【普及奨励事項】
1. 課題の分類  分類番号 I-a 整理番号 181-2-1
2. 課題名  小豆「十育69号」に関する試験(「系統番号」:6011-P2〜P677-3-3-3-1-1-7-9F14)
3. 期 間  昭和48年(35〜48)
4. 予算区分  昭和35〜47年−道費、昭和48年−指定
5. 担 当  北海道立十勝農業試験場 豆類第2科
6. 協力分担  道立各農試

・ 来歴
 北海道立十勝農業試験場において、中生、大粒、良質品種の育成を目的として、昭和35年に「能登小豆」を母とし、「早生大粒1号」を父として人工交配を行い、F1は温室で養成し、F2〜F5は集団選抜、F6以降は、個体ならびに系統選抜を行って固定をはかり、昭和42〜43年に「2028」の系統名で生産力検定予備試験を行った。昭和44年からは、「十育69号」の系統名で生産力検定予備試験を行い、昭和45年からは特性検定試験を行うとともに、地域適応検定試験、奨励品種決定現地調査(育成系統比較現地試験)を行って地方適否を確かめたものである。

・ 特性
 形態的特性……茎色、葉色、花色は「早生大粒1号」と類似し、草丈もほぼ同じである。分枝数は「早生大粒1号」よりやや多く、着莢数は同じかやや多い。熟莢色は灰白色である。子実の形状は烏帽子型で、丸味を呈し、粒色は濃赤色で光沢があり、千粒重は「早生大粒1号」と同程度である。品質は「早生大粒1号」よりまさり「暁大納言」とほぼ同じ大粒種である。
 生態的特性……開花始めは「早生大粒1号」と同じか1日遅く、成熟期も1〜2日程度遅い中生種である。耐倒状性は「早生大粒1号」よりやや強く、褐斑病の被害は「早生大粒1号」より少ない傾向を示す。収量性は「早生大粒1号」より多収であり、収量の安定性が高い。疎植条件でも地力の高いところでは多収を示し、晩播による減収程度も「早生大粒1号」より小さい。

・ 試験成績
 1. 育成地(十勝農業試験場)における試験成績
  1) 生産力検定試験成績−昭和44年〜48年の5ヵ年平均−
品種および
系統名
開花始
(月日)
*成熟期
(月日)
草丈
(cm)
着莢数
(個)
10a当り 1000粒重
(g)
子実重
(kg)
早生大粒
1号比
(%)
暁大納
言比
(%)
宝小豆
(%)
十育69号 7.28 9.21 41 47 293 109 99 107 184
早生大粒1号 7.26 9.19 41 43 269 100 91 98 184
暁大納言 7.29 9.22 46 46 296 110 100 108 191
宝小豆 7.29 9.18 48 43 274 102 93 100 127
  注) *昭和46年は未成熟のため、4ヵ年の平均値で示す。

   2) 地域適応検定試験成績(道立各農試)及び支庁別収量比一覧
農業試験場名
及び支庁名
*試験年数
(年)
10a当り
子実重
(kg)
早生大粒
1号比
(%)
暁大納
言比
(%)
宝小豆
(%)
北見農試 (訓子府町)   2 347 110 118
上川農試 (士別市)   4 328 115 108 116
中央農試
原原種農場 (滝川市)
  4 247 112 98 127
中央農試
畑作部 (長沼町) 
  3 158 93 92 125
十勝支庁管内   2 (9) 280 114 111 108
網走   〃   2 (8) 252 117 97
上川   〃   4 (6) 218 119 107 120
空知   〃   4 (17) 213 116 107 103
石狩   〃 3 (3) 220 146 120 111
後志   〃 4 (8) 193 118 99 108
日高   〃 4 (4) 291 134 99 126
胆振   〃 3 (6) 279 120 119 119
渡島檜山〃 3 (6) 196 118 102 123
  注) *各支庁管内の( )内は総試験個所数を示す。

・ 希望する品種
 1) アカネダイナ  2) メグミダイナ  3) ユタカダイナ

・ 配布種子量  1.473kg

・ 栽培適地
 十勝地方および上川中、南部の「宝小豆」を栽培している地帯ならびに道央、道南の小豆地帯に適し、十勝地方の山麓、沿海および網走地方で、「茶殻早生」を栽培する地帯ではさけた方がよい。

・ 栽培普及予想面積  5.000ha

・ 栽培上の注意
 「早生大粒1号」にほぼ準ずるが、「暁大納言」と同様、耐倒状性が、やや強いため、やや施肥量を多くすることにより多収が期待できる。