【普及奨励事項】
空育97号の特性概要

1. 空育97号の特性一覧
系統名 空育97号 組合せ (ささほなみ×空系1号)F1×北海190号


長所
 1. 良質
 2. 登熟が早い
 3. 耐倒状性も優れている
短所
 1. 初期生育がやや不良で、茎数の確保が難しい。
 2. 疎植、少肥では収量がやや少ない。
 3. 耐冷性が対照品種並でやや不十分である。
採用地帯および普及見込面積  空知、石狩、後志、胆振、日高および道南北部 10.000ha

品種名
/形質
空育97号 対照
ひめほなみ
比較
ユ−カラ
比較
ほうりゆう
早 晩 性 中生の晩 中生の晩 晩生の早 中生の中
草   型 偏穂数型 穂数型 穂数型 穂数型
出 穂 期 8月10日 8月10日〜 8月11日 8月6日
成 熟 期 9月27日 10月2日 10月3日 9月28日
稈   長 64cm 66cm 66cm 72cm
穂   長 16.5cm 14.9cm 17.3cm 16.6cm
穂   数 22本 26本 24本 23本
芒の多少・
長  短
極稀極短 極稀極短
ふ 先 色 黄白 黄白 黄白 赤褐
脱 粒 性
耐倒状性 やや強 やや弱 やや弱
葉いもち病
穂いもち病 やや強 やや弱
耐冷性(障害型)
a当玄米重 50.4kg(55.2) 52.2kg(55.0) 52.0kg(56.4) 51.1kg(57.3)
玄米千粒重 23.2g 21.2g 21.8g 21.9g
玄米品質 4等上(3等下) 4等中(4等上) 4等中(4等上) 4等中(4等上)
食   味 ヤ良 ヤ良 ヤ良
調 査 地 中央農試稲作部  ( )は普及地帯現地28ヶ所の平均値
調査年次 昭和46年〜48年 3ヶ年 ( )は昭和47年48年の2ヶ年
品種候補名 未 定
  注:空系1号
           >=藤坂5号×農林15号   北海190号=関東53号×栄光8
    ささほなみ

2. 空育97号の特記すべき特徴
 玄米品質が対照品種の「ひめほなみ」はもとより、本道で最も良質の品種である「ユ−カラ」に比べてもやや優る良質品種で、更に登熟が著しく早く、いもち病抵抗性も「ユ−カラ」に比べれば著しく強く、稈質も「ユ−カラ」に近い強稈性を持っている。

3. 空知以南の中生種地帯で奨励品種に採用する理由
 道南米の米質向上が強く望まれる現在、これに答える中晩生種の良質品種がこの地帯には欠けている。すなわち良質多収性の「ユ−カラ」はいもち病に極めて弱く、「マツマエ」は晩熟に過ぎるため、いずれも適地は限定される。「ひめほなみ」は腹白粒多く、また胴割米を多発することがあるなど、やや良質性に欠け、更に稈質にも難点がある。「ほうりゆう」は中生の良質品種として作付けが多いが、耐病性、耐冷性および稈質が劣り、また玄米色沢が濃飴色のため消費地における評価は高くない。
 空育97号を「ほうりゆう」の一部および「ひめほなみ」に代る良質強稈品種として、ならびに「ユ−カラ」「マツマエ」が不適地に栽培されて米質が低下する危険があるので、両品種に優る良質品種として採用し、当該地域の産米品質の向上をはかる。