【指導参考事項】
カドミウム汚染土壌対策試験
2、品種別落水時期試験
(昭和46〜47年)  道立中央農試 化学部

・ 目 的
 汚染水田において、落水時期の早番が水稲のカドミウム吸収に及ぼす影響を明らかにする。

・ 試験方法
 1、 試験地および試験処理
年次 試験地および土壌型 供試品種 落水期(月日)
46年 東幌似(黄褐色土壌、粘土型) シオカリ、ほうりゅう、ユーカラ 8.12 8.22 9.1
47年 ゆうなみ、そらち、マツマエ 8.14 8.21 8.28
47年 小沢7区(グライ土壌、粘土マンガン型) ゆうなみ、そらち、マツマエ
 2、 試験区の構成1区制 落水処理は各1筆(3.0〜3.5a)をあて、その中に3品種を栽培した。
 3、 出穂期とそれからの落水期までの日数
項目/
年次
出穂期 落水処理の出穂期からの日数
A
シオカリ
(ゆうなみ)
B
ほうりゅう
(そらち)
C
ユウーカラ
(マツマエ)
早期落水 中期落水 後期落水
A B C A B C A B C
46年 8.5 8.6 8.9 7日 6日 3日 17日 16日 13日 27日 26日 23日
47年 8.2 8.4 8.9 12 10 5 19 17 12 26 24 19


試験成果の概要
 1、46年度は落水による玄米中のcd濃度の変異が大で、落水が早いほど濃度は著しく高かった。
   47年度は前年に比して処理間差は小さいが、同様に落水の早いほど濃度が高かった。
 2、これらの処理間差は、落水後のEh上昇の程度と、各品種の出穂後日数との関連性が強くみられ、湿土における0.1N-Hcl可容cd量はEhの上昇と共に増大した。
 3、品種、土壌透水性や降雨(田面乾燥状況)によって異なるが、出穂後10日ぐらいの落水では玄米中のcd濃度を著しく高め、20日後では濃度差は僅かである場合が多い。
 4、玄米収量は47年グライ土壌の場合を除いて一定の傾向が明らかでなかったが、早期や後期落水では不稔、病害、収穫時の田面乾燥に問題がある場合もあり、cd吸収の面からも出穂後20日ぐらいは田面水の残存が必要である。グライ土壌での収量差は他の要因(重金属濃度、水温)による面が大である。

・成果の具体的データ
 1、玄米中cd濃度
試験地 処理 玄米cdppm 跡地
cd
玄米収量kg 備  考
A B C A B C
46東幌似 1.1 1.21 1.34 2.72 333 351 267 46年
A:シオカリ
B:ほうりゅう
C:ユーカラ

47年
A:ゆうなみ
B:そらち
C:マツマエ

*水口影響あり
0.76 0.41 0.55 2.93 303 398 414
0.46 0.26 0.45 2.9 317 398 281
47東幌似 0.8 1.05 0.8 2.64 581 510 580
0.68 0.96 0.74 2.86 478 529 442
0.44 0.68 0.45 2.77 603 477 551
47小沢 0.45 0.55 0.49 2.3 447 489 647
0.34 0.47 0.31 2.52 372 408 558
0.34 0.34 0.3 2.66 199* 289* 442*


 2、落水に伴うEhの推移と生土のcd可溶量(ppm/乾土100g)昭47

・ 指導上の注意事項
 1、バインダー利用のために落水期が早まる傾向にあるので、適期落水を守らせ、登熟前半の過乾を極力避けるよう指導すべきである。
 2、品種ごとに、その登熟過程に見合った落水を指導し、一律同時落水をさける。
 3、「そらち」は細密調査でも一般に含量が高いので、栽培を避ける。