【指導参考事項】
寒冷期のハウス栽培(促成トマトおよび抑制キュウリ)における気温、地温の影響に関する試験成績
Ⅰ 促成トマトの前進栽培における夜間の気温および地温の影響
 試験年次 昭和48年
 北農試作物第2部園芸作物第2研究室
 担当者 小餅 昭二・田中 征勝

・ 目 的
 トマトの作季の前進にともなう夜間の気温、地温が生育、収量におよぼす影響について検討する。

・ 試験方法
 (1) 供試品種 「福寿2号」 「あかぎ」 「ス−パ−宝冠」 「耐病新宝冠2号」
 (2) 暖房方法と温度組合せ
   1) 温風暖房機、設定温度8℃、15℃、 2) 電熱による地中加温、加温目棟20℃
   3) 温度組合せ 気温 地温 略号
   


8℃
8℃
15℃
15℃
無加温
加 温
無加温
加 温
8-N
8-20
15-N
15-20
 (3) 1月12日は種、3月13日定植、収穫打切7月31日、6段摘心、全花房トライロン800倍処理  


・ 試験成績の概要
 1) 定植後の活着は温度の影響を受け、気温15℃が最も活着良く、さらに地中加温により活着が助長された。定植1ヶ月後の生育は、15-20>15-N>8-20>8-Nの順であった。
 2) 慣行播種期に比して播種期を1ヶ月早めることにより開花始めで22〜28日、収穫始めで8〜19日促進された。温度処理間では初期生育の良かった15℃区が開花、収穫始めも早かった。
 3) 気温、地温とも高いほど着果数を高め、特に上位段花房の着果数を増加させる傾向が認められた。
 4) 果実肥大は気温より、地温の効果が大きく現れ、着花数同様、その影響は3段以上の花房に認められた。
 5) 前進栽培により収穫期間が促進されるためいずれの処理区も慣行区より収量高く15-20区では1.5ton/a以上の収量を示した。
 6) 5-6月の初期収量は気温15℃により明らかに増大し、地中加温の効果は低かったが、6-7月の後期収量増大に地温の影響が表れた。
 7) 以上の結果、作季の前進により初期収量が増大し燃料事情が許せば前進栽培は、経済的に有利と考えられた。
 なお、前進栽培における温度管理は初期収量確保からは気温上昇に重点をおき、地中加温は収穫後半に有効と考えられた。

・ 主要試験の具体的デ−タ−

第1図 促成トマトの温度処理と収量



第2図 促成トマトの旬別収量と価格、推移

・ 普及指導上の注意事項
 1) 前進栽培における温度管理は気温上昇に重点をおき、地中加温は二義的に考えてあり。
 2) 府県の成績も参照し、燃料消費量、暖房機の加温能力を考慮すれば、10℃〜20℃の設定温度が実用的であり、さらに夜間の変温操作について検討する必要がある。
 3) 定植後加温中にハウス内が乾燥し、下葉が枯れることかあるので乾燥に過ぎないよう注意する。