【指導参考事項】
大型ビニ−ルハウスにおける換気扇の利用に関する試験成績
昭和46〜47年
北農試作物第2部園芸作物第2研究室  小餅 昭二・田中 征勝
北海道立道南農業試験場 園芸科    高橋 統夫・沢田 一夫

・ 目 的
 ビニ−ルハウスにおける換気扇の適正利用法について検討する。

・ 試験方法
 供試ハウスおよび換気扇は次表のとおりで、ハウス内の温度、月速分布を調査するとともに、ダクト使用の効果について検討した。ダクトは育苗ハウスで折径1m、栽培ハウスでは折径2.1mのポリ製のものを用いた。
ハウス略称 北農試育苗 北農試栽培 道南農試栽培 現地栽培
設置場所 北農試 北農試 道南農試 大野町斉藤宅
ハウスの型 耐雪円型パイプ HM-A MTハウス エコ−ダイヤハウス
ハウスの面積(m2) 135.0 413.0 330.0 760.0
換気扇の型 HV-800M(シズオカ) HV-800M(シズオカ) KG80HT(三菱) GN600(日立)
換気扇の風量m3/min 300 300 320 315
換気扇の使用台数 1 2 2 2
栽培作物 トマト、キュウリ苗 トマト、キュウリ 裸  地 キュウリ


・ 試験成績の概要
 1. 吸気口面積が大きいほど吸気口における風量を増加し、換気能力は増加した。
 2. 吸気口から直接吸気では、ハウス内に10℃以上の温度較差を生じ、吸気口附近では戸外温度に近く、排気口側で高かった。
 3. ダクト使用によりハウス内の温度較差は直接吸気のときの1/2程度に減少した。また風速分布も直接吸気に比しかなり改善され均一度が高まった。
 4. ダクト使用では、同一吸気口面積でも直接吸気より風量は減少し、さらに吸気口面積が制限されるので、直接吸気に比し換気能力は低下する。
 5. 吸気口における実測風量は、矢吹の式より求めた必要換気量の40〜60%であり毎分300m3程度の換気能力をもつ換気扇2台を設置した時の適正ハウス面積は300m2と推定された。
 6. 上記の規準において、戸外温度23℃まではダクト使用が可能であり、それ以上の高温度時には吸気口を拡げ、直接吸気とする必要がある。
 7.  吸気口、排気口の取付け位置によるハウス内温度分布の差は大きなものでなかった。

・ 主要成果の具体的デ−タ−
 測定時期と全短波放射ならびに純放射
使用ハウス ハウス面積(m2) 年 月 日 時 刻 全短波放射
(Kcal/m2 min)
純放射
(全短波×0.8)
ダクトの有無
北農試育苗 135.0 46.4.21 13.00〜14.40 5.6 4.5
北農試栽培 413.0 47.6.6 13.30〜14.30 9.7 7.8
〃  〃 14.33〜15.25 7.7 6.2
現地栽培 760.0 46.11.13 13.00〜 6.0* 4.8
道南栽培 330.0 47.4.11 12.00 〜 12.2* 9.7
〃  〃 330.0 47.7.4 13.00〜 12.4* 9.9
〃  〃 330.0 47.11.13 12.30〜 5.2* 4.1
  注) *札幌市羊ヶ丘における測定値  **下表 換気口風量 他は吸気口風量  ハウス内温度差および実測換気量と矢吹式による必要換気量の比較

使用ハウス 戸外気温
ハウス内気温 実測換気量
(m3/min)
矢吹式による必要換気量
(m3/min)
上限
下限
測点平均
内外温度差
④−①
北農試育苗 20.7 33.5 29.2 31.1 10.4 41 101
北農試栽培 25.8 38.7 32.0 35.1 10.3 296 543
〃  〃 25.9 38.8 23.8 31.6 5.7 431 823
現地栽培 12.0 22.5 15.8 19.8 7.8 439** 812
道南栽培 10.9 24.1 13.9 20.6 9.7 503** 917
〃  〃 24.4 39.5 21.0 35.9 11.5 430 789
〃  〃 10.9 20.4 11.6 16.1 5.2 443 723

・ 普及指導上の注意事項
 強風時に吸気口部から冷風が入るので換気扇連動のシャッタ−の取付けが望ましい。