【指導参考事項】
地力増進を基盤とする畑作物の高度多収技術確立試験
Ⅳ、不良環境条件下の有機物すきこみ効果
(昭44〜47) 道立中央農試畑作部

・ 目 的
 不慮環境(乾燥、低温)条件における有機物が作物の生育収量に及ぼす影響を実験施設を用いて検討し、対応技術確立のための基盤資料とする。

・ 試験方法
 A、土壌水分とも関係
  1、移動式トンネルを使用し、自然降雨を遮断し、テンションメーターで、目的水分になるように人工灌水した。
  2、供試材料
     小豆:寿小豆(45、47年)、馬鈴薯:農林1号(46年)
  3、初期、開花登熟期に乾燥条件を設け、とうもろこし茎葉すきこみの効果を全期灌水処理と比較した。
  4、栽培密度(疎植・中植・密植)・施肥法(標肥・多肥・追肥)・耕起法(心土耕・普通耕)について上記の効果を比較した。

・ 試験結果の概要
 A、土壌水分との関係
  1、小豆については、乾燥条件によって生育は抑制され、草丈、葉面積の減少が著しく、この傾向は、生育初期〜伸長期処理で基だしく、開花期処理では、その程度が少いが莢数、粒数の低下に強く影響した。
  2、とうもろこし稈700kgすきこみの影響をみると、各種土壌水分において標準N漁では減収し、多N条件では草体、莢数の増加により増収し、これらの影響の程度は乾燥条件で、より大きい傾向がみられた。
  3、全生育期間かん水(PF2.0〜2.5)条件では、有機物施用、密植により葉面積、着の増大を通じ多収を得た。心土耕施用の効果は明らかでなかった。
  4、馬鈴薯について、生育初期の乾燥処理(29/6〜10/7)は処理期間が短かく、影響が小さかったが、開花期処理(12/7〜12/8)は下広にまで強度の乾燥のため、いも数の確保ならびに肥大が充分でなく、減収した。全期灌水は初期より生育量が増大するが、下広の土壌水分が、むしろ過湿となり、やや徒長気味にすぎ、塩茎の肥大には結びつかなかった。しかし、かかる条件でも前半を標肥とし、着蕃期に追肥した区は前半における過繁茂もなく増収効果が高かった。
  5、とうもろこし茎葉すきこみ効果は、馬鈴薯について、初期乾燥条件でみられ、草丈、葉数の増加は多肥植条件で著しく増収となった。でん粉化は初期乾燥区がもっとも優り、灌水区でやや低下傾向があり、全般に有機物すき込み、多肥で低く、密植で増加した。

・ 試験成果の具体的データ
 A、土壌水分との関係
  1) 小豆
年 度 項   目/
処理区別
生育調査※ 収穫期調査※※
草丈cm LAI 総重g/㎡ 草丈cm 総重g/㎡ 子実重g/㎡


45

初期
乾燥
無処理 中植標肥 25 1.8 118 33 366 168
有機物 密植多肥 24 2.0 166 31 336 197
開花
登熟
期乾燥
〃 中、標 31 2.4 163 35 396 192
〃 密、多 34 3.4 240 40 437 223
全生
育期
かん水
無処理 中、標 32 2.3 163 43 436 222
有機物 中、標 29 1.6 146 40 438 219
〃  密、多 41 4.0 286 45 569 284
〃 密、多(追) 40 4.0 243 46 515 252


47



A
初期開
花期乾燥
無処理 32 1.8 151 34 402 255
有機物 34 1.8 156 34 418 263


B
全生
育期
かん水
無善 中、標 42 2.8 202 56 529 319
〃心 密、多N 46 3.6 226 60 706 357
有、善 〃 45 3.3 227 62 722 358
〃 心 〃 46 3.3 235 59 748 355
  注:※45年は8月8日、47年は8月10日   ※※45年は9月21日、47年は9月14日

 2) 馬鈴薯
年度 項   目/
処理区別
生育調査(7月9日) 収穫期調査(9月20日)
草丈cm 茎数本/㎡ 複葉数枚/㎡ いも重t/10a いも数コ/㎡ でん粉価%


46

初 期
乾 燥
無機物 中、標 42 11 71 3.25 31.6 15.3
有機物 密、多 51 15 99 3.82 36.9 14.8
開 花
期乾燥
〃 中、標 48 11 74 3.02 28.6 15
〃 密、多 47 14 93 3.60 36.3 14.9
全生
育期
かん水
〃 中、標 47 10 75 3.29 32.3 14.8
〃 密、多 44 17 108 3.49 37.8 14.7
〃 密、多(追) 44 10 80 3.81 39.6 14.9