【指導参考事項】
畑作農業集団化指標作成
(昭和47年)  中央農試経営部 北見農試経営部

・ 目 的
 畑作農業の多くは、従来の個別経営から大型農業機械を基軸とした協業組織の段階に移行した。しかし、内容的には個別経営の組織構造のうえに単純に結合しているものが多く、さらに農業所得の拡大をはかるためには、より内容的に充実した集団生産組織を形成していく必要がある。ここでは、集団化に関する資料が乏しいことから、1つの指標作成を試みた。

・ 方 法
 指標作成にあたっては、十勝とともに北海道の主要な畑作地帯を形成している網走管内の先進的な事例(網走市実豊第20集団)をモデルにして、畑作農業集団化の指標を作成した。

・ 成果の概要
  1) 集団化指標作成の前提条件
 (1) 構成農家戸数は10戸とする。農業従事者数は男11人、女10人の計21人とする。
 (2) 集団の運営については、集団長および副集団長のほか、企画、作業、資材、機械、経理の各部と理事(2名)、監事(1名)をもうけ責任体制を明らかにするとともに、集団運営の円滑化をはかる。
 (3) 耕地は1農家当り20haの計200haの他、集団として、10haを借入(ha年、4000円)する。
 (4) 土地利用は、地力の維持と増進をはかるため、麦類(秋播小麦、ビール大麦)→大手亡→てん菜→ばれいしょの順に作付する4年輪作方式を採用した。
 (5) 農業機械および施設は、全て集団所有とし、機械利用料金と 負担金をもって運営する。
 (6) 同一の作業については、オペレーター補助員ともその作業が終了するまでセットとして行動し、作業能率の向上をはかる。
 (7) 生産資材および、生産物は全て集団として一括購入、出荷し、共同計等方式をとる。
  2) 集団化指標の概要
 (1) 機械化および共同作業の実施により、作物別のha当り労働時間は、秋播小麦26.5時間、ビール大麦31.9時間、てん菜251.5時間、ばれいしょ141.0時間、大手亡66.5時間で実施可能であることがしられた。また、年間の総労働時間は、10戸で25276.7時間である。
 (2) 規模拡大をはかるには、一般に土地、機械、施設、労働力のアンバランスが生じ、投資効率の低下をまねくが、集団所有(借入)の10haをもって、規模拡大の円滑化を試みた。
 (3) 機械の利用は、ダイヤグラムを作成し、運行の円滑化をはかった。
 (4) 1農家当り農業所得は、350万円あげられることがしられた。

・ 主要成果の具体的データ
 集団の総括指標 (一部抜萃)
単  位 集団事業 個別農家 備   考
農事従事者数 人時ha円 21 21 家族+集団内+集団外
農事労働時間 864,6 24411,9 25276,7   
耕地面積 10 200 210
農業投下資本額入 18,167,006 13,893,890 32,060,896 固定+流動
(自己+借入)
農業粗収益 農産収入 2,850,000 61,649,950 64,499,950 5作物計
出役労賃収入 3,586,350 3,586,350   
機械利用収入 5,365,186 5,365,186   
負担金収入 664,651 664,651   
8,879,837 65,236,300 74,116,137   
農業経営費 労働費 集団内 208,670 5,222,980 5,431,650 手作業含む
集団外 443,200 443,200  
固定財費 4,209,627 17,550 4,227,177 建物、機械
材料費 673,893 15,113,795.50 15,787,688.50 種子、肥料、
農薬他
その他 1,713,253 7,619,399.60 9,332,652.60 乾燥、燃料、
負担金他
磯蔵利用経費 237,651 5,127,535 5,365,186  
7,043,094.00 33,544,460.10 40,587,550  
農業純収益 1,836,743.00 31,691,839.90 33,528,582.90 農業粗収益−
農業経営費
地代総額 400,000 8,000,000 8,400,000  
資本利子総額 1,134,797.20 833,633 1,968,430.20  
農業生産費用 8,577,891.20 42,378,093.10 50,955,984.30 農業経営費+
地代+
資本利子
農企業利潤 301,945.80 22,858,206.90 23,160,152.70 農業粗収益−
農業生産費用
農業所得 916,901.40 33,534,912.40 34,451,813.80 農業粗収益−
(農業経営費−
家族経営費+
借入小作料
+負債利子)
経営集約度 土地純収益 701,945.80 30,858,206.90 31,560,152.70 粗収益−
(経営費+資本利子)
農業資本純収益 1,436,743.00 23,691,839.90 25,128,582.90 農業粗収入−
(経営費+地代)
農業労働力純収入 510,615.80 28,524,386.90 29,035,002.70 粗収益−(経営費−
労働費+地代
+資本利子)
資本収益率 7.91 170.52 78.38 農業資本純収益/
農業投下資本額
農業所得率 10.3 51.4 46.5  
純益率 20.68 48.58 45.24 農業純収益/
農業粗収益
ha当り労働時間 86.46 122.06 120.37  
  注) 集団の労働を手間替として考えるならば、集団内の出役労賃収入は零となるとともに、集団内労働費は家族労働費となる。しらがって手間替とした場合には、農業純収益は集団内出役労賃収入が減少する。

・ 普及指導上の注意事項
 1) 北海道東北部(網走、十勝と1部根釧)の畑作地帯を相定して作成したものである。
 2) この指標では、1つの接近方法と可能性を検討したものであり、集団化の計画をたてるにあたっての検討資料として活用されたい。