【普及奨励事項】
いちごウイルスフリー処理苗の生産性に関する試験
道南農試　園芸科

・　目　的
　現地における栽培苗とウイルスフリー処理苗の生産性実証

・　試験方法
　1　試験場所　上磯郡木古内町札苅　西山兼松氏ほ場
　2　供試品種　幸玉
　3　試験規模　1区8.1㎡（30株）　3区制
　4　試験区別　｛現地苗　フリー苗｝×｛裸地　マルチ　トンネル｝
　5　供試苗の来歴
　現地苗−木古内町で数年栽培されており同町内では良好な草勢を示す1群であり、町内栽培者に分譲しているもの。
フリー苗−昭和43年秋、園試盛岡市場より分譲をうけ寒冷紗被覆により隔離増殖。
　6　土壌消毒　定植45日前　ドロクロール3ｌ／a全面注入

・　試験成果の概要
　1　当試験は現地苗がウイルスに汚染されている可能性が強いことから、ウイルスフリー処理苗の生産性を検討した。
　2　品種は現地栽培種がほとんど幸玉のため、フリー苗も幸玉を用いた。
　3　生育環境を裸地（慣行）、ポリマルチ、トンネルの3要因を設け生育および収量反応を検討した。
　4　草勢は各環境ともフリー苗が旺盛であり3カ年とも同様であった。
　5　収量は各環境とも159％〜295％の範囲でフリー苗が高収を示した。
　6　現地苗は矮化状態であり、甚しい株は2年目において?死し、27％の欠株率がみられたがフリー苗に欠株はみられなかった。
　7　近年の収量水準からみて、ウイルスフリー苗の生産力が極めて高いので早急に更新すべきである。
　8　昨今の栽培ほ場の現況や、現地の要講から、1年株の試験結果であったが、ウイルスフリー処理苗の有利性が認められたので、45年度緊急成績として採苗体系の確立と早期更新について発表し、指導参考事項に決定した。当成績はその3年株まで検討したものである。

・　主要成果の具体的データ
　○生育比率（収穫始における現地苗対比％）
環境/年度 裸　地 マルチ トンネル
44 45 46 44 45 46 44 45 46
最大葉における葉柄長 148 189 208 146 163 155 141 139 141
　　〃　　葉長×葉長 186 171 179 216 172 160 163 140 140
1株当り葉数 148 192 157 132 152 149 124 131 129
　〃　　花　房　数 154 269 141 128 153 136 149 137 134
　　　　〃ランナー数（第1次） − 248 235 − 247 173 − 201 185
　　※　46年度は裸地栽培とした

　○欠株率（完全枯死株％）
環境/年度/苗 裸　地 マルチ トンネル
44 45 46 44 45 46 44 45 46
現地苗 0 27 30 0 10 12 0 19 27
ウイルスフリー処理苗 0 0 0 0 0 0 0 0 0

　○収量および年別比率
環境 苗 前期（6月末まで） 全　期
3カ年合計 年度別比率（％） 3カ年合計 年度別比率（％）
収量（ｋｇ／a） 比率（％） 44 45 46 収量（ｋｇ／a） 比率（％） 44 45 46
裸地 フリー苗 222.8 230 191 147 255 490.1 258 245 289 248
現地苗 970 100 100 100 100 190.3 100 100 100 100
マルチ フリー苗 278.2 181 167 125 208 534.7 186 196 159 202
現地苗 153.4 100 100 100 100 286.8 100 100 100 100
トンネル フリー苗 315.2 268 210 269 300 496.7 271 251 295 276
現地苗 117.7 100 100 100 100 183.0 100 100 100 100

・　普及指導上の注意事項
　短期全面更新をはかり汚染株を一掃するとともに各種病害虫予防、防除の完全実践。