【指導参考事項】
〈稲作転換営農の確立〉
稲作からたまねぎ作えの経営転換に関する調査研究
昭和46〜47年 道立中央農業試験場経営部

・ 目 的
 米の生産調整は、稲作経営に不安と困惑をもたらしているが、そのなかで零細規模で経済的に不安な農家において転作を進め経営転換を図る事例がある。その代表的な事例としてたまねぎへの転作を対象に稲作からの経営転換の課題を解明しようとする。

・ 試験方法
 たまねぎ転作の事例として岩見沢の経営を対象に意向調査、実態調査を行ない経営転換の定着性を考察した個別経営の分析には線型計画法を適用し、稲作経営におけるたまねぎの導入について検討した。

・ 試験成果の概要
 たまねぎは価格変動が大きいが、しかし、水稲と比較すると収益が高い作物である。また栽培技術の向上により排水良好な水田転換畑では熟畑と変らない収量が可能となり、転作が急激に増加した要因となる。そこで家族労働力2人たまねぎ収量5t/10a当り等を前提に経営計画を作成した。その演算結果を概説するとたまねぎの価格中位(ここ10年間の平均780円/20kg)なとき4haまではたまねぎ単作5〜6ha水稲、たまねぎ複合7ha以上は水稲中心の作付がそれぞれ有利となる。またたまねぎの値格が低下するとほぼ水稲転作となろう。従って現状のたまねぎ価格を前提とするなら、5ha以下はたまねぎ単作もしくは水稲との複合形態7ha以上は稲作経営が安定的で有利と推論できる。但し雇用労働確保が遂次困難となり、たまねぎ栽培における省力化は急がれる。
 他方周辺の稲作農家にみられる転作はそのほとんどが生産調整期間の一時的な対応である。そして稲作生産にもどるにしても経営規模の拡大の必要性を適している。また零細規模な稲作経営では米生産の不安により将来の経営を模索している現状(既に離農、兼業を意向とするのもある)であり今後の課題となろう。

・ 主要成果の具体的なデ−タ−
 表1 調査地区の転作の可能性と将来の経営方向(アンケ−ト調査の集計)
 (1) 転作の可能性
転作の継続 転作を進めるための条件 合計 転作の可能性
乾田化 政策指
導体制
の充実
価格補
助対策
集団に
よる体
回答
なし
定着
できる
指導体
制によ
り定着
できる
現状で
は定着
の可能
性なし
回答
なし
不利なのでやめる (1) (1) (1)
生産調整期間の実施 (1) 1(15) (3) (15) (4) 1(10) (2) 1(6) (3)
転作の継続 3 0.5 4.5 1(1) (1) 9(2) 5 3 (1) 1(1)
その他 (1) (1) (4) (6) (1) (1) (4)
合 計 3(1) 1.5(1.5) 4.5(5) 1(3.5) (9) 5(1) 3(2) 1(9) 1(8)
  注) 重複回答は比較で分ける。( )内は周辺の稲作農家

 (2) 将来の経営方向
経営状態/
耕地拡大の意欲
稲作専業 稲作複合 稲作兼業 離農 回答なし 合計
耕地規模〜3ha 1 (1) (1) 1(2)
3〜5ha (2) 5 (1) (1) 1(1) 6(5)
5〜7.5ha (2) 3(2) (2) (2) 3(8)
1.5ha〜 (3) (1) (1) (5)
購入する (6) 3(1) 3(7)
販売する 1 (2) (2) (2) 1(6)
購入販売しない (1) 5(1) (2) 1(1) 6(5)
回答なし (2) (2)
合 計 (7) 9(2) (4) (2) 1(5) 10(20)
  注) ( )内は周辺の稲作農家

 表2 稲作、たまねぎ複合経営計画の演算結果
ケース 耕地面積
(a)
水稲作付面積
(a)
たまねぎ作付面積
(a)
雇用労働時間
(時間)
利益総額
(千円)
たまねぎ価格高位 3 158   158 1017 2887
5 291   291 2516 5165
最終解 383   383 3904 6650
たまねぎ価格中位 3 158   158 1017 1783
6 383   383 3909 3975
10 511 191 320 3227 4327
12 851 695 156 2795 4896
13 1070 1028 50 2790 5188
最終解 1173 1173   3025 5269
たまねぎ価格低位 3 281 240 41   1490
5 635 615 20 541 3114
7 850 843 7 1156 4011
最終解 1173 1173   2480 5269
  注 農業所得の計算には利益額より共通経費(利子、租税公課等)及び減価償却費を差引く。

 1図、たまねぎ価格中位の演算結果


・ 普及指導上の注意事項
 水稲経営にたまねぎを導入したモデルは、たまねぎ収量5t/10aが確保できる土壌条件である。また、今後のたまねぎの生産及び価格予測、省力化のための技術改善、生産団地等の課題にはふれていない。