【指導参考事項】
肉用牛の放牧適性品質選定に関する試験
(昭和44年〜48年) 新得畜試 飼養科 衛生科 肉牛科

・ 目 的
 肉用牛の放牧適性品種を選定する資料を得るため

・ 試験方法
 1、期間 昭和42年、昭和43〜47年
 2、供試牛 品種別頭数および放牧地
品種 A B D H N 備  考
頭数 22頭 34 6 34 14 110 開始時月令約12か月育成雌

放牧地区分 面   積 植生の概要
牧草地 4ha イネ科47%、マメ科47%、その他6%
牧草+野草地 牧草1.8ha+野草10ha (牧草、野草地はそれぞれ上と下に同じ)
野草地 8〜24ha イネ科8%、マメ科6%、ササ、イタドリ86%
調査方法 5か年とも降雪時まで約150日間、濃厚飼料無給与で連続放牧し、それぞれの放牧地における増体、採食行動、生理反応等を調査検討した。

・ 試験成果の概要
 放牧適性の項目別評価(育成牛)
調査区分 A種 B種 D種 H種 N種 記号の説明

牧草地 × 放牧全期間(150日)の増体量
○すぐれる  ややすぐれる
△中等     ×劣る
牧草+野草地
野草地



採食草高 × 採食部位 ○低い ×高い
歩行距離 × 採食行動中の日中歩行距離
○1,300m〜1,500m(牧草地)
△1,800m〜1,900m( 〃 ) 
×2,000m〜2,100m( 〃 )
角つき順位 × × ○角つき順位 下位
△  〃      中位
×  〃      上位
脱柵行動 × × × ○脱柵行動数 すくない
△  〃      中等
×  〃      多い

タイレリア症 × ○発症すくない
×発症多い
 さらに検討を要す
蹄間ふらん × ×

・ 主要成果の具体的データ
X±SD

区分 年次 品      種 備      考
A D H N


1 (0.65±0.13) 1)表中アルファベット異符号間(a〜b)に差異あり(P<0.01、P<0.05)
2 0.47±0.10 0.67±0.06            
3 0.48±0.07b 0.43±0.08 0.71±0.07
4 0.62±0.08a 0.75±0.04 0.74±0.17
5 0.67±0.08a 0.48±0.07   0.73±0.03 0.70±0.15

±
SD
n=11a
0.58±0.10
n=17b
0.65±0.08
(n=6
0.75±0.13)
n=17c'
0.71±0.06
n=7c'
0.72±0.05


5

±
SD
n=3
0.44±0.04
n=3b
0.37±0.01
n=3
n=3a''
0.57±0.03
n=3
0.50±0.06


2 0.47±0.13 0.51±0.08
3 0.29±0.04 0.40±0.05 0.33±0.05
4 0.31±0.06 0.34±0.07 0.32±0.13

±
SD
n=8
0.30±0.05
n=14
0.41±0.10
n=14
0.63±0.14
n=4
0.32±0.13
全平均 n=22a''''
0.46±0.15
n=34a''''
0.44±0.09
(n=6
0.45±0.03)
n=34b''''
0.58±0.16
n=14b''''
0.56±0.22
注) P1:牧草地
   P2:牧草+野草
   P3:野草
 2 角つき順位と増体量との関連 (パリマックス因子分析表による)
1、7月中増体量
2、8月中
3、9月中
4、10月中
5、全期平均
6、試験開始体重
7、角つき順位
8、採食回数

・ 普及指導上の注意事項
 1、放牧牛の増体量は、放牧地の滋養兼によりかなり変わるが、品種により増体反応は一様ではない。放牧飼養にあたっては適地適品種の選定を考えるべきである。
 2、放牧牛の疾病性については、疾学的な検討がなされていない。日常の衛生管理には適切な対策と注意が必要である。