【指導参考事項】
稲作転換営農に関する調査
(昭和46〜47年) 道立十勝農試農業杙械科

・ 目 的
 米の生産調整にともなって稲作転換が行なわれ、今後も特に稲作不安定地帯における稲作転換が緊急な課題となっている。このような事態に対処して稲作転換の営農の実態を把握し、経営的にその発展性を吟味して、営農指導上の参考に供する。

・ 調査方法
 1、対象、十勝管内主要稲作地帯、音更町、池田町、豊頃町、芽室町
 2、調査方法、上記4町村から稲作転換を行なっている代表的農家を4戸調査した。
 3、調査項目、水稲と転換作物の収益性。稲作転換の方法(耕地規模の拡大、農作業杙の導入、資金調達、新技術取得)

・ 試験成績の概要
 1、十勝管内の稲作転換の概況
 昭和47年度の米生産調整は全水田面積の64%を占める。特に山麗地帯、内陸地帯でも水田面積の少ない町村で割合が高い。転換作物は内陸では豆作、山麗では飼料作が多い。豆類は栽培が容易であること、小豆の収益が比較的高かったことから作付され、連作されているが、今後連作障害が懸命される。
 2、水稲と転換作物の収益性比較
 転換作物の10a当り収益性(所得)は水稲に比べ非常に少なかった。単位面積当り生産額が少ないこと、経営費の増加(借入金利子、杙械利用経費など)が最も大きな要因である。稲転の定着が見込まれる農家は2号農家のみである。
 3、耕地規模拡大の可能性
 稲作地帯の耕地面積は、今後横ばいか、やや減少が見込まれること、離農率は非稲作地帯より低いことから大巾な規模拡大はかなり困難である。離農対策、農地管理事業などについて検討されるべきだ。また、草地造成、共立牧場などで、酪農の規模拡大を可能にする対策が必要であろう。
 4、農作業杙の導入
 転換作物の面積が規定に達すると、稲転促進特別事業(5割補助)で杙械の導入が認可される。
 また、この規定は比較的容易に達成できる。
 稲転にともなう大幅な杙械の導入は経営費を増大させるので、農業杙械銀行(リース制度)などが検討されるべきだろう。
 5、資金調達
 健全な?営であれば農地取得資金400万円、総合施設資金1200万円(特認2500万円)程度まで借入れが可能である。また、農家が集団化した場合、融資条件が良くなるため資金調達についてはかなり余裕がある。
 6、新技術取得
 十勝地方の稲作は複合経営が多いため非稲作部門に転換する場合は問題は少ない。新技術を取得する場合は地域で研究会を作り、先進地を視察する方法が良いと思われる。

・ 主要成果の具体的データー
 表1、47年度、米生産調整実施概要(十勝)
稲転/
項目
水田 生産調整 転換作物
転作 体耕 雑穀 飼料 馬鈴薯 てん菜 野菜
46年 面積 5817ha 1741ha 212ha 907ha 45ha 666ha 15ha 60ha 48ha
      52.1% 2.6% 38.3% 0.9% 3.4% 2.7%
47年 面積 5817ha 3626ha 123ha 2373ha 35ha 1020ha 25ha 127ha 43ha
      65.5% 1.0% 28.1% 0.7% 3.5% 1.2%

 表2、稲作転換と農業所得
項目/
年/
農家
作付面積(ha) 収入(千円) 経営費
(千円)
所得(千円)
水稲 転作 その他 水稲 転作 その他含補助 所得 除補助金
1号 稲転前 2.36 休耕(1.54) 6.60 10.50 1695 1974 3669 2007 1662
〃後 10.7 てん菜、豆12.8 33.4 56.9 共同経営給料地代 3057 1807
2号 稲転前 2.58 16.4 18.98 1166 2287 3453 1539 1914 1914
〃後 牧草2.58 22.0 24.58 5019 5019 3140 1879 993
3号 稲転前 3.2 8.36 11.56 1418 2367 3785 1398 2387 2387
〃後 豆3.2 11.6 14.80 893 3795 4688 2007 2681 1711
4号 稲転前 9.0 9.0 5506 137 5644 2633 3011 3011
〃後 2.16 豆、ソ菜6.84 1.9 10.9 1265 4236 5501 2338 3163 913
  備考 稲転前:45年
      稲転後:47年

 表3、水稲と稲転作物の収益作物(10a当)
農家作物
/項目
1号 2号 3号 4号
水稲
(俵)
畑作 水稲
(俵)
酪農 水稲 小豆 大豆 水稲 小豆 大豆 ソ菜
反収 7.8円 ビート5.5トン
豆2.4
5.6 5.5円俵 3.6円俵 3.8円俵 6.8円俵 2.7円俵 3.0円俵 2.5円トン
単価 8.300 8.070 8.000 6.500 8.605 7.500 5.500 26.800
収入 63.759 19.887 45.200 16.810 44.300 27.900 58.500 19.700 67.000
経営責 50.306 24.179 17.486 12.773 17.025 10.586 36.977 14.414 81.070
所得 13.453 △4.292 27.714 4.037 27.275 17.314 21.523 5.286 △14.070
100 14.6 100 63.5 100 24.6 − 
  備考:1号農家は共同?営で自家労賃を含むため、所得欄は収益額となる。

 表4、耕地面積と農家戸数の推移
町、年/項目 音更町 池田町 豊頃町 芽室町
43年 44 45 46 43年 44 45 46 44年 45 46 47 44年 45 46 47
耕地
面積
町全体 (ha)
18627
(%)
100
(%)
103
(%)
104
(%)
105
(ha)
7032
(%
100
(%)
114
(%)
1.3
(%)
101
(ha)
7537
(%)
100
(%)
87
(%)
81
(%)
86
(ha)
18399
(%)
100
(%)
100
(%)
99
(%)
100
稲作地帯 2202 100 102 102 100 1798 100 104 101 97 5298 100 91 85 89 1012 100 98 101 98
農家
戸数
町全体 1802 100 96 93 87 877 100 98 94 92 682 100 93 90 83 1300 100 95 90 86
稲作地帯 339 100 99 99 97 270 100 97 96 93 502 100 96 91 83 105 100 98 94 86
一戸
当り
耕地
町全体 10.34 100 107 112 119 8.02 100 117 109 110 11.05 100 93 90 104 14.15 100 105 110 116
稲作地帯 6.50 100 103 105 107 6.66 100 107 105 104 10.55 100 95 93 107 9.64 100 100 108 110