【普及奨励事項】
6、いちご病害虫防除による増収技術確立試験
 (1)ウイルスフリー処理苗導入   生産性に関する試験
 ①ウイルス・フリー株導入栽培試験
 (自然環境におけるウイルス病の伝染性)
(昭和44〜46年) 道南農試 園芸科

・ 目 的
 道のいちご産地の生産力低下の原因を研究し、対策技術を確立してその回復をはかる。このため、ウイルス・フリー処理苗を用い、この感染状況を調査して対策の一助とする。

 1、苗 昭和43年園芸試験場盛岡市場より分譲を受けたウイルス・フリー処理苗を水田跡地で隔離増殖したもの。
 2、栽培環境 道南農試の水田跡地で周辺は水稲、野菜が栽培されている。
 3、試験区別
区 名 品 種 処理期間 ウイルス病検定
放任区 ダナー 45年4月27日〜11月 インジケーター植物
寒冷紗隔離区 幸玉 EMC、UC-1に接木検定
同上、現地苗混植区    
 4、現地苗混植区は木古内町でわい化症状のクギケアブラムシの寄生する株を7×8mの中心に裁植、これよりの伝播を調査

 1、処理後1年目の生育差は殆んど認められない。
 2、 〃 2年目においてもわい化株(草丈20cm以下の株)は認められない。
 3、インジケーターによるウイルス検定では放任区ではダナーで8.3%認められ、2種のインジゲーターに症状を表したものはダナーのみで、その半分であった。幸玉では発病がない。寒冷紗隔離ではいずれも発病しなかった。
 4、現地わい化株よりのウイルス病感染は、ダナーでは15%の高率で且っ近距離(1.8m以下22%)に多く発病が認められる傾向である。
 5、以上から低生産地帯でのウイルス感染は急速に進むと考えられる。
 6、インジゲーターの発病状態(わい化、縮葉、モザイク)と同様症状は栽培いちごに2年経過でも認められなかった。この関係はさらに検討を要する。
 7、ウイルス・フリー処理苗の生産性は、現地苗に比べ非常に高いので、これに更新をはかることが緊急の解決策であるが、その際低生産地帯内でフリー苗の増殖を行なうときは必ず寒冷紗被覆により隔離することが必要である。

・ 主要成果の具体的データ
品種名 区 名 定植後の 1年後の 2年後
のわい
化株率
インジケーターの発病率
草丈 葉数 株当収量 1果重 EMC UC−1


放任区 38.2cm 26.2枚 385.3g 9.2g 0 8.3 4.2
寒冷紗隔離区 38.7 27.8 418.6 9.1 0 0 0
同上現地苗混植区 36.2 24.8 395.6 9.3 0 15 9.5
(現地苗) 14.7 6.5


放任区 34.7 23.9 170.1 7.9 0 0 0
寒冷紗隔離区 35.3 25.8 280.4 8.8 0 0 0
同上現地苗混植区 34.3 25.2 280.1 7.9 0 .35
(現地苗) 13.0 7.0

 現地わい化株からの発病率

わい化株からの距離 EMC. uc-1


1.00〜1.80m 22.2% 10.7%
1.81〜3.10 9.1 9.1
11〜7.00

1.00〜1.80 0
1.81〜3.10 0
3.11〜7.00 5.8

・ 普及指導上の注意事項
 ウイルス・フリー苗の増殖を行なう時は必ず寒冷紗被覆による隔離栽培を行なうこと。