科

・ 育種目標及び来歴
 「盛岡16号」は、園芸試験場盛岡市場において、冷涼地の多年生省力栽培に適する品種を育成するために、昭和35年に米国種13品種と我国の11品種系統の間に交配を行ない、多年生栽培適応性、果実形質、耐病性などを主な選抜基準として選抜を続け、その中の2-8(Fairfax×Etters burgの交配実生より選抜した系統)×千代田の交配実生より選抜した。44年度より、北農試、中央農試(指定試験事業)において、導入し適応性の検定を行なった。

・ 特 性
 1、草姿、立生で草勢、分株数、ランナ発生は幸玉と同程度か、やや多い。葉は杯状でやや淡緑色である。結果習性は、1花房あたり4〜7果で少果数型。
 2、熟期、ダナーにやや遅れ、幸玉と同程度か幾分早い中生である。少果数型のため、収穫の終期は幸玉より早い。
 3、収量性、1年目の収量は中位であるが、2年目の収量は多い。1番果は30g以上の大果となるが果型はくずれない。平均果重は、幸玉、ダナー、宝交早生に比べ大きく、収穫末期にも大果を着け、屑果が非常に少ない。
 4、果実特性、果型は円錐〜やや長い円錐形の大果、果色鮮紅色で外観が美しい。果肉着色は淡いが空洞が少ない。糖度高く、食味は甘酸適和して、極めて美味である。また、果実が堅く日持ち、輸送性が、ダナーと同程度以上に良好である。加工適正も良い。
 5、耐病性果実の腐敗は極めて少ないが、茎葉の病害には強い方ではない。

・ 主要な具体的データ
 1、北農試成績
  ア 収穫調査
項目/
品種名
〜 6.25  6.26〜7.5  7.6〜7.15  7.16〜  計 1果平均量g 収穫盛期
重量 個数 重量 個数 重量 個数 重量 個数 重量 個数
44年 盛岡16号 0 0 8 1 151 24 88 12 247 37 6.63 7月11日
〃17号 0 0 70 4 319 461 173 22 562 72 7.76 7月14日
幸玉 0 0 19 2 116 28 89 18 224 48 4.7 7.14、7.11〜7.16
45年 盛岡16号 4 0.3 614 54 753 120 128 31 1500 205 7.33 7.9
〃17号 94 9 393 41 458 83 91 23 1,036 156 6.63 7.9.3
幸玉 81 11 212 37 150 52 70 12 513 112 460 7.57

  イ 特性調査
品種名 果実の特性 草状 カロコ性 




種子
の着
生状















ラン
ナー


ジャ

盛岡16号 3 4 3 3 3 GYP GP 3 4 3 4 4※ 3 4 4 4 5 5
盛岡17号 4 4 3 3 3 3 4 3 4 4 3 5 4 4 5 4
ダナー 3 4 3 4 3 3 4 4 4 5 3 3 3 4 4 4
幸 玉 4 3 3 3 3 GR 3 3 4 2 4 3 5 5 4 4 3
  注) Y:黄、G:緑、P:紫、R:赤、数字は1(不良)〜5(後)の5点法。※は5に近い4である。

 2、中央農試成績
  ア 生育調査および収穫調査
区 別 6月21日調査 罹病程度 前期収量 前期/全期 全 期
ランナー発生数 熟期 ボトリ
チス
葉枯他 6月13日−20日 6月13日−7月21日
最大
葉長
展開
葉数
1節
以上
伸長
1節
以下
合計 重量 平均
果量
重量 平均
果量
盛岡16号 27.9 11.7 27 3 5.7 中生 357 14.6 44 807 122
幸 玉 29.7 12.6 20 3.5 5.5 中生 355 9.6 39 912 91
ダナー 32.1 10.6 21 2.8 4.9 中早生 405 12.8 43 938 115
宝交早生 30.9 13.3 3.3 3.2 6.5 早生 545 12.2 50 1085 104

  イ 特性調査
区 別 果 型 果色 肉色 空洞 硬さ 日 持 6月17日 酸 度 食味
ブリックス 食味による
盛岡16号 円錐〜やや長円錐 鮮紅 10.4 極良
幸 玉 円錐 淡紅 やや不良 9
ダナー 紡錐 濃紅 中〜少  
宝交早生 円錐 8.8

・ 栽培上の注意
 1、本道における露地生食用中生種として優良な品種であり、またトンネル、およびハウス栽培にも有望である。なお、特に、その果実特性から、輸送地帯での栽培により適当していると考えられる。
 2、栽培にあたっては、ウイルスやセンチュウの被害のない健康苗を導入する。育苗圃のセンチュウ対策。
 3、少果数型であることから収穫1年目株の花数を確保するため、充実した大苗を養成する。
 4、収穫2年目株の収量が高く安定することから、栽培管理に充分留意して、2〜3年株の利用も考える。
 5、茎葉病害および、乾燥に特に強くはない。病害防除は徹底する。