【指導参考事項】
8、疾病によるジャガイモ塊茎腐敗の発生生態
北農試病害第一研究室

・ 目 的
 疾病によるジャガイモ塊茎腐敗抵抗性品種の育成に資するために、土中感染の難易を調べる検定法を確立する。

・ 試験方法
 試験1、 男爵薯の茎葉を刈取って、病斑からの胞子の供給を絶ち、地表面の胞子の死滅後、予め散水して湿らせたうねの地表面に、胞子懸濁液(500〜1000ケ/c㎡)を散   布し、さらに8時間(毎時20〜30mm)散水した。10日後堀取り、水洗して罹病塊茎数を調べた。
 試験2、 予め2時間散水して土を湿らせ、胞子懸濁液(500〜1000ケ/c㎡)を散布し、さらに4時間散水した。他は、試験1と同じ。
 試験3、 各品種とも、マンゼブ剤(×400)による防除回数の違いによって、無防除区、4回防除区(最終防除日8月7日)、8回防除区(同9月6日)を設けた。8月23日より経時的に40株ずつ堀取り調査を行って、品種、処理区ごとの感染の時期と量を調べた。
 試験4、 昭和41年度試験を開始して以来、男爵で塊茎腐敗の多発生となった3ヶ年について、大雨の時期と防除方法の違いによる発生様相の違いの比較を行った。

・ 試験成果の概要
 1、土中感染の主要な感染源は茎葉病斑上に形成された胞子であり、主要な環境要因は冷い大雨である。
 2、茎葉疾病の防除期間の長短、播種時期の早晩によって茎葉疾病蔓廷時期の異る区を設けることができる。これによって感染に関与する大雨に遭遇する機会を増加できる。
 3、茎葉を除去し、胞子を散布し、散水することによって塊茎腐敗を発生させて、各品種の罹病の難易を比較することができる。

・ 試験成果の具体的データ
 第1表 茎葉除去、胞子懸濁液散布、散水による塊茎腐敗の発生
月 日 散水量(20〜30mm/hr) 罹病塊茎数(40株)
胞子散布前 散布後 胞子散布区
8月24日 4hrs 8hrs 79 0
   25日 4 8 79 2
   30日 0 8 38 1
9月4日 2 自然降雨49mm 42 0

 第2表 茎葉除去、胞子懸濁液散布、散水による塊茎腐敗の発生 
品 種 罹病薯数(40株調査) 罹病率
(%)
A B C D 平均
男爵薯 56 43 24 40 41 14
オオジロ 8 12 2 21 11 5
農林1号 6 1 11 2 5 2

 第3表 薬剤防除回数、品種の違いによる発生様相の差異
品 種 最終防除日(回数) 罹病薯数(40株調査) 塊茎腐
敗率(%)
9月11日 25日 10月4日
男爵薯 0 0 1 0
8月7日  (4回) 0 20 10 2
9月6日  (8回) 0 4 140 38
オオジロ 0 0 0 0
8月7日  (4回) 0 10 23 10
9月6日  (8回) 0 0 41 20
農林1号 0 5 42 15
8月7日  (4回) 0 1 22 6
9月6日  (8回) 0 5 16 4
ビホロ 0 85 121 37
8月7日  (4回) 0 14 192 58
9月6日  (8回) 0 0 79 26

 第4表 降雨の時期、薬剤散布回数の違いによる発生様相の差異
年月日 雨量(mm) 最終防除日
8月9日 9月6日
43年8月21日 41 (27) 30%
46年9月5日 49 (22) 0 15 0
47年9月24日 84 (25) 0 0 37