【指導参考事項】
1 課題の分類
2 課題名  ハウストマトの環境要因と施肥基準設定試験成績
3 期 間  昭和45〜47年
4 担 当  道南農試
5 予算区分
6 協力分担  なし

7 目 的
 道南におけるハウス栽培は急速に増加傾向にあり、その主作型は促成トマト抑制キュウリの2毛作が主体となっているが特にトマト栽培における生育環境制御および施肥の合理化をはかる。

8 試験方法
 1) 試験地  亀田郡大野町道南農試圃場
 2) 試験条件  ビニールハウス(160c㎡)3練使用−(かん水量別)
 3) 試験区
       A多量かん水 (PF1.8〜2.0)     1 無加温       X 多肥  3反覆1区2.7㎡(26株)
        B中量 〃  (〃2.0〜2.2)> < 2 18℃加温 >< Y 中肥
        C少量 〃  (〃2.2〜2.7)     3 23℃〃      Z 少肥
       注 中肥はN−4P2O5〜3 K2O−4kg/a (硫安過石硫加)施肥法はP2O5
       は全量N K2Oは1/2全戸施用残りの1/2は2回に実施
       4栽培法 品種 米寿 栽培密度−75cm×2.00mハウス直列44段摘芯(500株1a)
S42年 播種 定植 分施1 分施2 収穫期間
45 2.13 4.13・14 5.22 6.10 6.15・7.21
46 2.1 3.30・31 5.1 5.21 5.28・7.20
47 2.1 3.30 4.28 5.16 5.29・7.20


9 成果の概要
 (1) 初年目の収量は中量かん水の多肥が最多(100kg/a)であったが4段花房での収穫果(1ケ程度)が少なく、この原因の1つとして葉部N含有率(2.5%)の低下が認められN不足(3.0〜3.5%)と推定され、4段収穫においては、N−6kg/aでは、なお、供給の必要性が認められた。
 (2) 2年目になると生育収量に対する施肥量の影響は判然となくなった。
 (3) 3年目になると、初期成育において、多肥区で濃度障害と認められる生育抑制が出現した。又、多量かん水で不良果の発生が多く認められた(特に高地温区)少量かん水は3年間を通じ常に低収であった。
 (4) 以上より中量かん水(PF2.0〜2.2)で、地温は18℃程度とし、施肥量については、Nで初年目6kg/a+α、2年目4kg、3年目以降は前年の吸収量を基礎に施用すべ きである。K2Oについては常に4kgで十分と考えられる。
 (5) P2O5 については、土壌中の有効P2O5量により決定する(30mg/soil100g)
 (6) CaOについては、当初、pHに対応して投与し、MgOについてはCaOとの比率を考慮する。

・ 試験成果の具体的データー
 第1表 生育と収量
要 因 初期成育130日間
草丈伸長量
1株主生草重
(収穫冬)
総収量(a当り) くず果個数割合
45
(cm)
46 47 45
(g)
46 47 45
(kg)
46 47 (%)    


A 500 47 61.9 660 345 435 777 749 1,089 9.50 57 23
B 495 40.7 55.5 871 307 369 850 665 1,036 9.6 2.8 1.9
C 42.7 46.7 56 800 251 370 719 551 919 14.8 0.8 5.4


X 483 44.1 56.2 864 289 412 879 659 1,048 9.1 3.5 4.9
Y 47.6 45.2 57.9 784 311 393 820 668 1,009 11.6 3.2 3.2
Z 46.3 452 59.3 680 303 373 647 638 987 12.3 2.6 1.4

3 49.6 49.8 59.4 242 357 411 769 675 1,035 9.7 3.9 4.5
2 47.3 46 57.9 738 301 391 796 690 1,014 9.8 3 3.3
1 453 38.8 56.1 751 245 375 781 640 995 14.5 2.5 1.9

 第2表 収穫終了時における吸収割合(N=100)
要 因 P2O5 K2O CaO MgO
45 46 47 45 46 47 45 46 47 45 46 47


A 30 26 27 230 174 166 96 60 74 15 15 18
B 32 26 28 262 286 166 101 70 68 17 17 18
C 29 48 28 258 185 165 93 60 72 16 16 22


X 30 34 28 237 167 155 90 75 63 14 13 17
Y 30 33 26 248 182 158 94 60 67 15 16 18
Z 30 34 29 264 195 124 106 76 84 19 19 22

3 29 35 28 249 282 171 94 70 74 16 16 20
2 30 33 27 254 180 162 99 65 70 16 16 19
1 31 33 28 246 182 164 97 63 70 16 17 19

 第3表 跡地土壌のEC(1:5)とpH(H2O)の経年変化


X多肥 Y中肥 Z少肥
A B C A B C A B C
EC5
/cm
45 0.4 0.4 0.4 0.2 0.3 0.4 0.2 0.2 0.2
46 1.1 1.1 1.2 1 1 1.2 0.2 0.3 0.6
47 1.5 1.7 2.2 0.7 0.9 1.8 0.1 0.5 1.1
DH 45 4.9 4.8 4.9 4.8 4.8 4.8 5.1 5 5
46 4 4.1 4 4.4 4 3.9 5.1 4.8 4.5
47 3.9 3.8 3.6 3.8 3.7 3.6 4.5 3.9 3.7

・ 普及指導上の注意事項
 1、初年目の+αkg/aについては原則的に追肥とし3段花房の球肥大期の栄益が無に応じて施用する。
 2、適正かん水を行ない(テンションブーターの使用が望ましい)低温時では多温についても注意すべきである。
 3、かん水は好天時に行ない多温の防止につとめる。