【指導参考事項】
重粘畑土壌における排水法の改善に関する試験
 B 土壌型別排水工法に関する実態調査と排水効果の解析
(昭和45〜47年) 道立中央農試土壌改良科

・ 目 的
 重粘畑土壌の型別に従来の暗渠による耕地内地下排水の実態を明らかにし、これと土壌の物理的諸要因との関連から土地改良の実施要領について検討する。

・ 試験方法
 土壌型: 凝似グライ土   滝川市東滝川  江部乙町   本別町仙美里 
                   訓子府町弥生  (紋別市小向)
        停滞水グライ土 羽幌町築別    羽幌町潮見
        褐色森林土   苫前町旭      羽幌町出雲
        褐色低地土   三笠市岡山     砂川市
 調査項目:土壌の一般化学性。物理性。土質工学、粘土鉱物組成
        浸透能、水分系、凝集力


・ 試験成果の概要
 土壌型別排水法に関する実態調査をして、排水効果の解析、土壌型特性区分をして結果を要約すると凡素そ、次のとおりである。
 1、おおむね台地における重粘畑土壌は下層土が極めて堅密で、その硬度(山中式)は25〜30にも及び、固相率が大きく、容積重が130g/100cc以上である。さらに土性が強粘質であり、通気性悪く、飽和透水係数K2O=1×10−6cm/sec以下である。
 2、重粘畑土壌は強酸性であり、且つ土層の塩基状態が乏しい。
 3、土質試験から ア、塑性指数、収縮率が低く、生土と風乾土の差が少ない仙美里、訓子府土壌 イ、塑性指数、収縮率が低く、生土と風乾土の差があまり大きくない滝川、築別、潮見(ⅡCg)土壌 ウ、同様に差が大きい旭、出雲土壌 エ、塑性指数、収縮率が中庸で差の少ない三笠土壌の4土壌型に区分される。
 4、浸透能調査からn値の関係が滝川、仙美里<築別<訓子府<三笠、旭、出雲土壌の順であった。
 5、粘土の鉱物組成はア(小向)潮見土壌はモンモリロナイトが顕著である。イ築別、滝川、江部乙土壌はバ−ミキユライトが強く、強く、モンモリロナイトが弱く検出された。 ウ、訓子府、仙美里土壌がメタ・ハロイサイトが優勢である。
 エ、旭、出雲土壌はバーミキユライト、カオリナイトが優勢である。 オ、三笠土壌は多くの粘土鉱物が多量に検出された。
 6、凝集力の大きい順に小向、潮見、築別>滝川、江部乙>旭>三笠、砂川>仙美里、訓子府土壌である。
 以上のことから土地改良効果(心破)の顕著な小向土壌はモンモリロナイトが多く、 凝集力(含水比10%における固結度10kg/c㎡以上)が高い。これに潮見、築別土壌が類似する。一方土地改良効果(心破)の現われにくい訓子府、仙美里土壌は粘土含量が少なく、メタ・ハロイサイトが優勢で凝集力(含水比10%における固結度5kg/c㎡以下)が低い。滝川、江部乙、旭他の土壌等土地改良効果(心破)の面からは中間的である。
また、土地改良事業計画にあたって、粘土鉱物組成、凝集力、収縮率の実験結果が指標になると推察される。

・ 主要成果の具体的データ
 図1 土壌の収縮率


 図2 固結度曲線


 図3 侵入度曲線


 表1 粘土鉱物組成
  層位 2:1型 1:1型 Gh Gt Ch Qz Fd
Mt Vt It Ch H・H M・H Kt
擬 似
グライ土
滝川 C1g            
江部乙 C2g            
Cag          
訓子府 C (+)*2              
ⅡC2g (+)            
仙美里 Cg (+)        
(小向)* Cg              
停滞水
グライ土
築 別 C1g             
潮 見 Cg              
ⅡCg           ±  
褐 色
森林土
C1            
出 雲 C12g        
C2            
褐 色
低地土
三 笠 A・C        
略号 H・H:Hydra ted balloysite、
    M・H:Me tahalloysite、
    Kt:Kaolinite、 Mt:Montmorillonite、
    Vt:Vermiculite、 Lt:Illite、
    Ch:Chlorite、 Gt:Goethite、
    Gh:Gibhsite、 Ch:Cristobalite、
    Qz:Quartz、 Fd:Feldspars
1(小向)の粘土鉱物は重粘地グル−プ、
1967:北海道北部の土壌、北海道開発局から
引用。
2Mtの(+)は回折線4.48に主たるピ−ク
が現れたものを明記した。

・ 普及指導上の注意事項
 ○ 土地改良なかでも排水に当っては、明渠、暗渠を先に実施して圃場の水分状態をできる。又、少なくしてから心土破粋等の施行が望ましい。ただし、草地においては収量の面からみて今後の検討必要である。
 ○ 凝集力B型土(仙美里、訓子府)では心破粋の潰れ防止の上からモミガラ心破等の施工がこれからの問題であると考えられた。