【指導参考事項】
5、ばれいしょの倒状防止に関する試験(総合助成)
(細菌性病害防除による倒状防止)
ばれいしょ黒脚病の耕種的防除除法確立に関する試験
(昭和45年〜47年)  道立根釧農業試験場

・ 目 的
 近年道東各地で急増している細菌病について、その病名を明らかにすると共に同病害の生態を究明し、効果的防除法確立のための資とする。

・ 方 法
 1、本病多発ほ場、未発病ほ場に、多発ほ場産塊茎・健全塊茎および接種塊茎を栽培して比較検討し、本病の伝染方法を究明した。
 2、現地調査およびほ場試験により、本病の多発生要因を検討した。
 3、接種塊茎を用いて数種の薬剤による切断刀消毒試験を実施した。
 4、常法により病原細菌を分離し、その細菌学的性質を検討した。

・ 成果の概要
 1、本病は種子塊茎および切断刀によって伝染し、土壌伝染は防除対策上の問題にはならないことを明らかにした。
 2、本病の発生多寡は、種子塊茎の貯蔵の良否により大きく左右されることを明らかにした。
 3、昇汞500培液で5秒間の切断刀消毒は、本病の発病増大防止に有効であることを明らかにした。
 4、本病は道東の5支庁管内の20数市町に発生を確認した。
 5、本病病原菌は、2〜3の細菌学的性質、伝染性および血清学的性質で軟腐病細菌と区別されることを明らかにし、Erwinia atroseptica(vam Hall)Jennison(E.carotovora var.atroseptica)と同定した。病名は、ばれいしょ黒脚病(KOKKYAKU-byo.Potatoblackleg)を採用した。
 6、以上のことから、本病の防除対策として次ぎのことが考えられる。
 1) 健全種子塊茎の生産と利用。
  i)無発病ほ場産の種子を用いること
  ii)原採種体系の強化
    要点:一般栽培とは明確に区分し、接触をさける。
  iii)一般ほ場における抜き取りの徹底
    要点:抜き取りは遅くとも8月上旬までに実施し、ほ場に病塊茎を残さないこと。
 2) 種子塊茎貯蔵の適正化
    要点:土中埋没貯蔵の場合は、春季融雪水の流れ道、水はけの良否を考えて実施すること。
 3) 切断刀の消毒を励行すること
    要点:昇汞500培液5秒間浸漬

・ 主要成果の具体的データ
 表1 多発ほ場における発病
供試塊茎 病株率(%)
1968 1967
多発ほ産農林1号 6.2 12.8
原種     〃   0.6 0
 〃    紅丸 0 0
  〃    エニワ 0.2 0
原々種 農林1号 0 0
 〃    紅丸 0.2 0
  〃    エニワ 0 0

 表2 未発病ほ場における発病
供試塊茎 病株率(%)
1968 1969
多発ほ産農林1号 10.0 86.7
原種    〃 1.0 0
 〃   紅丸 0
 〃   エニワ 0
原々種農林1号 0

 表3 多発ほでの健全塊茎の栽培
試験区 病株率(%)
1970 1971 1972
1 12.4 0 −(0)
2 2.5 0 −(0)
3 14.2 0 −(0)
4 10.0 0 −(0)
5 11.7 0 −(0)
6 8.3 0 −(0)
7 76.0 0

 表4 切断刀伝染に関する試験結果
   本病分離菌 軟腐病菌 cont
P-1 P-3 P-14 CKS16 RKS23 SR1
播種
塊茎
P
S
BL
24 24 24 24 24 24 24
17 21 13 19 21 22 24
0 8 2 0 0 0 0










P
S
BL
24 24 24 24 24 24 24
23 24 22 24 24 24 24
4 2 4 0 0 0 0


P
S
BL
24 24 24 24 24 24 24
24 24 24 24 24 24 24
1 2 1 0 0 0 0


P
S
BL
24 24 24 24 24 24 24
24 23 24 24 24 24 24
2 0 2 0 0 0 0


P
S
BL
24 24 24 24 24 24 24
23 23 24 24 24 24 24
5 3 1 0 0 0 0
  注)P=植付数、S=萌芽数、Bl=病株数

 表5 貯蔵法の差による発病の比較
貯蔵法
P BL P BL P BL
土中埋没 34.0% 24.9% 32.0% 43.7% 42.0% 19.1%
貯蔵庫内 100.0 2.0 98.0 4.0 100.0 0.0
  注)P=植付数  S=萌芽率  BL=病株率

 表6 切断刀消毒試験結果
供試薬剤 濃度 時間 接種塊茎 処理後の切断刀での切断塊茎
1番目 2番目 3番目 4番目
P BL P BL P BL P BL P BL
昇   汞 500倍 5秒 30 15 30 0 30 0 30 0 30 0
消毒用有機水銀 30 11 30 3 30 3 30 1 30 0
ノボビオシン 1000ppm 30 10 30 6 30 4 30 2 30 3
アグレプトマイシン 30 5 30 4 30 2 30 4 30 1
1500ppm 30 13 30 3 30 1 30 0 30 1
無処理 30 6 30 3 30 4 30 7 30 3
  注)P=植付数、Bl=発病株数