【指導参考事項】
草地の更新基準設定試験
 (1)火山灰草地
(昭45〜47年)  根釧農試 土壌肥料科

・ 目 的
 根釧地方の火山灰草地を対象に、経年化に伴う生産力低下の原因を植生ならびに土壌の理化学性面より解折し、草地の更新基準を設定するための資料を得ようとする。

・ 試験方法
 1、現地試験:根室管内5地区において、経過年数、生産量の異る草地44ヶ所に、三要素および用量試験計9処理区を設け、牧草収量、草種構成、土壌の理化学性などの相互関連について調査した。
 2、荒廃草地実態調査:根釧管内5ヶ所の荒廃草地について構成草種の冠部被度、単位面積あたり個体数および各地点の土壌理化学性を対照地点と比較検討した。

・ 成果の概要
 供試全試験地について、造成後の経過年次および収量段階別に区分し検討した結果
 1、供試草地の経過年数は2〜17年までに分布し、Ti基幹草地(27)では4〜5年目をピークに年次の経過に伴い、その収量は減退し7年目を境に以後急激な減少が認められた。
 2、7年目草地まではN、Kおよび三要素の増施で有意に増収したが、8年目以降の草地ではK増施による有意な増収は得られなかった。 
 3、また8年目以降の草地では三要素倍量仕様でも4〜5年目三要素区収量に及ばなかった。
 4、Or基幹草地では2〜3年目で最高収量を示し以後漸減するがTi基幹草地ほど著しくはなかった。
 5、牧草収量と土壌理化学性各項目との関連では、NO3-NとpHでは明らかな相関を示したほか、N/5Hcl可溶P2O5置換性塩基類、土壌重量との関連が大で、一方、T-Nでは低収段階のもの程高い傾向を示した。
 6、草地の経過年次と共に雑草率、雑草収量ともに増加し8年目以降草地では特に顕著であった。
 7、しかし、個々についてみると上述条件が必ずしも適合しない草地もあった。

・ 主要成果の具体的データ
 表・1 草地の経過年数別収量指数 *(Ti基幹草地年間収量kg/10a)
区/
-F -N -P -K 3F 2N 2P 2K 2・3F
2〜3 44 70 68 71 84 105 92 90 120
4〜5 68 81 99 86 100 116 94 111 126
6〜7 64 75 91 77 95 111 93 105 116
8〜10 33 52 59 55 69 87 75 76 94
11〜13 28 53 50 48 69 92 77 77 104
14〜 34 47 59 52 69 82 73 73 91
  (*指数:4〜5年次の3F区(933kg/10a)を100とする。)

 表・2 収量階屈別土壌の理化学性 (Ti基幹草地)
分析項目/
収量区分(kg/10a)
土壌の化学性(mg/100g) 土壌の理化学性
PH
(H2O)
T-N
(%)
NO3-N N/5Hcl
可溶P2O5
置換性塩基 固相重g/
100cc
pF1.5における
K2O CaO 固相 液相 気相
1000以上 6.06 0.41 8.50 20.9 16.8 137 78.7 33.8 59.6 6.6
800〜1000 5.98 0.42 4.40 13.6 10.7 102 74.2 32.0 58.5 9.5
700〜800 5.93 0.45 3.54 12.0 10.9 123 72.7 31.8 60.1 8.1
600〜700 5.92 0.48 2.77 9.6 9.3 92 76.9 33.2 57.4 9.4
400〜600 5.74 0.49 2.31 10.3 11.6 65 68.0 30.0 60.0 10.0
400 以下 5.69 0.55 2.18 9.5 12.3 76 66.7 29.9 59.2 10.9
  (* 供試土壌屈厚 0〜10cm)

 表・3 草地の経過年次別雑草率(Ti基幹草地年間)
区/
年次
-F -N -P -K 3F 2N 2P 2K 2・3F 平均
2〜3 4.4 1.5 3.1 2.9 1.9 2.2 2.0 2.0 0.9 2.3
4〜5 3.3 4.3 2.4 1.5 1.9 2.0 3.8 8.0 0.4 3.1
6〜7 2.0 2.3 1.4 2.3 1.7 1.4 2.0 4.3 1.1 2.1
8〜10 19.1 11.8 13.4 15.9 10.7 9.2 7.9 10.1 8.7 11.9
11〜13 18.7 10.4 13.5 11.1 8.3 5.4 9.1 8.5 6.5 10.6
14〜 16.4 12.0 11.9 16.4 12.0 9.7 11.1 12.5 8.3 12.2