【指導参考事項】
カドミウム汚染土壌対策試験
1、現地水田土地改良試験
(昭和46〜47年)  道立中央農試 化学部

・ 目 的
 鉱山排水の影響による汚染水田について、土地改良による除染効果と、土壌改良資材によるカドミウム吸収抑制の可能性を検討する。

・ 試験方法
 1、 試験地および試験処理区別・試験区面積(㎡)
試験地 試験地土壌型 試 験 区 備 考
原土 客土20cm ※客土10cm 反転客土 排土客土
東幌似 黄褐色土壌、粘土型 267 345 337 1253 133 各処理
区に資
材多様
区をおく
小沢7区 礫層土壌、斑鉄盤層型 367 375 415
セトセ 同 上 300 228 1089
西幌似 グライ土壌、粘土構造型 800 400
仁 木 礫質土壌、壌土マンガン型 190 360
  土壌改良法(46年5月上旬施工)
  反転客土:東幌似:表層30cm剥取り、下層30cm堀上げて逆転埋戻し
         セトセ :同上各25cm、客土20cm追加
  排土客土:表層20cm排土搬出、20cm客土
  客土改良資材:P2O5 40kg(ようりん)アルカリ分45kg/10a(珪カル)
  資材増量処理:P2O5 54kg/10a(重焼りん)アルカリ分45kg/10a(珪カル)
  ※47年は客と10cm区を2分し、普通耕(12.5cm)区および改善耕(10cm)区とする。
 2、 試験区設計 1区制、ただし原土区のみは土壌の重金属濃度分布水口からの距離による水温影響を考慮して別に対照区をおく。

・ 試験成果の概要
 1、試験地とも作土のCd含量は原土に比し著しく低下した。
 2、このため玄米のCd含量は10cm客土の2年目を除き0.1ppm前後で両年とも差がなく、除染効果が著しかった。
 3、10cm客土区は47年度は若干高まり0.2ppm前後になったが、耕深の差による濃度の違いは僅かで、根は旧表土に達しているので、むしろ46年度は工事直後のため根の伸長不良なために0.1ppm前後にとどまったものと考えられ、カドミウム対策としては、当面10cm以上の客土が必要である。
 4、しかし、客土区の作土Cd含量が若干増加し、この原因として汚染表土の流入や用水講底質土壌の混入が考えられるので、その効果持続性についてはなお今後検討する必要がある。
 5、玄米中のCd含量に及ぼす資材の効果は1部の試験区で僅かにみられたが、殆んど差はなく、全試験区を通じてその効果は期待できない。
 6、土地改良による水稲の生育収量は、工事直後の一部試験地を除いて原土区と大差ない。しかし小沢7区、セトセ、仁木試験地では原土の生育障害が回避されて増収し、慣行施肥量では過繁茂に陥入ることもあった。

・ 主要成果の具体的データ
 1、玄米および作土中のCd濃度ppm(資材多用区は省略)

処理区 玄   米 作   土
東幌似 小沢 セトセ 西幌似 仁木 東幌似 小沢 セトセ 西幌似 仁木



原土 0.41 0.54 0.43 0.46 0.44 2.8 4.46 2.82 1.02 2.22
客土10cm 0.14 0.05 0.16 0.34
 〃 20cm 0.1 0.06 0.13 0.11 0.1 0.27 0.19 0.17 0.1 0.37
反転客土 0.1 0.11 0.3 0.19
排土客土 0.13 0.09
対照田 0.61 0.5 0.41 0.72 4.57 3.82 2.79 1.94



原土 0.69 0.79 0.72 0.21 0.22 2.86 4.46 2.98 1.31 1.71
客土普通耕 0.25 0.19 0.32 0.53
10cm改善耕 0.22 0.16 0.41 0.42
客土20cm 0.14 0.06 0.07 0.09 0.14 0.16 0.32 0.21 0.32 0.44
反転客土 0.11 0.09 0.28 0.21
排土客土 0.13 0.33
対照田 0.64   0.54 2.91

 2、資材多用によるCd吸収抑制の可能性
  46(47)年の玄米Cd濃度の大小の試験区数 46(47)年の平均Cd濃度
無施用区>資材区 無施用区≦資材区 無施用区 資材区
東幌似 3 (3) 2 (3) 0.18 (0.17) 0.16 (0.17)
小沢 0 (2) 3 (2) 0.22 (0.30) 0.28 (0.29)
セトセ 2 (1) 2 (1) 0.22 (0.29) 0.21 (0.28)
西幌似 1 (1) 1 (1) 0.29 (0.15) 0.26 (0.17)
仁木 0 (1) 2 (1) 0.27 (0.18) 0.36 (0.24)

 3、玄米収量に及ぼす客土の効果
  46年 47年
原土区 20cm客土区 原土区 20cm客土区
東幌似 425.2 420.3 494.7 533.1
小 沢 428.0 299.3 429 523.2
セトセ (190.5) (115.8) (402) (316.4)
西幌似 467.7 486.4 502.2 503.2
仁 木 421.8 526.2 413.1 442.3
平 均 435.6 433.1 459.8 498
( )内は
水口影響および施肥不均一により
平均から除外

・ 指導上の注意事項
 1、客土を行う場合は、埋没すべき汚染とを充分に転圧すること。
 2、客土直後に耕起する場合に、耕起整地が困難となって苗の活着や初期成育を抑制することがある。   
 3、土壌の重金属含量によっては、客土により慣行施肥では過繁茂になることがあるので注意を要する。
 4、持続性については水質ならびに玄米許容限界等を考慮して見守る必要がある。
 5、多量の客土により生産力の低下が考えられるため、土壌改良資材施用等の対策を考慮する必要がある。