【指導参考事項】
1. 課題の分類
2. 課題名  牧草飼料作物の多収栽培法−根釧地方における牧草の多収栽培法−
3. 期 間  昭和47年
4. 担 当  根釧農試
5. 予算区分
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 根釧地方の酪農自給飼料を基盤にした多頭集約経営に移行しつつあるがこの傾向に対応して牧草の多収栽培を確立するための知見を得る。

8. 試験方法
 1. 秋期の刈取りおよび施肥時期が翌春収量に及ぼす影響
  刈取り時期       施肥時期         施肥量
  9.1    9.20     9.1   9.20  10.1   4-4-4kg/10a
<         >×<            >  (硫安、過石、硫加)
  10.10   11.1     10.10 11.1  11.20 
 2. 晩秋施肥と早春施肥の比較
  施肥時期             N肥の形態
  10月下旬  11月上旬     硫安  尿素
<               >×<        >
  11月下旬    早番       硝酸石灰
 3. 施肥時期が越冬前のオ−チャ−ドグラスの生育に及ぼす影響
   1/5000のポットを用い、8月26日に刈取り、以後経時的に施肥処理をし、
   部位別の調査を行った。
 4. 模擬的越冬実験による施肥窒素の動き
   砂耕でオチャ−ドグラスを主旨させ、人工気象箱を用いて、短日(9hr、13℃)
   でN施肥して吸収させた後、半数のポットの養分を洗脱し、暗黒低温(1〜3℃)
   で模擬越冬させた後 長日(16hr、15℃)で再生させ、N化合物の動きを追跡した。


9. 結果の概要
 秋期の施肥時期は、前期;9月中旬〜10月上旬、中期;10月中旬〜11月上旬、後期;10月下旬〜11月下旬の3期に分けることができた。すなわち
 1. 前期では施肥されると越冬部位の増大充実を招き、これらがいわゆる越冬性および萌芽性の向上を通じて翌春収量を高める。
 2. 中期の施肥は牧草に吸収され、この大羊はアミド態で保持され、翌春の萌芽再生時にこの部分が減少していたことを知りえた。しかし目下のところ、これらの事実から施肥の功罪を論議しうるに到ってない。同時期の施肥で指摘できるのは、刈取りと施肥が重なると、再生による貯蔵物質の消耗を助長し、翌春収量を一層低めることである。
 3. 後期は気温が牧草の乾物増加のほとんどない程度まで下降した時点からのことになり、施肥肥料の効果は翌春への土壌中での残存量の多瘍によると思われた。
 従って、前期の施肥が本来の目的に合致し、後期は早春施肥の代替と考えるであろう。

10. 主要成果の具体的デ−タ
 第1表 刈取り施肥と翌春の1番草 (46年)
刈取月日/
施肥月日
オ−チャ−ドグラス収量(DM kg/10a)
9.1 9.20 10.10 11.1
9.1  施肥 208      
9.20  〃 326 356    
10.10 〃 306 213 190  
11.1  〃 379 308 199 228
11.20  〃 294 325 244 262

 第2表 刈取り施肥が翌春の伸長期および穂ぞろい期の収量に及ぼす影響(47年)
stage/
刈取月日/
施肥月日
オ−チャ−ドグラス収量(DM kg/10a) 穂ぞろい期の
出穂茎数(本/m2)
節間伸長期の
収量生長速度(kg/10a)
伸長期* 穂ぞろい期**
9.1 9.20 9.1 9.20 9.1 9.20 9.1 9.20
9.1  施肥 202   476   483   13  
9.20  〃 240 232 511 533 553 776 13 14
10.1  〃 198 238 583 557 625 762 18 15
10.10  〃 207 205 563 586 664 846 17 18
11.1  〃 212 189 473 502 500 629 13 15
11.20  〃 201 204 534 537 492 582 16 16
  *5月22日  **6月12日

 第3表 晩秋施肥と早春施肥の比較
Uの形態/
施肥時期
オ−チャ−ドグラス収量(kg/10a)
硫安 硝Ca 尿素
10月下旬 312 291 320
11月上旬 323 311 287
11月下旬 392 326 362
早  春 394 399 355

 第4表 越冬直前のオ−チャ−ドグラスの態勢(11月25日)
項  目/
施肥時期
乾物重(g/pot) 株のクラ
フトサン
(%)
株のFN
(%)(mg/pot)
株のアミド−N
(mg%)(mg/pot)
茎 数
(本/pot)
貯蔵部*
のN分布
(%)
茎葉
無施肥 1.1 9.3 25.5 36.1 1.33 132 12 89
9.10 〃 2.3 12.7 32.8 35.1 1.77 336 43 83
10.1 〃 2.1 13.1 30.6 32.7 2.14 538 71 84
10.10 〃 2.5 13.2 32.8 37.2 2.22 610 81 82
11.1 〃 1.5 9.5 29.7 30.8 2.26 877 83 86
  *株と根の部分に分布するT-N含量の割合

 第5表 模擬越冬実験における窒素の動き(%)
部位 越冬前(9.22) 越冬後(11.26) 再生後(12.16)
FN アミド−N 洗 区 未洗区 洗 区 未洗区
FN アミド−N FN アミド−N FN アミド−N FN アミド−N
茎葉 2.32 0.77 2.91 1.01 3.33 1.01 2.85 0.55 4.26 0.65
2.11 0.59 2.80 0.97 3.10 1.20 2.08 0.45 2.62 0.49
  Nで0.3g/pot施肥

11. 奨励または指導参考上の注意すべき事項
 1. 秋施肥(9月中旬〜10月上旬)は多収穫技術の一環であるから、翌早春に上積施肥することにより目的を達しうる。
 2. 早春代替施肥(10月下旬〜11月下旬)は、流亡をできるだけ回避することが要締であるから、窒素肥料の形態、土壌の養分保持能地形等を考慮することが必要であろう。