【指導参考事項】
1. 課題の分類  稲作
2. 研究課題名  水稲機械移植用簡易マット苗の育苗法および作季に関する試験
3. 期 間  (昭48)
4. 担 当  北農試・作1、稲2研  柿本 彰・今野一男
5. 予算区分  受託
6. 協力分担  北海道立中央農試、上川農試・北見農試・道南農試・北海道

7. 目 的
 水稲機械移植用として新たに開発された簡易マット方式による育苗法、時に4葉苗の育成方法を明らかにし、その作季と適合品種などの栽培方法を検討する。

8. 試験研究方法
 試験Ⅰ(育苗法)
  (1) 播種量:150、200、250cc/マット
  (2) 育苗日数:30、35日
  (3) 移植期:5月25日
  (4) 品種:ほうりゆう
  (5) 移植機:Ap−2型14mm×14mm切断
 試験Ⅱ(品種と作季)
  (1) 品種:しおかり、ほうりゆう
  (2) 移植期:5月20、25、30日
  (3) 播種期:200cc/マット
  (4) 育苗日数:30日

9. 結果の概要・要約
 試験Ⅰ
  移植時の苗質:
 (1)播種量が200cc/マット以下であれば30日育苗でも4葉苗が得られ、また、適正管理によって250ccの35にち育苗で4葉苗育成の可能性がある。
 (2)苗の生育は播種量が少ないほど整一になる。
 (3)簡易マット苗の乾物重が稚苗に比べ著しく重く、成苗の70%程度に達する。
  初期生育・収量:
 (1)12℃と本田の初期生育は極めて良好
 (2)籾数は3.5万粒/m2以上で、収量は稚苗よりも10%以上増加し、成苗と同程度か、または上回った。
 (要約)簡易マット苗の育苗法は次の通りである。
  播種量:150〜250cc/マット、育苗日数:30〜35日
 試験Ⅱ
  移植時の苗質:
 (1)育苗期間の気象条件によって5月20・25日植えの苗質は若干劣ったが、いずれも4葉苗の特質を有した。
  本田の生育:
 (1)幼穂形成期、出穂期は成苗並
 (2)5月20日植えは初期の低温により、30日植えはおそ植えのため若干劣ったが、いずれの場合も成苗よりも茎数ではまさった。
  形質と収量:
 (1)移植時期によって形質の差異はあるが、時に「ほうりゆう」の5月30日植えの登熟歩合ののみ低下した。
 (2)「しおかり」の25日植えが成苗と同程度で他は10%程度少なく、「ほうりゆう」は成苗並みかややまさった。
 (要約)品種と作季は次のとおりである。 品種:中生の中まで  移枯期:5月20〜30 日

10.主要成果の具体的数字
 試験Ⅰ
育苗日数
(日)
播種量
(cc)
移植時の苗質 出穂期
(月日)
m2当り
穂数
(本)
m2当り
総籾数
(4粒)
a当り
収量
(kg)
仝左
比率
草丈
(cm)
苗令
(葉)
地上部の
乾物重
(mg)
地下部の
乾物重
(mg) 
30 150 10.5 3.5 18.6 2.8 8. 8 575 37.7 53.8 100
200 11.5 3.2 17.0 8.4   .9 648 40.6 57.1 106
250 11.4 3.0 16.0 8.4   .9 679 39.1 54.1 100
35 150 12.4 3.5 24.3 4.7   .6 570 36.3 52.5 97
200 12.8 3.2 23.0 4.5   .7 625 36.9 52.0 96
250 12.4 2.8 18.5 4.1   .7 664 35.1 53.7 99
稚 苗 1.2 2.2 12.2 1.4   .9 753 42.0 47.1 87
成 苗 13.9 3.5 32.6 5.9   .8 605 39.6 54.0 100

 試験Ⅱ
品種名 移植時
(月日)
移植時の苗質 出穂期
(月日)
m2当り
穂数
(本)
m2当り
総籾数
(4粒)
登熟
歩合
(%)
a当り
収量
(kg)
仝左
比率
草丈
(cm)
苗令
(葉)
地上部の
乾物重
(mg)
地下部の
乾物重
(mg) 
しおかり 5.20 12.1 3.3 18.8 2.9 8. 5 595 37.4 66.2 46.7 88
.25 10.1 3.5 16.5 2.0   .5 653 40.4 70.4 51.4 97
.30 12.7 3.7 26.6 3.6   .6 581 38.0 656 47.0 89
成苗 14.4 3.7 31.0 3.8   .4 500 42.1 65.0 53.0 100
ほうりゆう 5.20 11.8 3.2 19.2 3.1   .8 656 35.6 65.0 53.0 98
.25 11.5 3.2 17.0 2.4   .9 658 43.1 68.5 59.5 110
.30 12.8 3.4 23.5 4.3   .9 669 43.0 58.0 54.7 101
成苗 13.9 3.5 32.6 5.9   .8 605 39.6 64.5 54.0 100

11.  今後の問題点
 (1) 播種量が150cc/マットの場合、土壌の種類によってはマット形式が不十分になるおそれがあるので、育苗日数と追肥法との関連でさらに追求する必要がある。
 (2) 簡易マット育苗における土壌代替資材の検索と簡易土壌培養法の検討

12. 次年度の計画(成果の取扱い)
 なし